2012年12月06日の読書
2012年12月06日(Thr)
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本日の初読図書: 以前WEBで期間限定公開されていた「英雄ラグナのやんごとなき事情」が改稿の末に受賞、さらに大幅リライトの上で書籍化されたものです。幸いにも公開中に読むことができており、その時の感想はこちらに書いていたのですが。 むむむむむ…… 出だしを要約すると、↑の記事で書いたものとほぼ変わりないので、そこは省略。 ただ二章目以降からの展開が大きく変わっています。新キャラも何人か登場。それ自体は良いんです。むしろそれを目的に購入したので望むところだったんですが。 ただなあ…… 途中展開はおもしろかったです。確かに、以前はいろいろ寄り道しすぎでとっちらかり気味だったストーリーがすっきりと判りやすくなっているし、WEB版ではモブの一人に過ぎなかったシエテが重要キャラになっていて、後半の展開を盛り上げてくれてます。 大切なのは肉体的な強さ弱さではなく、人との繋がりこそというメッセージ。努力すればするほど裏目に出ていく活動の中で、敵となる人々も多いけれど、それでも少しずつ育まれていく貴重な友情。 ラストのオチもお約束的展開が計算されていて、このまま終わっても良いし、続刊も見込めるし、と。 1冊の本としての完成度は、はっきり上がっているでしょう。
だが、しかし! あえて言おう。私は改稿前のWEB版のラストが好きだったんだ!! 英雄になりそこねた青年ラグナと、堕紳士ロキ。 この二人が最後に見せた、あのラストに私は非常な衝撃を受けたのですYO! 「ああ、作者さんってば北欧神話テイストな名前が好きなんだなあ(笑)」とか思っていたら、そこにそう繋げるとは! というあの感動。 実はすべての黒幕が……だったと判明した時のしらけっぷりとかも、実に「らしく」ってvv それが! すべてっ! 別展開に _| ̄|○
よく読んでみると、『精霊百選』をシエテに渡したのが誰なのか明らかになっていなかったり、ラグナに精霊を封じた相手も不明なままと、明らかに続刊を意識した作りになっているので、まだ希望はある訳ですが。 ロキの正体も謎のまんまですし……続き、出るよ、ね? ぜひあの感動を、WEB版を御存知ない方にも味わって欲しいところです。
あとはぶっちゃけた話、本当にこれは超個人的な好みのことなんですが……イラストが(泣) 確かに私が脳内展開していたのはあくまで私個人のイメージなんだし、作者様はいたく気に入ってらっしゃるようなので、いち読者が文句をつける筋合いではないんでしょうが。 正直、WEB版を読んでいなかったら、表紙だけでまわれ右してました。 中身のイラストも以下同文。 萌え系好きな人には、これがたまらんのかもしれませんが、スマン私には無理だ。なによりロキが若すぎるキラキラしすぎる。そして各キャラのファッションセンスが(以下略) 書籍化の醍醐味とも言うべきイラストが好みに合わなかったので、かなりしょぼんなのでした……
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No.4375
(読書)
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2012年12月04日の読書
2012年12月04日(Tue)
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本日の初読図書: 元代末期。力を失っていく王朝に見切りをつけた文士 陶華は、科挙の受験を取りやめて、故郷の成都へ戻るべく旅をしていた。しかし巷には食い詰めた流賊が満ちあふれており、世間知らずの陶華の旅はなかなかはかどらない。路銀は残り少なくなってきたし、いつの間にか付き人ともはぐれてしまった。 そんな彼がたどり着いたのは、城塞都市渓陵城の近くにある小さな農村、桃渓村だった。渓陵城は現在、三万を越す流賊に包囲されており、籠城戦のただ中にある。顔軍師の活躍により半年の長きにわたって防衛が続けられ、攻める流賊はじょじょに余裕をなくしつつあった。そんな状況で、飢えた流賊に略奪されることを恐れたのか、桃渓村には食料どころか人っ子一人残ってはいなかった。 しかたなく空き家で手持ちの食料と共に夜露をしのごうとした陶華だったが、煮炊きの煙と明かりに誘われたようで、次々と人が現れる。愛らしい女道士 杏霙に、二人連れの老行者 施檜と孫吉。賊に襲われていたところを行者たちが助けたという、近在の村の女の子 小蘭。さらにはその生き残りと思しき賊達に追われながら、商人 柴七郎と医者 呂九叔と用心棒 林丙の三人まで転がり込んでくる。 異様なほど腕の立つ行者達と女道士によって、賊達はあっという間に倒されたが、まだその仲間が追ってくるかもしれない。そこで一同は場所を移すべく近くの川にあった小船に乗り、流れを遡っていった。するとその先にあったのは、さながら陶淵明の書く『桃花源記』を思わせる、美しくのどかな桃源郷のごとき村。 なんでも桃渓村の人々が、有事の際に避難するためひそかに作っていたというその場所は、岩山に穿たれた洞窟を唯一の出入口とし、周囲を高い岸壁に囲まれた隠れ里であった。 他の場所に繋がる道もないので、一同はしばしその村で身を隠し、賊をやりすごすことに決める。 しかし翌朝、彼らの世話係となっていた青年が、殺され首を切断されているのが発見された。平和な村に部外者が現れた途端、発生した残虐な殺人事件。村人達が浮き足立ち、一同が互いに疑心暗鬼になるなか、今度は立て続けに、女子供も含めた十五人もの人間が殺されているのが見つかって ――
中国武侠ミステリー。シリーズ三作目は嵐の山荘的な長編作品です。 まあ長編とは言っても 260 ページほどなので、中編と称しても良いかもしれませんが。 これまでのお話だと、長めだった二本は「おもしろいけれど途中ちょっとだれる」という印象があったんですが、今回はかなりサクサクと読み終わっちゃいました。 登場人物が多く、しかもそのほとんどが素性を隠しているので混乱するかと思ったら、そのあたりも意外と判りやすく。 ふふふ、それにしても「誰が犯人なのか」「誰が銀牌を持っているのか」というポイントが、誰であってもおかしくないというか、誰であってもストーリー的においしいと思える展開で、読んでいていろいろ想像を巡らせてみるのが楽しかったです。 既に三度目の登場となる顔軍師と爺が現役時代なのだから、銀牌侠はやっぱりあの人だろうかと思いつつ、いやしかしそれじゃあストレートすぎるか。あの子が犯人だとおもしろいけれど、前回も子供がキーだったからそれはないだろうか、などなど。 それにしても今回の一番びっくりは、やはりなんと言っても大行者でしたね! なんかいろいろ思わせぶりだけど、中国文学詳しくないからきっと知らない人だろうと思っていたら、よもやまさかのあの人とはvv 戒刀っていったい誰の形見だったんだろう……?? やっぱりこれは、水滸伝ちゃんと読み返さなきゃ駄目かなあ。個人的に梁山泊が朝廷に帰順した後は、展開が悲しくて読むの辛いんですが…… それはさておき。 最終的には、弟子がまだまだ未熟なのが微笑ましかったですね。 ちょっとデウス・エクス・マキナ的な感じで、お師匠さんの一人勝ちっぽいところでしたけど、これはこれで「後に銀牌侠となる人物にも、未熟な時代があった」という感じでおもしろかったかと。 陶華さんのその後もなかなか意外で。卵が先か鷄が先か、考え出すとこれまた楽しかったりvv
ああそれにしても、今回も後書きで興味深げな記述が……前の巻で触れられていた「幻陽と小八の十五年後」も気になるというのに、「あの人の子供時代(あるいは老後)」とか「スピンオフキャラクターを主人公に」とか「意外な時代、意外な場所で展開」なんて、そんなこと書かれたら待ちきれないじゃないですか〜〜〜《o(><)o》 ……って、続き、図書館に入るよ、ね……?(心配)
追記: 戒刀二刀流は、検索してみた感じ武松さんっぽい。しかしやっぱり原典を読み返した方が良いのか。いっそ北方謙三版を読んでみるというのも手だけれど、それぞれの死に様とかが、ずいぶん改変されてるらしいしなあ(悩)
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No.4373
(読書)
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2012年12月02日の読書
2012年12月02日(Sun)
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本日の初読図書: 「ヤクザな退魔(小説家になろう)」〜第壱話 まがつ鯉 三 http://ncode.syosetu.com/n2302bl/
比嘉笙矢34歳、東京都民、職業ヤクザ。 指定暴力団関東門倉会の二次団体 黒澤組にて十五年を過ごし、オヤジ、若頭、本部長につぐナンバー4の立場にいるはずなのだが……その立場はあくまで平組員。幹部に昇格することもなく、毎日のように上からはどつきまわされ、下っ端たちからは敬語を使われつつも微妙に舐められている、そんな男である。 なぜなら笙矢は、どこまでもものぐさだった。口癖は「めんどくせー」。時として息をすることさえもめんどくさがり、365日のうち250日くらいは仕事もせず、事務所のソファでただ寝ている。おまけにケンカも弱ければ、顔にも体格にも迫力などまるでなく。要するに、たとえヤクザでなかったとしても、まったくの役立たずなのだ。 そんな笙矢がどうして追い出されも愛想を尽かされもせず、面白いやつだと一目置かれているのか。そこにはひとつの理由があった。 なんと彼にはまほうがつかえたのだ。 わけのわからない呪文を使って鯉みたいな魔物を呼び、幽霊や妖怪を退治できるのである。 パンパン、と。 柏手打って、鯉を呼ぶ。 「天津神、国津神、八百萬の神達共に聞食せと畏み畏み申す!」 「『喰っとけ! メシだ!』」 謎の化け鯉を足下の影に飼い、祝詞を口ずさむ暴力団員。 今日も彼は組長が購入したいわくつきの欠陥不動産を、高く転売するため、めんどくさがりながらも余計な『もの』を『掃除』するのだった。
モロクっちこと諸口正巳さんが、自サイトで公開されている短編連作(未完)を長編に書き直されたもの。ジャンルは「脱力系ホラー」。 なんでも書籍化の話が流れてしまい、せっかくだからできあがっていた本文を「小説家になろう!」で無料公開されるとのこと。活動報告によれば「全体で14万5千字程度」「毎週土曜、1万字程度」「2ヶ月〜3ヶ月程度の連載期間」だそうです。 個人的に、諸口作品で一番好きなのがこのシリーズなんですよね。なにより欝じゃない(※今のところ)。
それにしても、柏手 → 手を打つ → 鯉が来る → 鯉は悪食 → 悪霊喰わせとけ、というその発想の流れがたまりません。 でもって、ヤクザであっても柄が悪くても、心の底から神職である笙矢が大好きです。 脇を固めるキャラクターもそれぞれ魅力的。ほとんど人間やめてる本部長とか、渋格好良い若頭、最高です。 焼き直しにあたって、さらにキャラが増えたようで、そちらの活躍も楽しみだなvv
なお、短編連作だった旧バージョンもサイトから下ろされないそうですので、興味がおありの方は、試しにそちらを読んでみるのもいいかもしれません。
■旧ヤクザな退魔 http://molock.sakura.ne.jp/koi/top.htm
こちらは書き直し版に比べるとかなり文章がライトで、一話一話も短く、さらりと読むのに向いているんじゃないかと。 ある意味ライトさが薄れたのは、良し悪しって気もしないでもなく。 あと「スコーピオン」に本部長と笙矢が登場していると聞いて、そちらもチェックしなおさねばとかとか。
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No.4365
(読書)
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2012年12月01日の読書
2012年12月01日(Sat)
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本日の初読図書: 今回の表紙はナガレさん。ちょっと意表をつかれました。いや確かにこの話展開で見栄えする女性キャラって言うと、どうしても彼女になるんでしょうけどね。4巻目はやっぱり歌姫かなあ? 本命ヒロインはむしろエリスっぽいのに。いっそ彼女は、最終巻まで持ち越すんだろうか。 ……それにしても相変わらず、本文以外の部分でもにょる出来です(苦笑) 今回は神域でコーホックに逢う〜誘拐事件の解決〜ルビダシア家で交流&手合わせ〜武闘大会出場〜帰りの道中で一仕事しつつ、気がついたら一人エゼンビア大陸に、というところで以下続くという収録内容なんですが。 以下はWEB版の内容を知ってること前提な愚痴が多いので、要反転。
内部のあおりはまだしも、帯のコピーとか表紙のあらすじは相変わらず本文と食い違いまくり。『「竜殺し」と恐れられる少年』って、その称号知ってる人間はごくわずかだし、知ってる人も知らない人も、誰一人幸助を恐れてはいないと思うんだけど……『闘い続ける』って、雑務系依頼ばかり受けてますが? あとは模擬試合と、本人は完全に遊んでる武闘大会くらいだろう?? 『金策から誘拐事件へと発展』って、そもそも誘拐事件を解決するための金策じゃん!? などなど、編集は本当に本文を読んでいるのかとモノ申したく。 あと前巻で文句をつけた地図は、再び消えてました。うん、本文と食い違ってる地図はむしろいらん。そのぶんモノクロイラスト増えてたのは素直に嬉しかったですが。 ……初めてイラスト化された男性キャラが、ゲンオウさん(あとモブ)なのは驚いたけどvv ってかゲンオウさんとシズクって赤毛だったのね。普通に黒髪黒目だと思ってました。このあたりの細かい描写が増えた&イラストで判りやすくなったのは、書籍化でのありがたいところ。 今回の書き下ろしは、旅の途中での温泉エピソードでした。スコップ1本で400mの縦穴掘っちゃう幸助はさすがですvv
ところで本文で思い切り「仮面ラ●ダー」の名前出してたけど、良いんでしょうかね。前の巻とか挿絵では、一応架空のヒーロー扱いになってたのに。挿絵にはない赤いマフラーまでたなびかせてるあたり、本当に編集側の校正が甘いなあ……
……って、文句つけまくってるようですが、おもしろいし好きなんですよ、この作品。定価でリアルタイム購入して、積まずに即読みするぐらいには。 それだけに、作者さんに責任のない部分でのあれこれが目に付きすぎて、本当にもったいなさすぎると思うのです。 そもそもこの作品は、ネット上に氾濫している『異世界落ちものチートで俺TUEEEひゃっはー!』に食傷した人が、お約束をはずしてくる毛色の変わった部分を楽しむタイプだと思うのです。なのでこれを新レーベル立ち上げにもってくるのが、まず間違いなんじゃないかとか。 さらに言うなら新レーベル立ち上げて三ヶ月も経つのに、まだ二作しかも基本オンライン小説を改訂再録したものしか発行してないって、やる気なさすぎじゃないか、出版社??
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No.4362
(読書)
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2012年11月29日の読書
2012年11月29日(Thr)
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本日の初読図書: 「異世界居酒屋「のぶ」(小説家になろう)」〜しのぶちゃんの特製ナポリタン(後篇) http://ncode.syosetu.com/n9773bj/
石造りの古都の路地裏に、一風変わった店があった。漆喰と木で作られ、屋根は帝都で流行りのスレート葺きなのか、妙に波打っていて不思議な趣がある。大きな木の一枚板に、異国の文字とやらで書かれているのは、“居酒屋ノブ”の店名。 マスターはノブ・タイショーという。黒髪をほとんど爪の先ほどの短さで刈り揃え、独特の服装をした、おそらくは辺境の民だ。 出される料理は日によって変わる。だがそれがとてつもなく旨い。 客は席についてまず最初に“トリアエズナマ”と“オトーシ”を注文する。 冷えたエールという、よそではまず見ない“トリアエズナマ”を一度口にしたならば、いままで飲んでいたものなど牛の小便にしか思えなくなる。 給仕の女性もまたただ者ではない。黒い髪に黒い瞳に肉感的な身体。しかし黒髪を後ろにまとめ、白い三角巾を被った姿は、なんともエキゾチックで、少しもいやらしさを感じさせない。働き者の彼女は、日が落ちた危険な時間帯でもためらわず“百円スーパー”とやらへ食材を仕入れに行くし、タイショーがいないときは“ナポリタン”という素晴らしいパスタも作ってくれる。 これはそんな不思議な居酒屋を巡る、小さな物語たちである。
たまたまたどり着いたら、なんか書籍化作品もお持ちの作者さんが、気分転換に書いているお話だそうです。道理でおもしろい。 ……ただ最新前後編が、何故か早々に削除されてしまっているそうで残念無念。 とりあえず、熱々サクサクの鳥の唐揚げ食べたくなりましたvv もちろんレモンを絞って(笑) まだなんで居酒屋が異世界に出店してるのかとか、そのシステムやタイショーたちの背景が明らかになっていないので、今後に期待です。
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No.4358
(読書)
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2012年11月25日の読書
2012年11月25日(Sun)
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本日の再読図書: 帰宅が遅くなった糸子とバイクで迎えに行った進也が、丸一晩帰ってこなかった。心配して探し回った加代子が見つけたのは、ラブホテルから出てくる二人の姿。驚く加代子に彼らが説明したのは、車のトランクに隠れようとする子供に注意をした途端に意識を失い、気がつくとホテルにいたという荒唐無稽な話で……「心とろかすような」 マサと加代子は毎朝、近所の公園へ散歩に行っていた。そこでは様々な常連さん達と顔を合わせ、挨拶を交わす。その朝もいつものように歩きながら顔見知りとしゃべっていると、人が倒れているのを発見した。頭部は真っ赤に染まり、手首の脈はない。慌てて警察を呼びに行った加代子達だったが、一匹残ったマサの目の前で、男はいきなり起き上がり逃げ出した。消えた『死体』に騒然となる警察に、事情を説明できないマサは歯がみするが……「てのひらの森の下で」 会社社長が殺害され、現金1200万円と共に一人の社員が消えた。社員は金に困っており、社長から叱責されていたことを同僚達が証言する。しかし何故か彼は悲壮感を見せず、『幸せそうに困っていた』という。彼は本当に社長を殺したのか。そしてどうしてそこまで大金を必要としていたのか……「白い騎士は歌う」 蓮見探偵事務所の面々が、三泊四日の社員旅行に出かけた。当然マサは留守番である。エサと散歩の世話は、近所の翻訳家が引き受けてくれた。ただ一匹事務所で寝起きするマサだったが、一日目の早朝、その玄関先で子供の足音がした。くぐり戸から外に出てみると、そこには段ボールに入った五羽の仔ウサギが放置されている。いったいこれはどういう訳なのか。マサが近所の動物達相手に聞き込みを開始すると、浮かび上がってきたのは、小学校で起きている動物虐待事件で……「マサ、留守番する」 小説家 宮部みゆきから依頼があった。このところ数日、深夜になるとつっかけの足音が近づいてくるという。それは扉のすぐ前で止まるのだが、ドアを開けてみても誰もいないらしい。さっそく張り込みを行ったマサと加代子は、すぐに原因を突き止めた。ごく他愛のない真相だったと思われたそれは、しかしとても語りにくい背景を持っていて……「マサの弁明」
元警察犬マサ視点のミステリー「パーフェクト・ブルー」の続編、短編集。 むかーし昔に読んだことがあるはずなのに、きれいさっぱり内容を忘れていました。やはり一巻から続けて読んでいなかったから、微妙に印象が薄かったんでしょうか。 全五話収録のうち、今のところ三話がドラマに使われています。 残り二話は構成的にドラマ化は難しそうなので、ドラマの今後はオリジナル展開となっていくのでしょう。もっとも、ときどき混じるフラッシュバックを見ると、進也のお兄さんの話も「パーフェクト・ブルー」が絡まない形で起きていたことになるのか、あるいはこれから別の形で何かが起こるのか。 マスターのただ者でなさとか、実は離婚歴があって子供もいるとか、この巻でも興味深げなネタが出てきていたあたり、続編が出ていないのがもったいないです。やはり犬視点というのは厳しいのか。 それにしても、携帯ではなく自動車電話とかが出てきてるあたり、時代ですねえ……
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No.4353
(読書)
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2012年11月24日の読書
2012年11月24日(Sat)
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本日の初読図書: 「アルケニー洋裁店(小説家になろう)」 http://ncode.syosetu.com/n5126bg/
市内の生花店で働いていたところに、トラックがつっこんできたのは覚えている。 そうしてお約束通り異世界へ生まれ変わった新倉志織(24歳)は、半人半蜘蛛の妖女アルケニーになっていた。 上半身は絶世の美女、下半身は巨大な蜘蛛というモンスターである。 しかもこのモンスター、生存競争が半端ない。同時に産まれた100匹近い姉妹が互いに共食いをし、最終的に強い数匹だけが生き残るというサバイバルな生態をしているのだ。 蜘蛛として生まれ変わった以上、様々なものを食べるのには抵抗ないが、それでもさすがに姉妹を殺して食べるのは気が引ける。しかたなく必死に逃げ回りながら、芋虫やら兎やら山鳥やらを掴まえて何とか生き延びた。 それでも限界はある。一ヶ月も経った頃には、姉妹達は母そっくりの妖艶な美女に成長していたが、栄養状態の悪かった志織は人間で言えば12〜3歳ぐらいにしかなっていなかった。 このままでは、いずれ遠からず姉妹達の餌食になってしまう。 なので彼女は森を出て、人間達の町で暮らすことにした。幸いにも蜘蛛の下半身や八つある目は、人間と同じように擬装することができる。裸ではさすがにまずいので、自分の糸を材料に布を織って、ワンピースなど作ってみた。 するとクラスに仕立屋が、スキルに裁縫、機織りがつきました。回避率上昇(大)、逃走率上昇(大)というのは、姉達から逃げ回っていたおかげだろう。おまけにアルケニーという種族の特性として、魔力を持つ生物を食べた場合、ステータスが向上したり、新たなスキルを手に入れたりできるらしい。これは便利だ。 いっそ町では仕立屋さんでも開こうか、と考えながら人里へ向かっていた彼女は、途中で盗賊に襲われていた商人を見つけ、成り行きから助けることとなった。いくら成長が悪いとは言え、そこはそこそこ高位モンスターのアルケニー。ザコ盗賊ぐらいはなんということもない。 そして。 お礼にと家に招待した商人が出してくれた夕食は、見事なゲテモノぞろいだった。 ホーンドウルフの肝焼きにレッサードラゴンのテールステーキ、鬼熊の手のスープにワイバーンと海竜のミックスハンバーグなどなど。 一通りディナーを終えた頃には、ステータスが恐ろしいことになっていて……
普通の仕立屋さんを目指していたはずが、食べれば食べるだけ強くなる種族属性と、負けず嫌いな性格のおかげで、気がつけばものすごいことになっていた少女のお話。コメディです。 短編ですが、終わり方が楽しくておもしろかったですvv
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No.4352
(読書)
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2012年11月23日の読書
2012年11月23日(Fri)
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本日の初読図書: 横断歩道で信号待ちしていた空井大祐(28歳)は、飲酒運転でつっこんできた大型トラックに跳ね飛ばされ、右足を骨折した。全治三ヶ月。リハビリの末に下った診断は、日常生活に支障なし。趣味の範囲ならスポーツだって楽しめる、とのこと。 幸運な事故だった。総勢十数名が巻き込まれた大規模ひき逃げ事件でありながら、死者は一人もなく、一番の重傷者であった空井でさえ、その程度ですんだのだから。 空井が、自衛隊の戦闘機パイロットでさえなかったなら。 幼い頃からパイロットになるのだと努力し続け、その数日前には夢見ていたブルーインパルスへの異動を内示されていた、そんな空井でさえなかったならば。 激しい運動はできない? 戦闘機パイロット以上の激しい運動など、探す方が難しいぐらいだろう。 そうして空井はP免、パイロット資格剥奪処置となった。 突然降りかかった運命に呆然としながら地上勤務をこなし、一年。空井は今でもまだ、呆然としていた。 そんな彼がこの春の転属で配属されたのは、航空幕僚監部広報課。 自衛隊の中で、唯一外部との渉外を行う部署だ。自衛隊の実体を世間へと周知するべく、様々な企画を立案しあるいは受け入れ、外部と内部の連携を取りながら実行してゆくのがその仕事。 新人の空井が命じられたのは、帝都テレビから長期密着取材に訪れている女性を担当することだった。稲葉リカという彼女は、事件記者あがりの新人ディレクターで、自衛隊にマイナス感情を持っているを隠そうともしなかった。スクープを狙ってガツガツしている若手マスコミ、しかも自衛隊嫌い。攻撃的な態度で突き刺さるような言葉を吐く彼女に、広報課の面々は穏やかな笑顔で受け流しながらも辟易としていた。 しかし彼女にも彼女なりの事情があった。 ずっと事件記者になることを目標としていた彼女は、しかし配属数年で伸び悩み、はずされてしまった。閑職に回されたと感じ、なんとしてもスクープを取ろうとしては、さらに空回る。そんなリカを見た上司が、いっそ粉砕してやってくれと、広報課に預けたのだった。 共に夢を断たれた二人の男女は、時に激しくぶつかり時にすれ違いながらも、やがて打ち解けあい新たな未来を模索し始める……
いったい有川さんは、どれだけ自衛隊がお好きなんだろう。 デビュー作からして自衛隊三部作。その他にもちらほらと書かれていますが、どれも読んでいて目から鱗がボロボロ落ちていきます。 今回は恋愛色は控えめで、いつもの有川的軽妙な明るく楽しい物語ではあるものの、ところどころで背筋を伸ばさせられるような、そんなお話でした。 「自衛官も人間なんです。 ―― あなたと同じように」 全体を貫くメッセージは、これにつきるでしょう。言われたリカの気持ちと、完全に同調してました。横っ面を張られたような、とは言い得て妙。 このお話は、いわゆる「なんかすごい兵器を使いこなしたり、現場で人命救助してる格好良い(別世界の)人たち」とは違う立ち位置にある自衛官、広報課隊員がメインです。それなのに、自衛隊に対する世間からの非難を一身に受け、仲間達を守りつつその存在意義を周知するという、いわば自衛隊を代表する、とても大変で地味な部署。 ひるがえって、事件記者として先輩に言われるままにスタートダッシュを切って、走って走って壁にぶつかり、苦悩する稲葉さん。 どちらも身に沁みました。
そして。 発行を一年遅らせてまで書き加えたという、ラストエピソード。「あの日の松島」。 2011年3月11日の宮城県松島基地の様子を、十ヶ月後になってようやく取材に訪れた稲葉さんのお話。 自衛隊員だって、被災者だった。 この単純な事実を、なんで私は気付いてなかったんでしょう。 警官は、消防職員は、自分達も被災者なのに救助にがんばっていて大変だなと思っていました。でも自衛隊員だけは、後日に他の地区から支援派遣された人達が100%だと、何故か無意識に思っていました。……申し訳ないです。
この話が、どこまで事実に基づいていて、どこまでが創作なのか、そこまでは判りません。 それでも……
またひとつ、広い視野への扉を開かせてくれた有川先生に感謝です。
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No.4349
(読書)
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読めるようになっていたらしい
2012年11月22日(Thr)
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yorimoba とかいう携帯サイト(有料なうえPCでもスマホでも閲覧不可能)で限定公開だった、茅田砂胡さんの「トゥルークの海賊」前日談が、いつの間にか中央公論社のHPでも公開されていました。
■大いなる闇が来た トゥルークの海賊序章 - C★NOVELSドットコム http://www.c-novels.com/kayata/
このいわば「プロローグを書籍に収録しない」と言うやり方は、一部の読者層から超絶不評を買ったらしく。ネット上でも相当に叩かれまくったのが、よっぽど効いたのでしょう(苦笑) どうやら9月から公開されていた模様<気付くの遅い 前回同じように yorimoba で公開された「お師匠さんが来た」の方は、まだ読み切りの色合いが濃かったし、本編内でその内容に触れた時は既に同じ巻に収録されていたから良かったものの、この作品は読んでいないと、該当巻にかなり意味不明なところがありましたからね……
ともあれ、続刊に収録は予定されているとのことで、その本が刊行されるまで暫定公開され続けるみたいです。 ……この期に及んでDLできないうえに読み辛い、しかも最新プラグインが必要な Frash 使ってるあたりが微妙にもにょりますが、まあ読めるだけでありがたいってことで。
追記: 中央公論社のHPからも消されたようですね。 現在、「トゥルークの海賊」3巻に収録されています。
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No.4347
(読書)
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2012年11月21日の読書
2012年11月21日(Wed)
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本日の初読図書: 2巻目は誘拐団の壊滅にて本編終了。そして三年生になった三人のそれぞれと将来を語る続編、『空色の革命』『オペラ座の怪人』『夢だっていいじゃない』の三作を収録。 柚子さんとロレンス先生をメインに据え、ぼんやりさんだけど人の良いオペラ歌手&しゃべるテディベアというファンタジックな要素を持ってきた『オペラ座の怪人』は、もう切なくて切なくて……ううう、おハルさん〜〜(涙) 川原先生の作品は、時に本当に良い人が失われていくので、非常に切ないです。 和音さんの御両親は、二十年もの時を無駄にしてしまったけれど、それでも和解できてめでたしめでたし。まだまだ若いんだから、人生楽しんで下さい。 ……しかし客観的に見ると俊介さんは、三人が1巻でボロクソにけなしていた、紫の上計画を実行したことになるんじゃ……(^ー^;;) あと史緒さんの将来については、学生時代に読んだときは正直『いいのかそれで……』と思ったものでしたけど、この年になると『あー、それもありかなあ』と感じるようになりました。なんたってお金あるしね。子供いなくても、いざとなったら介護の人は雇い放題だし。老後の心配さえなければ、なにも無理に恋愛・結婚しなくても良いんじゃないかとか。 それにしても、さほど偏差値の良くなさそうなあのお嬢様学校に通って、東大からエリート官僚コースをたどれる史緒さんってすごすぎる……しかも三年生の三学期に、これといってガリ勉もせず、徹夜で兄の口述筆記とかやってるのに(汗)
そしてうっかり、白泉社文庫の川原泉ラインナップを確認し、持っていなかった二冊が1円出品なのを見て、クリックしてしまう自分がここに……
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No.4346
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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