よしなしことを、日々徒然に……
※ 2017年以前の記事は こちら になります ※



 准教授・高槻彰良の推察5 生者は語り死者は踊る
2025年08月22日(Fri) 
読書記録:



春学期試験を終え夏休みを迎えた尚弥は、高槻らと共にかつて己の人生を変えた不思議な夏祭りについて調べるべく、祖母の実家がある村へと行くことになっていた。その話を聞いた、かつて尚弥と同じ経験をし同じ『耳』を持つことになった遠山は、行かないほうが良いと忠告してくる。それは高槻の望みであり、尚弥は引きずられているだけではないかとの問いに、しかし彼ははっきりと自分の意志であることを告げ、過去を知ることで未来に進みたいのだと口にする。そんな会話をしているところへ、高槻から電話がかかってきた。なんでも学生達が主催して、百物語を開催しようと計画しているのだと言う。嬉々として監督を買って出た高槻に、尚弥も当然誘われて参加することとなった。LEDライトのろうそくがひとつ消えるたびに闇は深くなり、そして最後の一つが消えたそのとき起こったのは……「百物語の夜」
8月14日から16日のお盆に合わせ、高槻と尚弥、そして佐々倉の三人は、尚弥の亡き祖母が住んでいた長野の旧小山村へと向かった。3年ほど前に訪れた遠山によると、村人達は最初こそ愛想よくしてくれたが、遠山の耳が嘘を聞き分けると気付いた途端、嘘ばかりを口にするようになり、その歪んだ声と村から追い払おうとしているのだろう意図に恐怖を覚え、逃げるように戻ってきたのだと言う。実際、かつて尚弥に良くしてくれた近所の老人も、初めはお山の下に黄泉の入口があるといった言い伝えを教えてくれていたが、尚弥が嘘にわずかな反応をしたことで血相を変えた。「帰れ! 寄り道せずに、まっすぐに! そして今夜は早く寝ろ!」そう叫ぶ老人と別れた三人は、お山の中へと足を踏み入れた。長い階段を登り、森を抜け、ぼろぼろの社と大きな磐座を通り過ぎて降りた先には、まるで鏡写しのように別の村が存在していた。しかし過疎化が進んでいた旧小山村とは異なり、そちらの村には人も多く、赤い提灯を飾った賑やかな祭りが開催されていた。そこの人々は彼らが越えてきた山と森について、「お化けが出るから近づいてはいけない」と、幼い頃から聞かされて育ったと言って笑った。そうして祭を堪能し、車を取りに戻るべく再び夜の山に入った三人だったが、森と磐座を越えた三人が石段を降り始めると、見下ろす村の広場にはかつて尚弥が不思議な祭で見た、青い提灯が飾られていて……「死者の祭」
高槻ゼミに所属する生方瑠衣子は、よく知り合い達から「あんな格好いい人の側にいて、好きになっちゃったりしないの?」と訊かれる。そのたびに瑠衣子は笑顔で否定しつつ、思い出す光景があって……「【extra】マシュマロココアの王子様」


3年ほど前に前半まで読んだところで、長らく放置していたのをようやく読了。
コミカライズ版がこの「死者の祭」までだと言うので一区切りつくのかと思っていたら、むしろ「えええええ、ここで終わってるの!?」という衝撃のラストでした。
高槻先生、長年の疑問が解決したのなら、すぐに言葉にしておこうよ!
読みながら、まだ続刊あるのにここでもうはっきりしちゃうの? と思っていたら、まさかのそう来たかですよ。 っていうかこれ、尚弥くんはどこまで情報共有するんだろう……そもそも佐々倉に対しても、尚弥の能力についてバラすシーンってありましたっけ? 少なくとも2巻「スタジオの幽霊」時点では佐々倉さんまだ知らないのに、3巻「鬼を祀る家」ではもう知ってるんですよね……。
まあ、まさかのといえば、沙絵さんに関してもそうでしたが。
前半「百物語の夜」で再登場した時もびっくりしたものでしたが、後半「死者の祭」では「そう来るか!」と唸らせられましたもん。なるほどだから人魚ネタを仕込んでいたんですねえ。

あと前の読書感想でも書いてましたが、この巻から表紙絵の服装、尚弥の方にも夜空的なグラデーションが入ってるのが、ちょっと意味深なものを感じてしまう私です。
最初は怪異の皮を被った実は人間の仕業なミステリっぽく始まったこの作品が、少しずつ「あれ?」と謎が残るエピソードを経て、ついにここまでやってきてしまった訳で。
高槻先生が、たとえ尚弥限定であれ「痛い」と言えるようになったのは良いことだと思うんですが、逆に尚弥くんの方は、飲み込む言葉が増えてしまうのではないかと心配になったりとか。
危なっかしい二人を、揺るぎなく現世に繋ぎ止める佐々倉さんには、これからも頑張ってほしいところです。

追記:
調べてみたらコミカライズ版の方は、次の文庫6巻の一部をエピローグ的な感じで入れ込んであるみたいですね。
いやほんと、あの「長野で起こったすべての〜〜」の一文で終わっていたら、さすがにぶった切りが過ぎるだろうと思ったので^^;;
No.4475 (読書)



<< 2025年08月 >>
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

にほんブログ村 ハンドメイドブログ タティングレースへ
にほんブログ村


 最新の記事
 准教授・高槻彰良の推察..

 リンク
 神崎へメール
 私立杜守図書館
 蔵書リスト

 

   

 ブログ内記事検索:
 
 AND OR  




Back to Home...

[管理用] [TOP]
shiromuku(fs6)DIARY version 2.41