よしなしことを、日々徒然に……
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 2013年10月27日の読書
2013年10月27日(Sun) 
本日の初読図書:
「卷煙草の灰(近代デジタルライブラリー)」三津木春影
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914197

大正時代のホームズ翻案。今回からは呉田博士と中澤醫學士のシリーズです。まずは短めの、「金縁の鼻眼鏡」を元にした話から手をつけてみました。上記URLのコマ番号68〜101に収録されています。
基本的に同作者さんの別翻案、「禿頭組合」の上泉博士と中尾醫學士と同じような雰囲気で、二人の間には明確な年齢差と上下関係があるようでした。そして文体は助手視点ではなく、三人称。呉田博士は単に犯罪捜査が好きなだけで、別に探偵を職業にしているのではない模様です。

舞台ははっきり『日本』。「ケント州の南方のチャタム」が「川崎の東の吉田」になっています。そして「イギリス人を装っていた、ロシア人の虚無主義者ニヒリストな革命家」が「東北出身で支那の革命黨の志士」といった表現に変わっています。「シベリア送り」の刑も「武昌城中の穴藏の中に禁錮」と言った具合(笑)
このあたりの思い切った改変といい、また固有名詞も含めて割と直訳に近かった保村俊郎シリーズに比べると、話の流れは同じでも一度咀嚼して意味を呑み込んでから、自分の文章で書き表し、当て字表現なども多用したりと、だいぶ文章がこなれているように感じられますね。これは翻案に慣れてきた、後期の作品だということなのでしょうか? それともまだ海外作品をそのまま受け入れる土壌ができていない時代に、なんとか日本風にアレンジした苦肉の初期作品なのか??

ともあれ。
この作品では冒頭の二人のやりとりなどはかなりざっくりと省略されていて、わずか数行で警部が事件を持ち込んでしまいました。ちなみに警部さんはスタンリー・ホプキンズから山賀(やまが)警部に。
ちなみにその時に呉田博士が解読していたのは、「(消して書き直した)羊皮紙の薄れた元の字」だったのが「豐臣時代の古文書」になっています。そして山賀警部が乗ってきた馬車は、「俥(くるま)」とあるから、これはきっと人力車のことなんでしょう(笑)
他に人名は、「コラム教授」が「樹立常春(こだち つねはる)と申す著述家」、「家政婦のマーカー夫人とメイドのスーザン・タールトン」が「奧働きの梅田さいと女中のお村」、被害者ウィロビー・スミスは「波山夏雄(なみやま なつを)」となっています。
あと面白かったのは、車椅子(Bath chair)が「乳母車の樣な物」に、「シュロの敷物( cocoanut matting )」が「綺麗な花蓙(はなござ)」と書かれていたあたりでしょうか。ニスを「假漆」って書くのは、この間「Qさま!(※クイズ番組)」で問題になってたっけ(笑)

ストーリーそのものは、正直どんな話か覚えていなかったんですが、博士がやたらと煙草をふかし始めた場面で「ああ!」と思い出しました。うん、これは確かに面白い話のひとつでした。ホームズさん……もとい呉田博士が、やたらと女性をたらし込むのがうまい(笑)という点もちゃんと語られています。

ただワトソンさん改め中澤醫學士が、原作に輪を掛けて空気というか……いる必要があるのか? という存在感の薄さになっていて非常に残念です。ワトソンさんは事件の記録者という重要な役割と、ホームズを支える唯一無二の相棒というポイントがあるのですが、中澤醫學士は本当に呉田博士の後をついて歩いているだけ。助手としての役割すら果たしていないように思えて、ワトソンスキーにとってはちょっと悲しかったです。
No.5219 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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