花髑髏 由利麟太郎シリーズ
2020年07月21日(Tue)
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読書記録:
横溝正史さんの由利麟太郎シリーズ。 ↓の掲載順を参考に、二冊目はこちらを選んでみました。
■横溝正史エンサイクロペディア・由利麟太郎クロニクル・由利/三津木「事件記録」年代順ソート http://kakeya.world.coocan.jp/ys_pedia/biblio/ ys_y_case_chronological_order.html
表題作ではなく、最初の「白蝋変化」だけで6割以上が占められています。 この白蝋変化がすごかった……最初は場面が二転三転するわ、次々登場してはすぐ退場するどのキャラに感情移入すれば良いのかがよく判らず、正直ちょっとダレていたのですが。 ようやく由利先生が登場したあたりでほっと一息ついたら、そこからが怒涛の展開でした。 最初は稀代の大悪人かつ怪人かと思われた白蝋三郎が、予想外な良心と活躍を見せると思ったら、とにかく敵に先手を取られまくりでだんだん気の毒に……なってきたところへ持ってきて、唐突に現れた謎の美少年だと思っていたその敵の正体が判明した途端、バラバラだったピースが全部繋がって「ああ!」と。 そして敵の正体が『それ』ならば、もう白蝋三郎の本領発揮とばかりに、由利先生達が駆けつけた時には全てが片付いている始末ww しかもそれで終わっておけば、普通にめでたしめでたしなところへ、「最後の悲劇」で「うえぇ!?」となって、さらに「憂鬱な結末」で由利先生に送られた白蝋三郎の手紙とその後の展開で「ああ……↓」となる。このジェットコースターさというか、浮き沈みの激しさがまさに横溝正史というか。 いやはや、白蝋三郎のようなキャラをトリックスターと呼ぶのでしょうか。 この話では本当に由利先生と三津木青年、いらなかったと思います(苦笑) そして最初から最後まで徹頭徹尾気の毒だったのは、やはり諸井さんか……彼にだけは心底同情できると言うか。周囲の都合に振り回された挙げ句、一度は悪いことを考えても、ちゃんと理性で踏みとどまったんだし。 人はみな、それぞれの人生を自分の為に生きていて、理非善悪は一概に判断できないのだなあと思わされたのでした。 残り二篇は「焙烙の刑」と「花髑髏」。 「焙烙の刑」は、かなりあっさりめの、まさに短編。 スター俳優の青年が、芸術家気取りの駄目男と結婚した従姉に同情していろいろ相談に乗っていたら、今度はその駄目男が誘拐された先からの呼び出しが。指示通りに行ってみると、酒に酔って前後不覚になっている間に人を殺してしまって、その始末を付ける代わりに金を要求されているという。ひとまずその場は片付けたものの、その脅迫者一味の首領と思しき女が、後日近づいてきて……という流れ。 俳優さんが途中で知人の三津木青年に手紙を出していたことで、由利先生がラストに颯爽と登場するという、こちらもある意味、あまり探偵の活躍はなかったです(苦笑) そして実は最初、その従姉をちょっと疑ってたんですが、考えすぎでした^^;; いやある意味その従姉が全ての元凶と言うか、この女性が一番あかんヤツやん……とは思わなくもなかったんですが。 そして表題作の「花髑髏」が、吉川晃司版ドラマの第一話原作。 時代設定(昭和 → 令和)だけでなく、内容も相当に改変があったとは聞いていましたが……確かにこれは、原作ファンだと怒るだろうなあ(笑) 導入部はそこそこ忠実なものの、犯行動機や関係者の人物像がかなり異なっていて、原作では殺される人間がドラマでは助かり、犯人の末路も異なるという、それこそ古谷版金田一にも並ぶ改変っぷりだったことがよく判りました^^;; まあ原作に思い入れのない私は、ドラマ版かなり楽しく見たんですけど。 ドラマでは、父を殺され自身も虐待を受けた犯人が、せめて大切な人は守るために……という流れだったのが、原作では異常者の父を持つ犯人はやっぱり異常者で、虐待とか別に受けてないのにさくっと復讐を始めて、しかも愉快犯の様相を呈してます。ドラマでは守るべき大切な相手だった人物も、罪をなすりつけたあげくに遠隔殺人しちゃうよ〜ww 空回りまくってた義理のお兄ちゃんは、一応純愛? を貫いて**しちゃうよ〜〜ww って、ああ、ドラマのラストで唐突にナイフ振り回したのは、そのあたりが中途半端に残ってたのかも。
そして一冊前「悪魔の設計図」を読んでた時から思ってたんですが、三津木青年はともかく由利先生の人物像が、ドラマよりもかなり軽いです(笑) いや横溝作品って、金田一さんとかでもけっこう作品によって、言葉遣いなどがブレブレなんですけどね。でも「これはたいへんな事件だぜ、三津木君」とか言ってるのを吉川晃司ビジュアルで想像しちゃうと、なんかこうこみ上げてくるものが……ww
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No.2060
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。
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