ある間諜と子爵令嬢の独白
2021年12月19日(Sun)
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読書記録: ■ある間諜と子爵令嬢の独白 https://ncode.syosetu.com/n8151gh/
わがままな伯爵令嬢の命令で、王太子の婚約者候補の一人だという子爵令嬢を探りに行く羽目になった間諜。 諜報の何たるかも知らぬ伯爵令嬢の指示により、触ったこともないハープを手に急遽標的の妹の誕生会へと潜り込んで、道化師兼ハープ弾きとして演奏の手を止めぬまま耳を澄ませていた彼だったが……付け焼き刃で身につけた演奏はともかく、指ばかりは長年続けた本職に及ぶはずもなかった。弦で切れた両手指を血に染めながら演奏を続けていると、妹令嬢が笑顔で恐ろしいことを提案する。 「みんなでダンスでもしない? ハープがずっと鳴っているんだから踊りたいわ」 その言葉に、彼は乾いた笑みを浮かべてしまった。 間諜に表で目立つ役をやらせると、かえって情報が得られないということを、今回の件であのわがまま伯爵令嬢も思い知るだろう。まあいいさ、感覚はなくなっているが、まだ指は動く。 そう思っていた彼の耳へと、よく通る声が届いた。 「ダンスもいいけど、その前に星の話をしない? ロザリンドは星にお詳しいのではなかった?」 それは彼の標的である、子爵家の長女、レリアの言葉であった。 妹は興味を惹かれたようで、会場にいた他の客たちもみな星の話へと意識を向ける。 これ幸いと演奏の手を止めた彼の目の前へと、一人の女性が立った。 「し、失礼。語りが気になって演奏の手が止まってしまいやしたねえ」 慌てて誤魔化そうとする彼を、しかし目の前の女性 ―― レリアは邸の中へ連れて行った。 「ごめんなさい。あなたがこんな指になってしまうまで気づかなかったなんて。ずっと音楽が聞こえていたのに」 そう言って指の傷を洗い、手当てをしたうえでたっぷりの報酬を弾んでくれた彼女について、間諜は雇い主に当たり障りのない報告だけしておいた。伯爵令嬢はレリアの美貌と、母親が平民だということが気に食わないらしく、いろいろな嫌がらせを画策し始める。 あのレリアって女も気の毒なことだと、そのときは肩をすくめるだけですませた間諜だったが ―― しかし数日後に漏れ聞こえてきた嫌がらせの計画は、さすがに看過するにはひどすぎるもので……
優秀だが人との接し方がよく判らない不器用な間諜さんと、貴族として抜け目なく生きてきた子爵令嬢の視点が交互に語られる、恋物語……なのかな? 目次では全8話ですが、6万5千字オーバー(薄めの文庫一冊ぐらい)とけっこボリュームがあります。完結済。 最後はけっこうばさっと終わります。ある意味、童話的な感じでしょうか。 優秀なはずの間諜さんは、育った環境もあってか、本人視点だと有能というよりもドジっ子に近いしww 王太子は太っ腹といえば聞こえが良いですけど、セキュリティ的なことをそんなにあっさり決めちゃって良いのかそれはとか。実母が平民の子爵令嬢が、王太子にその態度は大丈夫なのかとかとか、いろいろと突っ込みどころは多いのですが。 まあ、「そうしてみんな幸せになりました」というお話も、たまには良いと思います。ギスギスしたストーリーは、そろそろ辛いお年頃なのですよ…… それに女性が強い話は良いです。間諜さんの仕事を闇雲に否定せず、その誇りをちゃんと認めるというスタンスも好印象でした。 ……超特急で外堀埋めまくりに行くのは怖えと思いましたが。 のちのち尻に敷かれるのが目に見える……でもそれが幸せなんだろうね、きっとww
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No.2898
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。
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