2012年07月14日の読書
2012年07月14日(Sat)
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本日の初読図書: 時は1857年のヴィクトリア朝イギリス。 凄惨なクリミア戦争からかろうじて帰還した三十一才のエドモンド・ニーダムは、勤めていた新聞社がつぶれていたため、「ミューザー良書倶楽部」という大手貸本屋に就職することになった。たまたま面接についてきていた姪っ子のメープル・コーンウェイ十七才も社長に気に入られ、作家達の悪筆原稿の清書やお茶汲み、受付などの仕事を担当することとなる。 その当時は出版物の単価が高く、書物は個人が所有するよりも貸本屋で借りるのが一般的であった。故に貸本屋の立場は強く、執筆に注文をつけたり、新人作家の発掘なども積極的に行っていた。当然、著名な作家の世話を見ることも仕事の範疇である。 就職しておよそ一年。仕事にもだいぶ慣れ、会社でも重用されるようになってきたニーダムとメープルは、負傷した担当者の代わりにチャールズ・ディケンズの世話係を命じられた。現在彼の家にはデンマークから来た童話作家アンデルセンが滞在しており、いささか風変わりなところのある彼も含めて面倒を見ろという訳だ。 当時ディケンズは行方不明になった北極探検隊の捜索に出資しており、捜索船の出港を見送るため北部エジンバラへ向かう予定になっていた。アンデルセンもそれに同行したがり、当然の結果、ニーダムとメープルも付き添うこととなった。 彼らが目指すスコットランド北部には、現在世間をにぎわせるニュースが存在している。沿岸の島「月蝕島」に巨大な氷山が漂着したのだが、その内部に十五世紀頃の帆船が閉じこめられているというのだ。それはかつてスペインがよこした無敵艦隊の一隻ではないかと噂されていたが、月蝕島の領主ゴードン大佐が島への立ち入りを禁じているため、誰も実物を目にすることができないでいた。 エジンバラで新聞社支局長マクミランから氷山船の話を聞いた作家二人は、興味をかき立てられる。さらに粗暴なゴードン大佐のふるまいに怒りを覚えた彼らは、是非ともその船を調査してくれようと月蝕島へむかった。しかしかの地は十九世紀のイギリスとも思えぬ、横暴な治世が横行する時代遅れな治外法権で……
昨夜読書記録をUPし終わってから読了。 23日から青春アドベンチャーでラジオ放送されるというので、原作を手に取ってみました。 タイトルに「魔物」とあるからもっとファンタジックな内容だと思っていたら、オカルト要素はほぼ最終章だけでした。むしろ史実を下敷きにおもしろおかしく捏造したなんちゃって時代物、かな? アンデルセンにディケンズといった文豪と、クリミア戦争帰りの元兵士&その姪っ子がドタバタと。復讐譚の要素もちょっとあったりして楽しかったです。他にもいろいろと当時の事件や出来事が散りばめられているそうで、そのあたりも興味深く。基礎知識がある人だと、さらに倍率ドンで楽しめると思います。この方にしては、極端な政治批判部分がなかったのも読みやすい要因だったかも。
でもって、一見ヘタレ常識人のようでいて、実は有能かつぶっとんでいる語り手というのは、田中先生お得意の展開ですよね。いや、そう言うキャラが大好きなんですがvv<例:泉田警部補、始兄さん、自転地球儀の白河周一郎 特に今回のネッドおじさんは、最初は戦場トラウマでパニック起こしたりしていたのに、後半は戦う戦う。十人を相手に狩猟ナイフと棍棒で冷静に立ち回る姿がとっても素敵でしたvv
全三部作予定で、現在は二作目まで出ている模様。でもこの一作だけでも、話はちゃんと完結しています。……って言うか、図書館にこの巻しかない(しょぼん) また収蔵リクエストをかけるべきかしら……
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No.3892
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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