2013年06月29日の読書
2013年06月29日(Sat)
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本日の初読図書: かつて、『正義の大泥棒』『現代の鼠小僧』と呼ばれる窃盗団があった。テイクファイブと名乗る彼らは、人を幸せにする盗みをモットーとし、悪人からしか窃盗を働かなかったという。 しかし彼らはダ・ヴィンチの名画「ルクレツィアの肖像」を盗み出す際に、警官を一人殺害していった。そして以降テイクファイブは二度と活動することなく、消息を絶ってしまったのである。 それから二十年が過ぎた、現在。 上教大学で心理学の講義を受け持つ帆村正義教授は、ホームレス風の謎の老女から呼び出しを受けた。彼女は正義に一枚の写真を見せる。それは二十年前から行方が判らなくなっていた、「ルクレツィアの肖像」を写したものだった。その絵はいま、東都銀行の担保倉庫に隠されているのだという。 彼女は問うた。 「昔の血が騒がないかい?」と。 帆村正義は他でもない、五人いたかつてのテイクファイブのメンバーの一人だったのである。 しかしルクレツィアの肖像は、彼らが盗んだのではなかった。正義もまた、二十年前に一体なにが起こったのか、名画はどこへ消えたのかをずっと疑問に思い続けていたのだ。 それらの謎の鍵となるルクレツィアを一目見たいと、正義は夜の東都銀行へ忍び込む。そして保管倉庫で偶然、同じように窃盗目的で忍び込んでいた新美晴登と鉢合わせることになった。晴登のミスにより警備員に見つかってしまい、二人は力を合わせかろうじて逃げ出すことに成功する。 一方で窃盗に入られたという通報を受け東都銀行へ急行した刑事 笹原瑠衣は、間一髪で犯人を取り逃がしてしまい、歯噛みする。しかし現場に遺された遺留品から、この犯行にはテイクファイブが関わっているのではないかと予測した。 瑠衣の父は、二十年前にルクレツィアの事件で殺された警官である。テイクファイブを、ひいては泥棒そのものを激しく憎む彼女は、なんとしても彼らを捉えようと執念を燃やしていた。 さらに東都銀行と警察上層部の間に不正があると睨んだ刑事 岩月櫂は、その証拠となる極秘データを求めて密かに動き始めており、そして東都銀行の計画的破綻によって財産を失い自殺をはかった父の復讐を願うのは、今は亡き祖父がテイクファイブの一員だった青年、火岡均。 絡み合うそれぞれの事情が、東都銀行を中心として、収束してゆく ―― ついに正義は、かつての仲間 南真一にも声を掛け、均と三人で一夜限りのテイクファイブ復活を決意する。 だがそれは、ルクレツィアの肖像にまつわる二十年前の謎へと迫る、その始まりの一歩に過ぎなかったのである……
……どうか阿呆と言って下さるな。 今シーズン楽しく全話録画保存した、お気に入りドラマのノベライズ。出版されていることを偶然知ったのですが、ドラマ終了直後という時期が悪かったのか、リアル本屋はもちろんのこと、ネット通販でさえ在庫がどこも軒並み品切れ状態でして。古本だと定価よりむしろ高くなっていたのを、探して探して、最終的に「二点以上同時購入で、一点につき50円返金」というショップで全二巻をポチリ。なんとか合計で定価より1円安く入手できました。さいわい状態も新品に近かったので、ほっと一安心(苦笑)
で、もって。 届いてさっそく読み始めた訳ですが……うーん…… ノベライズとしては悪くない。悪くないけれど……でもドラマ未視聴でこれ単体を読んだ場合だと、やっぱり判りにくいところが随所にありそうかなあ。 特に謎を解明していく順番が明らかにおかしい。え? それはここぞと言うところで出すべきオチなんじゃないの!? という真相をいきなり地の文であっさり暴露したと思ったら、あとからしたり顔での謎解き演説(内容同じ)が入ったりとか。すべての裏事情をあらかじめ書いてあるのだろう台本を元に、手を加えながら小説という体裁に書き直した文章を、完成してから通しで読み返し確認してあるのか?? と思う部分がちらりほらり。 他にも神様視点すぎるというか。その時点でその場面にいる誰もが知らないはずの情報が、何の断りもなく普通に出てくるのも根は同じなのでしょうか。一言「彼らは知らない事実だったが」といった一文が間に挟まっていれば、この違和感も解消されるのにと、細かい所ながら残念でした。 そもそも一話目で各メインキャラが登場するたんび、その名前が唐突にフルネームで書かれているあたりがまた気に障るんですよ! これじゃあ初読時に誰が主要キャラで誰がモブに見せかけた裏重要キャラなのかとか、予想したりそれを裏切られて楽しむ余地がないじゃないですか。 あと地の文で明らかな嘘を書くのはずるいとか、時系列がたまにおかしいとか、気になり出すとボロボロと……
……まあ、ともあれ。 文句はつけましたが、何度も言うように内容はそう悪くなかったと思います。微妙に思えるようなストーリー改変もほぼなく、おおむねドラマの展開通り。 文章がいささか事務的で素っ気なくはあったものの、必要な情報はちゃんと盛り込まれていたし、台詞ばかりで台本に毛が生えただけの、スッカスカな文面ということもありませんでした。 TVを見ていただけではよく判らなかった部分、特に一話目の岩月さんがどこでどうやって正義達の情報を得て、かつ盗みの様子をリアルタイムで観察できていたのか。そもそもどうして東都銀行のデータを欲しがっていて、どういう心境の推移でTAKE FIVEの仲間に入ったのかなど、ある程度の疑問は解けました。 ……しかしまだ判らないことがあります。ホームレスの老女は、そもそもの話の発端となった『東都銀行の保管室にある「ルクレツィアの肖像」の写真』を、どうやって入手したんだろう(悩) ドラマではいつか明らかにされるだろうと思って待ちかねていたら、最後までそこには触れられないままだったからなあ……
瑠衣さんの割れた腕時計についての改変は、個人的にドラマよりも好みの展開でした。 ……ただここにも齟齬があって、途中で「ガラスが割れ、秒針が動かなくなった」とあるから、ああノベライズでは完全に止まった訳じゃないからその後も使い続けてたんだ。ドラマより自然だな、と思っていたのに、のちの文章で「腕時計が壊れていて、見ても時間がわからない」とあったり、晴登が「それじゃ時間が判らない」と腕時計をプレゼントしようとするエピソードがそのままだったり。まったく校正が甘いぞ、編集!
そしてさらに、非常に非常に気になる最大のポイントが。 一話目で瑠衣さんが、低酸素の機密部屋に閉じこめられる盛り上がりシーンです。 ……晴登よ、あんた「警備員がすぐ(窒息する前に)助けに来るさ」って気軽に瑠衣さんを閉じこめてるけど……そこって頭取の掌紋がないと警備員でも扉を開けられないってのが、盗みに入る上で大きなネックだった部屋なんじゃないのか……? 停電が起きて初めて焦るとか、そんな場面じゃないだろう!?
1巻目のラストは、濡れ衣を着せられた晴登が逮捕されると言う、まさにここしかないだろう! というお約束シーンで以下続刊。そして帯によればノベライズの結末は、「ドラマとは異なる驚きのエンディング」だそうで。 ここは瑠衣さんの時計のように、よりいっそう楽しめる内容になってくれていると良いなと期待しつつ、二巻目を読もうと思います。
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No.4909
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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