よしなしことを、日々徒然に……
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 准教授・高槻彰良の推察 3巻 呪いと祝いの語りごと
2022年07月24日(Sun) 
読書記録:


尚弥の数少ない知人である難波が、やっと試験が終わったというのに何やらやつれていた。聞けば不幸の手紙が鞄に入っており、事実ここ数日不幸続きなのだと言う。上から植木鉢が降ってきたり、喧嘩に巻き込まれて大怪我をしそうになったり、真夜中に暖房が壊れて寒さに震えた挙げ句、目覚ましが鳴らず慌てた結果、階段から落ちるわ電車は人身事故で止まっているわと、散々だったらしい。もちろん試験の結果も散々だ。お祓いでも行ったほうが良いのかと頭を抱えている難波を、尚弥は高槻の研究室へ案内して ―― 「第一章 不幸の手紙と呪いの暗号」
高槻に誘われて山梨に行くこととなった尚弥。なんでも院生の瑠衣子の両親が経営しているペンションに泊まるそうで、近くには鬼を祀っている洞窟もあるのだと言う。そうして佐々倉も加えた三人で旅行を楽しんでいた尚弥だったが、立ち寄った土産物屋で、以前に高槻を探ろうとしていたジャーナリスト飯沼と再会してしまう。まだ高槻への興味を失っていないらしい男につきまとわれつつも、三人は当初目的である鬼の洞窟へと向かった。車もろくに入れない小さな村の奥にあるそこには、鬼頭という家によって鬼神が祀られていると言う。祠のある洞窟に向かった三人は、そこで悲鳴を上げて飛び出してくる子供達と鉢合わせになった。洞窟内の祠が地震によって崩れ、そこから鬼の骨が転がりだしていると訴える子供達に、状況を確認した高槻と佐々倉は警察を呼ぶことにした。何故なら祠から出てきていたのは、いつの時代のものか知れぬとはいえ、人間の骨だったから ―― 「二章目 鬼を祀る家」
小学一年生の春。祖父が剣道の師範をしていた健司は、その日も庭で竹刀を振っていた。剣道は好きだった。漫画やアニメのキャラが戦うのに似て格好良かったからだ。そうして一人で稽古ともつかぬ稽古をやっていた彼は、庭木の隙間からこちらを覗いている子供と目があった。知らない、けれどやけに可愛い子だ。その子は庭木に突っ込むようにして身を乗り出し、「いいなあ、それ! ぼくもやりたい!」と言い出した。何だ男の子かと思いつつも、強面の健司に初対面から屈託なく近寄ってくるその子供と、すぐに仲良くなった。彰良と名乗った少年は、近所でこそあるが大きなお屋敷に住んでいて、私立の学校に毎日車で送迎されているらしい。道理で見たことがないはずだ。住む世界が違うと子供心にも思った健司だったが、彰良は両親の許可を取って剣道を習いに通ってくるようになった。そうして迎えた夏休み、健司は彰良から軽井沢の別荘に誘われて……「【extra】それはかつての日の話」

尚弥くんが、いろいろな意味で少しずつ成長していることに、なんだかほろりとしてしまった3巻目。
一章目では、高槻先生が「呪われるならのぞむところだよ!」と笑顔で難波の不幸を受け取った時、いや先生、その不幸に「身内や知人が死傷する」があったらどうすんだよww とかツッコんでいたら、案の定フラグ回収されてて、逆にこの話は読んでて安心できるなあって思いました(笑)
もう一つの呪いは、交通事故で死んだ図書館好きの少女の思い出話が、伝言ゲームで……と言うかたち。確かにありそうな『うわさと誤報の社会心理』だなあとしみじみと<判る方だけ判ってください
二章目は山奥の村に伝わっていた鬼伝説とマレビト殺しという、こちらもお約束な伝承にミステリ風味を添えて。さらに高槻さんの子供時代に関わる女性とか、夜中にうなされる高槻さんとか、ついに高槻さんの背中を見ちゃう尚弥くんとか、気絶から目覚めた後の高槻さんの不思議な様子などなど、見どころけっこうもりだくさん。っていうか属性盛り過ぎだよ高槻先生ww
三章目は番外編で、高槻さんと佐々倉さんが出会った頃のエピソードを佐々倉さん視点で。元気いっぱいなやんちゃ坊主と、頭も育ちも良いけれど物怖じしなくて屈託のない子供の、ありふれた日常がすっごく微笑ましいです。
……二章目の途中で高槻さんがバラそうとして、途中で止められた佐々倉さんの過去の怪異体験とか、さらっと語られた「迷子になっちゃってねえ」の話も入っています。
そしてこの幸せなエピソードを読んでしまうと、この後に訪れただろう高槻さんのあれこれが、本当に痛ましくなってきて……くそう、うまい構成してやがるな! あと健ちゃん、本当にいい人!!

ただ今回、ちょっと違和感があったんですが。
ええと佐々倉さん、いつの間に尚弥の耳のことを知っていたのでしょう?
2章目の土産物屋さんの場面で、「高槻や佐々倉と一緒にいるのは楽だ。ふたりとも尚弥の事情は知っているし、嘘も言わない」って地の文に書かれているんですけど、佐々倉さんにカミングアウトした場面ってありましたっけ。
んん? どっか読み落としたか、順番間違えて読んじゃいましたかね??
No.3212 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

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