よしなしことを、日々徒然に……
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 2013年03月28日の読書
2013年03月28日(Thr) 
本日の初読図書:
4894568683三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)
北方 謙三
角川春樹事務所 2001-06

by G-Tools
……もういい加減にしろと言わ(ry
えー、かのハードボイルド作家、北方謙三版です。全13巻の1冊目。
ぶっちゃけ、かなり面白かったです。もう完全にエンターテイメントなパロディ小説。キャラクターの心情重視の物語でした。
場面によって視点が各キャラに飛ぶので、群像劇を見ている感じでしょうか。劉備や曹操はもちろんのこと、孫堅や呂布や、果ては袁紹までがその内面を語ります。
1巻目はお約束通り劉備三義兄弟の出会いから始まり、洛陽炎上から半董卓連合の瓦解を経て、乱世の始まりのなか孫堅が戦死するまで。全13巻しかも孔明死亡段階で終わるらしいことを思えば、かなりのハイペースで進んでいると思います。……この調子だと、中盤はどれだけエピソードが盛られるんだろう(苦笑)

北方版の良いところは、覚える必要のない雑魚キャラについては、ざっくりと描写を削られていることでしょうか。「換言した者がいたが首を刎ねられた」とか「部隊長は戦死した」といった感じで、のちに活躍しないキャラはいちいち名前なんて挙げられないので、無駄に記憶力を使う必要がありません(笑)
そして宮廷内の権謀術数もかなりシンプルに書かれていて、帝なんて本家演義以上に空気です。それがいっそ判りやすい。
ただ難点は、いろいろ省略しすぎて、必要な部分の説明をたまに忘れているところがちらりほらり。いきなり出てきた人名が誰これ? 状態だったりと、基礎知識がないと辛い部分が随所にちょこちょこありました。
それにかなり改変やオリキャラが多いので、これを一番最初に読むのはおすすめできませんね。演義で有名なあらゆる見せ場が、ほとんど削られていますし。
桃園の誓いは言うに及ばず、曹操は董卓暗殺を失敗したり、かくまってくれた恩人一家を勘違いで皆殺ししちゃったりとかしないし、関羽が熱燗の冷めない内に一人で華雄を切ってくる話などもありません。つまり演義で講談的に盛られたエピソードがなくなって、むしろ「実際にはこうだったのかもしれない」と思わせるような、ある程度の現実味を出しています。これは元ネタの荒唐無稽さを知っていないと、楽しめない部分でしょう。

逆に呂布についてはかなりページが割かれていて、彼の幼少時からの生い立ちが詳しく捏造(たぶん)され、母に対する情愛が転じた愛妻家として描かれています。この呂布は、確かにあまりものを考えないかもしれないけれど、むしろ自分は主君に従って戦うだけの存在だと自覚していて、無骨かつ純粋ですらある、不器用なまさしく武人です。

そしてなによりも斬新なのは、劉備でした。
この劉備なら、私は許せるかもしれない。今まで読んできた数々の作品の中で、その口先ばかりのエセ人徳者ぶりと、支離滅裂な行動にうんざりさせられた劉備ですが、北方版はひと味違います。
「虐げられた人々のため」などと青臭いことは言わず、夢は最初から「天下を平定」。漢王室の復興こそ目標ではありますが、他人の家来になることを良しとせず、己は大将であると、自分の意志で浪人しています。
そして賄賂を要求する役人にブチ切れて、自分のその手でがっつり殴りつけます。
そして殴り殺すと主張する劉備に、俺が代わりにやると言って、役人を人前に連れ出し叩きのめして見せる張飛が素敵。
命を助けた官吏にすら侮辱され、かっとなった劉備が剣に手を掛けた瞬間、先に相手をぶちのめす張飛の空気の読めっぷり。皆に見えないよう、後ろからそっと劉備を押さえている関羽のさりげない気配り。ううむ、斬新です。
そして「良い兵を鍛えるためには、苦しい思いをさせなければいけない。役に立たない一人を殺して、残りの百人が強くなるなら、それで良い」という方針を打ち出す劉備と、「指揮官は兵に嫌われてはいけない」と言って、劉備は訓練に加わらせず、自分が引き締める役をする関羽と、役立たずをぶち殺す役を引き受ける張飛。
趙雲に対して劉備は「私が、徳の人だなどとは思うな。私には弱さも醜さもある。多分、狡さもな」と語ります。良いじゃないか。自覚した狡さ醜さ、それこそが人間ですよ!
ちゃんと張飛や関羽にも悪いと思っていて、特に張飛に対しては辛いことをさせていると気にしているのですが、張飛はそれが自分の役目だと割り切って、劉備を一途に慕っている。この時まだヒゲもろくに生えそろってない、二十歳そこそこなんですよ、張飛は。くぅっ、健気じゃないか《o(><)o》

こういう流れがあると、のちに関羽や張飛が死んだあとに、劉備がグダグダになっていくのも納得できるんですよね。つまり『人徳者 劉備玄徳』をプロデュースしていた義弟達がいなくなったから、かっとした時に止められなくなって、そのまま暴走しちゃうんですよ、きっと。
嘘臭くって、仁義馬鹿が上滑りしているようにしか見えない演義の劉備よりも、ずっと親しみが持てるキャラクター設定でした。

さて、あとはこの三義兄弟に、孔明さんがどんなふうに関わってくるのか……これはなかなか楽しめそうです♪
No.4666 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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