盲目の織姫は後宮で皇帝との恋を紡ぐ
2023年01月24日(Tue)
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読書記録: ■盲目の織姫は後宮で皇帝との恋を紡ぐ 〜第2部 https://ncode.syosetu.com/n1074fp/
紫陽国には後宮が存在する。千年の歴史を持ち、近年は大きな戦乱もないこの国の後宮には、皇后を頂点として、下働きの官女まで実に1200人もの女達が集められていた。 蓮香(レンカ)は、正一品から従六品まで十二に区分される后妃や官女らの中でも、下から三番目に位置する、しがない機織り官女だ。 盲目でありながら、糸と糸の触れ合う音の変化を聞き取ることで織る彼女の帯は、皇帝の即位や皇后就任、皇族の出生時などの重要な式典で使われるものである。帯の中に様々な国家機密をも織り込むその技術は、実際には秘伝のそれで、現在それを完璧に行えるのは蓮香しか存在しないほどの貴重な技であった。 そして盲目故にか、あるいは幼い頃より課せられた厳しい修行のためか、彼女は視覚以外の感覚が非常に鋭敏だ。呼吸や心音を聞き分けることで人の心の動きや嘘を見抜き、わずかな衣擦れなどから場にいる人間の立ち位置は愚かそれぞれの服装 ―― すなわち身分さえも判別する。 その鋭敏な感覚で、彼女は重大な秘密を見抜いてしまった。それは後宮の主である皇帝が、二人存在するという驚きの事実である。 最初は盲目故にからかわれているのかと思った蓮香だったが、別人だと見抜かれた皇帝達は……非常に喜んだ。二人で一人として育てられてきた彼らは、今では実の母親すらも区別できぬほどよく似ているらしい。当たり前のように個として認識してもらえることが、彼らにとっては至極新鮮であったらしい。 主に後宮での務めを果たす瑛庚(エイコウ)と、外宮で政治を担っている燿世(ヨウセイ)。 主だった后妃らが全員妊娠もしくは出産したことで、後宮での義務はひとまず果たしたと考えた彼らは、一日交代で毎晩蓮香の元を訪れるようになる。 蓮香はただ機織りをして静かに暮らしたいだけなのだが、身分の低い官女を皇帝が寵愛していると噂が立ち、当然のように嫌がらせなどが行われ始めた。 しかし後宮で起きる様々な事件に、皇帝達を介して関わることとなった彼女は、その鋭敏な感覚と聡明な頭脳で、次々と解決していって ――
中国っぽい世界観で後宮が舞台のミステリー。 盲目だけど特殊能力持ちの官女(達観系リアリスト)と、双子の皇帝ズ(微妙にチャラ男系&真面目朴念仁系)との恋愛をからめつつ、後宮の女達のドロドロしたあれこれを解決していくタイプです。 第一話でいきなり、「この日、千年続く紫陽国の歴史上初めて盲目の皇后が誕生することになった」となっているので、まあそう言う話運びです。 書籍化、コミカライズ済。WEBでは第二部まで完結済。 あらすじを確認した感じ、書籍(現在5巻まで刊行)の内容がWEBを追い越しているようなので、今後の更新は絶望的っぽく<書籍の後追い更新は、宣伝と見なされて退会対象らしい けっこう面白かったのに残念。 まあ、ある程度の区切りはついていました。 とりあえず、第二部ラストは皇后様が全部持っていったというか、酸いも甘いも噛み分けて、使える手段全部使って欲しい物掴み取るあたりが、一周回って格好いい。 まあね、やはり後宮が舞台とあってか、メインは女性で、男性は添え物っぽい感じがちらりほらり。 特に皇帝ズはちょっとポンコツがすぎるというか……後宮には伝わってこない政治面とか、蓮香が関わらない部分ではそれなりに有能なんでしょうが、こと恋愛方面になると視野が狭くなりすぎてるというか。 蓮香側の事情を解決しなければ、たとえ后妃に召し上げることができてもすぐにアウトって、ちゃんと説明されているのをぽっかり忘れているとしか思えません(−ー;) 蓮香が機織りに文字通り生命かけてることも、イマイチ理解してないよね…… あとは……謎解きモノを期待して読むと、肩透かしを食う部分も多いかと。蓮香の推理レベルが「なぜわかる」と言いたくなるレベルで、少なすぎる根拠から謎をズバズバ当てまくり。謎解き自体は舞台装置という感じでさらっと流したほうが良いと思います。 章タイトルを見る感じ、判ってやってる名作古典へのオマージュなのでしょうけれど、事件によってはもはや翻案レベルでトリックからなんからそのままなのもありましたし^^;; と言うかそもそも、皇帝ズが双子だったって、いつの間に蓮香は知ったんだろう……最初は影武者だと思ってたはずなのに……なんでニコイチで育てられてたのかの説明自体がないしなあ……
まあなんだかんだ言って、思わず重箱の隅をつつく程度には読み込むぐらい、面白かったのは事実。 個人的には燿世推しで読んでました。瑛庚もやる時はやるあたり、格好はいいんですけどね……
あ、それとこれは警告。 人の命が馬鹿みたいに軽いです。特に理不尽に命を落とす赤子・妊婦が多いので、そう言うのが駄目な方はご覧にならないほうが良いと思います。
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No.3450
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。
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