2010年06月22日の読書
2010年06月22日(Tue)
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本日の初読図書: 人工子宮AUの使用が一般化された未来、あえて生身の肉体で妊娠出産をしようという女性達が暮らす、東京都第七特別区、通称バルーン・タウン。 そこはあらゆる犯罪と無縁なのどかな別天地のはずが……ある日のこと、区外で起きた殺人事件の犯人が、タウンへ逃げ込むのが目撃された。その犯人は、明らかに妊娠中の女性だということで、都警の刑事である江田茉莉奈は捜査のため、バルーン・タウンに足を踏み入れることとなった。 どこを見わたしても妊婦妊婦妊婦。妊娠出産という言葉がはしたないものと言われるようになりつつある時代、彼女はカルチャーショックに見舞われながら捜査を続けるのだが ――
安楽椅子探偵アーチーの松尾由美さんのデビュー作短編集。 最初にあらすじを読んで、「母性溢れる素人妊婦探偵によるほのぼの短編集」を想像していたら、かなりピリッと風刺の効いた、ジェンダーについて考えさせられるお話でびっくりしました。 身体の形を異形化させてまで子供を産もうとする女性達に疑問を覚え、もっと楽な方法を何故選ばないのか、選んだのははたして彼女達自身なのか、周囲に選ばされたのか。などなど、なかなか厳しい語り口です。
「赤ん坊というのは、予定日にお洒落をして病院に行くと、病院のスタッフから祝福とともに手渡されるものではなかったの?」
出産についての本を読んだ茉莉奈の抱く、この感想が、この小説全体に漂っている、妊娠出産に対する「世間」の意識を端的に現していると思います。 ……すごいなあ、こういう異文化を書き表せる筆力って。
あと、「亀腹同盟」という短編が、ホームズの「赤髪同盟」、「六個のナポレオン像」、「踊る人形」ネタを絡めていたのが、個人的に楽しかったり。
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No.2764
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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