2015年02月26日の読書
2015年02月26日(Thr)
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本日の初読図書: デュークの『未練』を断ち切るためにも、早々に結婚というカードを切ることに決めたレティーツィア。 考慮した結果、夫候補に上げたのは南国ナパニア国の第六王子ソレス・デ・ラ・イグレシオだった。彼は庶出で十二歳までを王宮の外で育ち、現在は臣下としてナパニア海軍に務めているという。つい先日、若干二十歳にして、他国にも名高い勇敢なる大艦隊の総司令官に就任したというから、そのネームバリューは申し分ない。血筋の低さなどはどうでも良い。むしろナパニア国への忠誠心など持っていられては困る。女王の夫としては、生家への情など持たず、他国のであれ王の配偶者としての名誉に満足してくれる程度の男がちょうど良い。 そんな次期女王としての公の部分ばかり条件にあげるレティに、デュークら周囲の騎士達はそれぞれ複雑な反応を見せる。 ともあれまずは、見合い ―― の、前段階となるお互いの顔合わせをしなければならない。 レティはデューク、アストリッド、クレイグの三人を連れて『公のお忍び』でナパニア国へ向かう。ナパニア王家と交わした計画では、ナパニア王室御用達の商家“野うさぎ商会”の商船に乗って、海上で『偶然』バリエンテ艦隊と遭遇し、総司令官であるソレス王子と『意気投合』した結果、ナパニア港まで送ってもらうという手はずになっている。 ところが濃霧のせいで、レティ達の乗る船とバリエンテの三番艦が衝突事故を起こしてしまう。 野うさぎ商会の副船長ザイーツと三番艦の艦長がもめているところへ颯爽と現れたのは、夕焼け色の髪に琥珀色の瞳を持つ青年だった。 純白の軍服に身を包んだ奔放で人懐っこい彼 ―― ソレス王子は、どこか騎士王の生まれ変わりの一人、失恋王ルートガーを思わせて、レティに強烈な印象を残す。 無邪気で好き勝手に動いているようでいて、部下達にしっかりと目を配り、厚い信頼を寄せられている。自分がお飾りの提督だという自覚を持っていて、きちんとその役割を果たしている。 いつも相手にしている人間とは異なるその言動に振り回されながらも、レティは相手の有能さとその心のうちに隠した寂しさを見つけてゆく。 ところがナパニア港に到着する寸前、ソレスの船室から麻薬が見つかるという事件が起きた。即座に見合いは中止となったが、しかしレティはソレスの今後については楽観していた。彼が麻薬など使う人間ではないと、周囲の者は口を揃えて証言するだろうし、いくら後ろ盾がないとはいえ王族は王族。内々に事件はもみ消され、なかったことになるだろうと。 ところがソレスはろくな弁護士もつけられないまま、公開軍法会議にかけられることとなって……
シリーズ9巻目は、レティの縁談というかなり重要な展開だったんですが。 ……なんか本編と関係ないところで交わされる、ちょっとした会話の方が個人的にツボにはまりました(笑) アストリッドがデュークに、嫉妬ってどういう感情なのかと質問して説明されたあとで、ソレス王子の行動を見て「……これが嫉妬」「新しい体験おめでとう、良かったな」ってやりとりしてるとか。 レティに誕生プレゼントを贈られた艦長さんをうらやましがるアストリッドに、「お前の誕生日っていつなんだ」ってデュークが訊いて、「騎士学校の入学申込のときに慌ててねつ造したので、覚えてないんです」「虚偽申請を堂々と暴露するな」って淡々と話しつつ、後で書類を調べてやると約束してるとか。 最初の頃はアストリッドの才能に複雑なものを抱いていたデュークなのに、いつの間にやらすっかり仲良くなっちゃってvv そしてそれを(生)暖かい目で見守っているクレイグがまたグッジョブ! というか。
心配していた恋愛方面については……レティが徹頭徹尾朴念仁だし、デュークが鋼の理性の持ち主なので、すれ違いのドロドロ展開には拍子抜けなほどならなかったのが、良かったのか悪かったのか(苦笑) とりあえず夫候補のソレス王子が、ルートガー似のやんちゃかつ魅力的な存在だったので、これはこれでレティと並び立っても悪くないなと思わせるところが、作者様の憎いところ。 この作者様は、いったい何パターンの「イケメン」引き出しをお持ちなのか。
前巻で、ある意味ことの発端でありながら、結局は出てこないままに終わってしまった「人身売買で売られて行方不明になった、美しい声で歌う白髪紅眼の少年」についても、きっちり伏線として回収してくるし……本当にさすがですねえ、このシリーズは。
実は私、正直言うと裁判モノが苦手です。テレビドラマとかで法廷の場面が出てくると早送りで飛ばしたり、事前にそう言うシーンがあると判ってたら、あえて見なかったりするタイプです。 なので今回は公開軍法会議になった時点で「あ、これヤバイ展開かも」と思ったんですが。そこはさすがのレティですね。負ける勝負はしないというか、負ける要素があるうちは勝負しないというか。見事に懸念事項を潰しまくってくれたので、心安らかに読むことができました。
結局、今回は「夫」についての問題は解決しなかったものの、「多少の減点は怖くなくなった」という新たな強さを身につけたレティ。 ……そう言えば、王の間の面々に助力を求めることもなかったですし、着々と成長して行くさまが本当に格好良いですね。 ナイツオブラウンドも、残すところあと四人。もう一人ぐらい女性枠があっても良いと思いつつ、次はどんなタイプのイケメンが引き抜かれるのか、まだまだ楽しみでなりません。 ……ってか、まさか最後の二人は兄上達だったり……しないよね……?
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No.6622
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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