よしなしことを、日々徒然に……
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 悪役の王女に転生したけど、隠しキャラが隠れてない。
2022年06月29日(Wed) 
読書記録:
■悪役の王女に転生したけど、隠しキャラが隠れてない。〜闇ギルドランキング(3)
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気がついたら異世界の後宮で、幼女の身体に入り込んでいた「わたし」。うっかり足を滑らせて階段を落ち、その後の記憶がないということは、その時に死んでしまったのだろう。
幼女の名はリュシエンヌ=ラ・ヴェリエ。女好きの国王が手を付けたメイドに産ませたは良いものの、母親は産褥で死亡。王族特有の琥珀の目を受け継ぎながら、王族ならば持っているはずの強い魔力をいっさい持たなかった彼女は、嫉妬に狂った王妃と母親を見習うその子供たちや侍女らによって、貧民街の子供のほうがまだマシな生活だろうという、手酷い虐待を受けている状態だった。
しかしリュシエンヌとして目覚めた彼女の記憶によれば、そこは前世でよく遊んでいた乙女ゲームと同じ世界で。5歳の頃にクーデターが起き、民を顧みず贅沢三昧をしていた王族たちは、全員処刑されるはずだった。そしてリュシエンヌだけが、その悲惨な境遇を憐れまれ、クーデターのリーダーであり新たな王として即位するファイエット元侯爵に引き取られ、第一王女として暮らすこととなるのだ。
しかしそれは、けして彼女に幸福をもたらす運命ではない。
旧王家の血を色濃く継ぐ彼女は、反クーデター派にとって利用しやすい旗印である。そんな彼女を悪用させないために、新国王は彼女を養女にしたのだ。それでも暴力を振るってこない新しい家族に対し、ゲームのリュシエンヌは依存してしまった。兄である王太子にもその側近であり婚約者、すなわち未来の家族である公爵子息にも、ひたすらにベッタリまとわりついた。さらには幼い頃の虐待の影響で心が成長しきっていなかったのだろう。些細なことでも癇癪を起こしては我が儘を言い、贅沢を求めて周囲を呆れさせていた。
それでいて当の義兄は、旧王家の圧政によって母である元侯爵夫人を亡くしており、同じ旧王家出身のリュシエンヌを疎ましく思っていた。婚約者もまた、表向きはリュシエンヌに優しく接していたが、内心では辟易とし、義務感だけで付き合っていたのである。
そんな状況で、ヒロインが現れるのだ。兄や婚約者を、せっかく得た心の拠り所を奪われそうになったリュシエンヌは、当然激しく抵抗し、様々な嫌がらせを ―― かつて己が受けていた仕打ちと同じものを、ヒロインへと向け ―― 結果として退学からの修道院送りののち『病死』、あるいは降嫁こそするものの実質的には軟禁され子を作ることも許されぬままフェードアウト、場合によっては兄の手で斬り殺されるというエンドまで存在した。
いやでもリュシエンヌ、悪くないよね?
改めて彼女は、そう思う。
原作のリュシエンヌが義兄と婚約者をヒロインに取られまいとするのは、孤独になりたくないという思いからだろう。そもそも婚約者は未来の家族だ。それを守ろうとするのは当たり前だろう。
今さらながら、なんであんな理不尽なゲームにのめり込んでいたのか。
そう思いながら彼女は、ひとまずクーデターが来る日を待ち、その後は目立たずできるだけ攻略対象者たちとも関わらず、ひっそり暮らしていこうと心に決めた。
そうしてその日も、裏庭の井戸で空腹を紛らわせるべく水を飲み、身体を拭いていた彼女 ――『リュシエンヌ』は、気がつけばすぐそこに見知らぬ少年が立っていることに驚いた。
ここは後宮で、男子禁制である。王族以外の男が存在してはいけない場所だ。
「君、オレのこと見えてる?」
問いかけられてうなずき、ひとまず人目のない場所へと連れてゆく。
「あのね、ここは後宮だから、男の子は入っちゃだめだよ」
そう言うと、十代後半と思しきその少年は笑ったようだった。
茶色の髪に灰色の瞳、口元は布で覆っている。顔を隠すように首にも布を巻いているその姿には、何故か見覚えのようなものがあって。
「逃してくれるの?」
「ちがう。わたしはなんにも見てないし、だれにも会ってないの。だからあなたのことも知らないし、だれにも言わない」
「……ふうん、頭は良いみたいだね」
そう口にした少年は、どうやら他の誰にも見えていないようだった。
その後すぐ王妃に見つかったリュシエンヌだったが、少年が見咎められなかったことに安堵し、暴力を振るわれながらも、ちょっと嬉しくて笑ってしまう。
そうして、痛みの中で唐突に思い出した。自分が死ぬ直前に、原作ゲームに追加された隠しキャラの存在を。
名はルフェーヴル=ニコルソン。闇属性の暗殺者で、隠密能力に長けた青年だ。あいにく広告を見ただけで、追加ディスクをプレイする前に死んでしまった彼女は、それだけの情報と十年以上後の外見しか知ることはなかったが。
……隠しキャラなのに、全然隠れてないじゃん。
ぼんやりとそう思いながら、彼女は気を失ってしまって……


「寝取られ令嬢は英雄を愛でることにした」や「Jolly Rogerに杯を掲げよ」の早瀬黒絵さんの作品。
悪役令嬢転生系。書籍化・コミカライズ済。ダイジェスト化なし。本編完結済。
……というか、完結作だと安心して読み始めたら、読了した頃には続編の連載が始まっていた罠ww
定期更新の予定だそうですし、ちゃんと話を完結させる作者さんっぽいので、こちらも終わってから読むことにしようと思います。
内容としては、なんかもう安心感しかないというか。ヤンデレ×ヤンデレ=ラブラブ馬鹿ップルよね、という展開に、周囲も早々に諦めて受け入れてしまっているという、予定調和的な世界です。
ヒドイン関係はむしろおまけに近く、ひたすら新生・リュシエンヌが溺愛されながら幸せに生きていく(そして人の心が判らない暗殺者が、ちょっと成長していく)お話です。あとヒドインじゃない『ヒロイン』がどうなるかは、地味に気になりました。
なお隠しキャラことルフェーヴルさんは、一見チャラ男的な軽い言動の、でも実際は冷酷かつ自分勝手で、たとえ気に入ったリュシエンヌや原作ヒロインであっても、「手に入らないなら殺しちゃお」「閉じ込めて誰にも見せず、オレがいないと何もできないようにしたいなあ」的ヤンデレ。原作乙ゲーでは一回でも選択肢を間違えると、殺されてバッドエンドという高難易度キャラです。
そんな彼が17歳、リュシエンヌ5歳からべったり互いに執着し続ける、12歳違いの年の差カップルものでもあり。
ルフェーヴルはけっこう早めに前世や乙ゲー云々について説明を聞いているし、原作では不仲の義兄とも早々に和解。しかも義兄は十歳で受ける洗礼の晩に、女神のお告げとして乙ゲーの各ルートを夢で見るという体験をした結果、父である国王や側近候補の公爵令息などと相談。そんな未来が実現しないよう、全力で義妹(義娘)を愛し、不審人物(ヒロイン)を排除するべく計画を練るという、なかなか異色の展開です。
とにかくヒロイン以外がほぼすべて味方なので、虐待シーン以外はおおむねノンストレスで読んでいけました。
転生の理由とか、元々の『リュシエンヌ』の魂がどうなったかもちゃんと語られているので、そう言う意味でも完成度は高いと思います。
……まあ、ルフェーヴル(闇ギルド所属の暗殺者)のターンで、けっこうエグい描写もあったりしますが。ザマアも人を選ぶ感じの内容なので、そこらへんは要注意。あとだらだら長いと感じる人もいるかもしれませんね<テキストファイル200KBでざっくり文庫1冊として、本編だけで10冊分ぐらいある
No.3180 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

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