2015年05月25日の読書
2015年05月25日(Mon)
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本日の初読図書: 田宮涼子の選択によって、新一は失っていた涙を取り戻す。そしてついに情報提供者として政府機関に協力することとなり、パラサイトを見分ける能力を持つ死刑囚、浦上と邂逅する。政府は見せしめも兼ねてパラサイトの拠点へと武力による大規模襲撃を決定、実行。 最強のパラサイトである五体結合型、後藤との対決とミギーの戦線離脱。単身、隻腕で後藤と戦うことを決めた新一の想いと葛藤。選んだ道。 混乱の中、逃亡した死刑囚浦上の主張する人間の姿とは。そして新一とミギーの見出したものは ―― ?
全三巻の完結編。ちょっと少なめの670ページでした。 いやあ、何度も言ってますが深いです。 一見、過激描写が売りのバトルアクションと見せかけて、その実態はけして化け物と人間との単純な善悪二元論に留まらず。人とは何か、生きるとは何か、利他とは、利己とは、罪とは、悪とはと、これでもかというほどに問いかけてきます。 人間を何百人と殺しまくった後藤との戦いで、重要なキーとなったのが、その人間が無責任に不法投棄した産業廃棄物だという皮肉。そして広川市長の正体と、新一を最後に追い詰める『彼』。 田宮涼子の語る「我々はか弱い。だからあまりいじめるな」という言葉がじわじわと効いてきます。
そしてこの作品のすごいところは、これだけの紙面を費やしてなお、それらの問いに明確な答えを出していないところではないでしょうか。 なんかそれらしいことを言いつつも、あくまで解答はぼやかされており、読者それぞれがそれぞれに考えろといわんばかりの問題提起で終わっています。 人やそうでないモノ達の持つ醜さや罪悪感、葛藤、逃避やエゴをもきっちりと描き出した上で、さあ、あとは自分で考えろと放り出す。
この話を読んだあとは、モヤモヤが残る人も多いかもしれません。しかしそのモヤモヤに対して自分の頭で考えさせる。けして判りやすい答えを目の前に提示して、「ほらこれが正解なんだよ」と安易に読者へ押し付けない。 だから読み終えた後に、新一の行動やミギーの選択、パラサイト達の未来について思いを馳せてしまう。それで良いのか、自分ならこうするんじゃないのかと批判してみたり、いややっぱりそれで良かったじゃないかと共感してみたりする。 単純にめでたしめでたしで思考停止に陥らせないところが、この作品の魅力なんだと思います。
私は実写映画は金曜ロードショウの特別編を見ただけで、劇場版の方は一作目も完結編も未視聴です。 劇場版がどんなふうになっているのか知りませんが、改めて原作を読んでみて、そこらあたりをきっちり描いていて欲しいなと切に思ったのでした。
ところでちょっと気になった所。 「生の章」の方で、広川市長が車の上に並んで立ち演説してるシーン。ミギーが「高い位置に(パラサイトが)六人」って勘定してるんですが……この最終巻を読んでみると、あれ、計算あわなくね? と。 ……まあ、実はこの時点ではまだ後藤が全身を統合しきれておらず、一人で二〜三体勘定されてたって解釈すれば、筋が通らなくもないんですけどね(苦笑) そこのところだけ、少々違和感だったのでした。
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No.6837
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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