2013年12月27日の読書
2013年12月27日(Fri)
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本日の初読図書: あらすじに関しては、WEB版を読んだ時に書いたので割愛。 毎日お昼に更新されているので、読みに行くのが日課になっているお話です。なので値下がりするのを待てずにポチッとな。 表紙の礼子ちゃんが可愛かったのも、購入する大きなきっかけとなりましたね。 オンライン小説が書籍化される場合は、イラストがイメージに合うかどうかが、購入意欲を大きく左右するもので…… 仁が社会人にしてはかなり若くて細身だったのがちょっとアレでしたけど、確か本文には「高校生に見える童顔」とあった気がするので、これは私のイメージが間違っていたのではないかと。その他のキャラは実に良かったです。老若男女、マーサおばさんや行商人のローランド親子までまんべんなくイラスト化されていたのも、好感度大<WEBから商業化された作品は、イラストが女性とかロリ系に偏る傾向があるような あと作者様が詳細な地理設定をされているせいか、この巻に載っているカイナ村周辺図もすごく解りやすくていい感じでした。ただの平面図じゃなくって、実に力の入った風景画っぽい斜めからの俯瞰図なんですよ! おかげで話のイメージがすごく広がりました。
難点は、WEB版の時にも触れましたが、専門用語とか物の構造の説明が少ないことでしょうか。 ボールベアリングとかラグラン袖とかモカシン風の靴とか、形状が判らなくてスマホで調べながら読んでましたよ(−ー;) 物作りものにしては、作りの詳しい部分に触れず「●●を作った」「××の構造を取り入れた」であっさりと終わってしまって、試行錯誤があんまり語られないんですよね……
ストーリー展開には、WEB版から大きな改変はなかったと思います。 ……正直、最初の頃の文章はかなり記憶の彼方なんですが(苦笑) ただ文字数は増えているんじゃないかと思います。話の密度が増している……よう、な?(かなり曖昧) 収録されているのは、「01-26 それから」まで。ちょうど第一部が終了して、仁がカイナ村を一時出奔するまでです。 ……このペースで行くと、現在発表されているところまででさえ、11冊に及ぶ計算なのか……? しかも現在進行形で、一日一話ずつ増えていくハイペース。
この話自体は割とのんびりしていて、ひたすら主役がモノ作りしながら日常を過ごすだけで、あんまり目指すものはありません。なので終わりもまるで見えておらず、この先もどこまで続くのかは謎だったり。 できればしっかり最後までグダグダにならずに書ききって、出版も最後までちゃんとして欲しい所です。
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No.5409
(読書)
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2013年12月16日の読書
2013年12月16日(Mon)
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本日の初読図書: 以前PHP文庫で出版された際に収録されていた「お勢殺し」、「白魚の目」、「鰹千両」、「太郎柿次郎柿」、「凍る月」、「遺恨の桜」に、愛蔵版になった際に加えられた「糸吉の恋」、更にプラスして「寿の毒」と「鬼は外」の二編を足した、9編から成り立つ〈完全版〉です。 PHP文庫版は持っているのですが、個人的な宮部作品ベスト3に入る作品ですし、稲荷寿司屋の親父の背景とか書き加えられてるのかしら(どきどき)とか思ったら、ついつい買っちゃいましたよ……それもこれも、図書館に入ってないのが悪いんやーーー・゜・(ノД`)・゜・
ともあれ、やっぱりおもしろかったです。 前に読んだ6作もかれこれ数年ぶりの読み返しでしたし、新たに挿し絵も入っていて、これがまたなかなか可愛らしくvv あと深川近辺の地図が入っていたのもありがたかったですね。 ……最初、西が上になっていることに気が付かなくって、あとから脳内修正するのに少々苦労しましたが(笑)
期待していた稲荷寿司屋の親父の背景については、ちょっとだけ重要なポイント(何故そこで屋台を開いているのか)がちらりと明かされた程度でした。しかしそのかわりと言ってはなんですが、意外とお茶目さんな一面も明らかになったり……とか? 改めて読み返してみると、当初に発表された6編では、親父さん、そこまで直接的な助言はしていないんですね。むしろ茂七親分が勝手に閃きのとっかかりにしたり、苛ついた時の精神安定剤にしている感じ。しかし今回初めて読んだ「糸吉の恋」あたりでは、話を聞いた段階で既に真相を見通している印象でしたね。 あと霊感坊主日道は日道で、推理物としてはかなり反則なキャラクター。
そもそもこの「初ものがたり」、ミステリーものという印象は薄い気がするのですよ。トリックや推理の筋道はそこまで凝っておらず、比較的早いうちにだいたいの検討はついてしまいます。ですがこのお話の醍醐味は事件の謎を明らかにすることではなく、明らかになった真相をどのように片付けるのか。できるだけ多くの人々が、いかに幸せな結末へとたどり着けるようにするのかを模索する、そこのところにあると思うのですよ。「白魚の目」や「遺恨の桜」あたりが、そこらへんを強く押し出していると思います。 強面だけど人情派の岡っ引き、粋ですなあ(しみじみ)
後書きによれば、どうやらこのシリーズ、今後は他シリーズとクロスオーバーさせながら続きを書いていかれるとのこと。これは楽しみかつ嬉しいところですが、他シリーズも読んでおかないと話が判らなくなるのかもと、ちょっと困ってもいたり。 ええと、同じ世界観の話というと、「本所深川ふしぎ草紙」の他に、いったいどれを読めば良いんだっけ……?
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No.5376
(読書)
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2013年12月10日の読書
2013年12月10日(Tue)
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本日の初読図書: 地元新聞で週一連載されている、4コマ漫画で故事成語を解りやすく解説してくれるシリーズ。 けっこう面白くて毎週楽しみなので、いっそまとめられたものが出ていないかと調べてみたら、なんかあちこちの学校で副教材として使われているぐらい、一部で話題の本だったようです。 しかもB5判・フルカラー・56ページで税込210円と、お値段もリーズナブルvv
■ためになるマンガ『漫画 故事成語』カラー版発売中! http://www.sakaiminato.net/site2/page/kojiseigo/main/
最初に見付けた取り扱いサイトでは、送料が600円とかついていたのですが、↑こちらなら送料も210円ですみます(まあ、さらに振込料か代引手数料がかかりますが)。 それどころか、『鳥取県・島根県全域と広島県の主なポプラ店舗でもお求め頂けます』ですって! さっそく今日、おでかけついでにポプラに立ち寄ってみました。最初は見付けられず、店員さんに訊いても判らなかったのですけれど、せっかく来たのだから……としばらく店内をうろついていたら、「もしかしてこれですか?」と持ってきてもらえました! 探していたコミックコーナーとはちょっと違う場所に、数十冊平積みになってたよ。いやっほいvv
思っていたより大きくて、紙質はかなり薄かったです。56ページで厚さは3ミリもあるかないか。見開きに4つ、合計106個の故事成語が載っていて、前述通り全ページフルカラー。駅とかに無料で置いてある、観光用パンフレットかなんかみたいな質感です。 実際に読んでみると、たまに妙に画質が低い回が混じっていました。JPGの解像度間違えて保存しました、みたいな感じ? しかし基本的に線が太くてシンプルな絵柄なので、そこまでは気にならないぐらいです。なんたって210円ですし(笑)<こだわる
新聞で間を空けて読んでいた時と違い、まとめて一気に読むと、作者さんのこだわりがいろいろ感じられますね。 私は故事成語の成り立ちにはあんまり詳しくないんですけど、たとえば三国志関係の「三顧の礼」「水魚の交わり」「白眉」「髀肉の嘆」などは、あいうえお順の収録なのでそれぞれ離れて掲載されているのにも関わらず、ちゃんとキャラクターデザインが統一されているのが判ります。しかも劉備はちゃんと福耳に描かれているし、「他の臣下たち」と矢印で注釈されている脇キャラは、しっかり関羽と張飛になっています。 他にも「四面楚歌」の最後のコマで、項羽が女性を抱きしめ「なんじをいかんせん……」と呟いているシーンなども、この4コマだけを見ると「??」でしょうが、「虞美人草」の「垓下歌」という漢詩を知っていると、おお! とにんまりできます。
「守株」という回に、童謡「待ちぼうけ」の元になったのはこれか! と唸らせられたり、「蛍の光」は「蛍雪の功」っていう故事成語からなのか……とか。 あるいは「奇貨居くべし」や「鶏口牛後」、「夜郎自大」など、聞いたことはあっても意味をちゃんと知らなかった言葉が、マンガで解りやすくするりと入ってきます。 いやあ、これは本気でタメになる! 「春眠暁を覚えず」や「少年老い易く学成り難し」など、漢詩をまるごと翻訳した回などもあって、その訳もなかなかシンプルかつ趣があって良い感じ。 わざわざ取り寄せまでするのはハードルが高いかもしれませんが、鳥取・島根・広島にお住まいの方は、ポプラに寄った時など、ちょっとチェックしてみてはいかがでしょう?
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No.5356
(読書)
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2013年12月05日の読書
2013年12月05日(Thr)
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本日の初読図書: 茅田先生の20年間をギュッと詰め込んだ、集大成の1冊です。 ↑この画像ではわからないでしょうが、そのページ数は実に702P。厚さ 4.2cm 。普通に背表紙で立ちます。見返し部分に曰く、『通称「弁当箱」』(笑) 中身はデルフィニア戦記&クラッシュ・ブレイズのクロスオーバーもの368Pをメインに、桐原家の後日談的番外編が37P、祝・もものき事務所の前日譚的番外編19P、そしてそれ出版社違うだろうな「レディ・ガンナー」の番外編100Pまで収録されています。もちろん、全て新作書き下ろし。 この小説の書下ろし量に加え、ウォルとリィの再会が読めると知った瞬間、いくらなんでも高すぎる、値が下がるまで待とうと思っていた考えはスッポ抜けて、注文ボタンをポチッとしておりました(苦笑)
……いやだって! 脳内妄想していた「ウォルが共和宇宙へやってきて、『金色狼の旦那!?』と海賊王に驚かれつつ『さすが只者じゃねえ』と感心される」という展開が、作者本人の筆で読めるんですよ!?!?
詳しい内容はどう話してもネタバレになるので詳しくは書けませんが、読んでいて何度ももらい泣きしてしまいました。そして同時に腹がよじれて肺の底から咳き込むほど笑いもしました。 ああクソ、私はやっぱり、デルフィニアが、茅田先生に初めて出会ったこのシリーズが一番大好きだ−ーーーっっっ!! 朴念仁の熊のくせに、ここぞという所で格好いいウォルが最高だ!! 国王と妃将軍が並び立つところを再び見ることができて、本当に感激でした。 この厚さを一日で読みきってしまったあたりに、その思いが現れているでしょう。ページをめくる手が止まらなかったんだよ(涙)
ああ、バルロの「全員!! 回れェ右!!」とウォルの(俺は死んだ……)には本気で窒息するかと思った……vv
桐原家ともものきに関しては、まあこんな感じだろうな、というところでした。 しかしレディ・ガンナーの方はまた力が入っていましたね。完全にコメディでしたが、ドタバタ感とか可愛い老新婚夫婦がおもしろかったです。 ……そして初登場時にはあんなに威厳があって素敵だったのに、なぜか巻を重ねるごとに残念さが増していくギデオン伯爵こと獅子の族長ェ…… あと本編には絶対に登場しないだろう、ダムーの両親が見られたのも嬉しかったです。やー、あれは本編には出せませんね。破天荒すぎてパワーバランスが崩れちゃう(苦笑)
あとはそれぞれの絵描きさんによる、デルフィニア・トゥルークの海賊・桐原家・もものき事務所、それぞれの描き下ろしコミックもなかなかでした。特に沖さんによるデルフィニア〜のは、メインキャラのかなりが登場する豪華版。時系列もシェラがヴァンツァーに髪飾りを押し付けられたちょっと後ぐらいと、なかなか楽しめるあたりです。 間のインタビューは、CDをついていない方のバージョンを買ったので、正直あんまりピンときませんでしたが……でもそれ以外で充分お腹いっぱいです。堪能した!
そして文庫版デルフィニアは18巻に大幅書き足しがあると知って、ショックを受ける自分がいたり。 うーわー……今さら買い直しなんてできないけど、該当箇所だけ本屋で立ち読みしてこようかなあ……一体どのあたりなんだろう……??
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No.5332
(読書)
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2013年12月04日の読書
2013年12月04日(Wed)
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本日の初読図書: 二巻目読了! これにてこのお話は完結です。 前巻ラストで雪の谷へ閉じこめられた狄雲と血刀僧と水笙。彼らを追ってきた落花流水、四人の豪傑と血刀僧の死闘が繰り広げられる訳ですが……そんな中でもなんとかして犠牲者を減らそうとする善良な狄雲は、相変わらず報われていません(−ー;) 最終的に生き残った豪傑の一人 花鐵幹は、どんどん下劣な本性を現してゆき、食料がない冬山で仲間の死骸をむさぼり喰らい、狄雲と水笙を貶めまくります。そんな中でも誠実さを保つ狄雲に水笙は少しずつ心を開いていくものの、それさえも花鐵幹に利用され、雪山から助けられた水笙は「淫僧に身も心も汚され『情夫可愛さに親を殺させた』恥知らず」として蔑まれる展開に。 ……ふふふ、これでちったぁ狄雲の苦しみが判っただろうと思いつつも、まあ彼女は冬の間に狄雲の足を折ったことをちゃんと気にしたり、周りに罵られながらも狄雲は良い人だと庇ってくれたので、まあ良しとしましょう。 ちなみに彼女の元婚約者である汪嘯風は、颯爽と登場した二枚目剣客のイメージはどこへやら。底の浅さを露呈したあげくに、最後はなにかのついでのように破滅していたのがざまあみろでした(笑) ……ってか作者さん、本当にこの人と花鐵幹についてはページ数が足らなくなって、慌てて末路をつっこんだんじゃなかろうか(苦笑)
雪山から解放された後の狄雲は、半年の強制山籠もりの間に研鑽を積み正邪双方の頂点とも言える武芸を身につけていました。 ……まさかこれで、血塗られた復讐の道を邁進するのか?? とハラハラしていたら、そこはやっぱり狄雲。その頭の中では先立った親友 丁兄を、その恋人と合葬してやることが最優先です。そして次点が師父の無事を確認すること。復讐とか宝の在処を探すこととかは、ほとんど考えていないのが、彼の良いところですね(しみじみ)
それでも多少は空気を読むことを覚え、TPOをわきまえた行動をとれるようになった彼は、少しずつ情報を集めて事の真相に近づいていきます。自分はなぜ陥れられなければなかったのか。仇達が追い求める「連城剣譜」はどこにあるのか。 狄雲の善意の行動と偶然が複雑に重なり入り交じって、仇達はじょじょに破滅への道を邁進していきます。 そう、あくまで狄雲が自らその手を下すのではなく、彼が敷いたレールの上をてめえの意志で突っ走った悪人達が、勝手に殺し合い自滅していくのです。真の復讐モノとはこうでなくては!
最終的には、ただ友の遺言を守ることを最優先にしたその誠実さが、失われた筈の「連城剣譜」を狄雲にもたらし、そして「宝などいらない。ぜんぶ師父にあげます」と言った無欲さが、彼の命を救いました。 どこかの感想サイトで「主人公が最後までモンテ・クリスト伯にならずにダンテスのまま」と書かれていましたが、この話ではまさにその通り、最後まで木訥な善良さを失わなかったことが勝利の鍵でした。 ラストの再会については、いろいろと思う所もないではないですが……まあ『彼女』も、紙面で語られない部分でいろいろ辛酸を舐めたのだろうし、良いとしましょうか<えらそう(苦笑)
ちなみに師妹の方には、どうにも最後まで共感ができませんでした。 狄雲を悪人だと思いながらもそれを逃がしたり、遠くからその幸せを祈りながら、実は夫が無実の彼を陥れた悪人なのだと知ったあともその夫を見捨てられない。見事にどっちつかず。 しまいには三重(狄雲と実父と自分)の仇の実娘を、「自分の娘のように面倒を見て」って押しつけるって……どこまで狄雲を利用するのかと。 いやうん、実際にこういう立場になったら、優柔不断な気持ちになるのは判るんですけどね。ただ物語のヒロインを張るには弱いと感じられます。まあだからこそ、彼女はああいう形になったのでしょうが。
ともあれまあ、1巻で沈んだ気持ちは、ちゃんと払拭されました。うん、これなら面白いです。 特に完全に失われたと思われた「連城剣譜」が、まさかあんな形で手に入るとは。1巻でさりげなく張られていた伏線の妙に、あの場面では思わず唸ってしまいました。 このお話の中で一番純粋だったのは、狄雲よりも霜華お嬢さまだったのかもなあ……
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No.5330
(読書)
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2013年12月03日の読書
2013年12月03日(Tue)
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本日の初読図書: えー、ちょっとあらすじをまとめにくいので、ざっくり一言で表現するならば、「中国武侠版モンテ・クリスト伯」です。 時代設定がいつなのか、どうもよく判らんのですが……三国時代よりは後、なのかな? そんな昔の中国を舞台に、善良だけが取り柄の木訥でちょっと愚鈍な青年が、妬まれ、陥れられ、濡れ衣を着せられ、恋人を奪われたあげくに投獄される。そして牢屋内で出会った相手と友誼を結び、秘術を伝授されて二人で脱獄するも、師兄と慕ったその相手にはあえなく先立たれ……で、たぶん2巻目から復讐に入るんだと思います。
『モンテ・クリスト伯』大好きな私としては、途中までは楽しく読んでいたのですよ。 しかしなんというか、こう……あまりにも狄雲(主役)が気の毒すぎてもう(−ー;) エドモンは、まだ潔白を信じてくれている人達が何人もいた。恋人(メルセデス)は獄死したという知らせを聞くまで、何年も待っていてくれた。土牢に繋がれて塗炭の苦しみを味わいもしたけれど、肉体的な拷問はそんなに受けなかった。そして脱獄した後は、有能な水夫や富豪として、周囲からそれなりの尊敬を受け、高みへと駆け上がることができました。 しかるにこの狄雲は……( T _ T ) 恋人にも等しかった幼馴染み(戚芳)からは軽蔑の眼差しを向けられ、敬愛する師匠からは見捨てられ、よってたかって殴られ蹴られはもう普通。捕縛時に右手の指は全て切断された上に、肩胛骨に穴開けて鎖を通して繋がれてるんですよ(怖) なんでもそれをされると、どんな武術を修めた豪傑でも、身体に力が入らなくなり、無力と化してしまうのだそうですが……生きたまま肩胛骨に穴って(ガクブル)
そして脱獄してからも、相変わらずあまり頭が良くなく口下手なこともあって、誤解につぐ誤解を受けまくり。さらなる濡れ衣を着せられて『正義』を自称する『侠客』達に追い回されます。そんな苦しい中でも、なんとか助けてやろうとしている少女(水笙)にさえ、肉体目当てにいやらしいことをする色情狂だと勘違いされて侮蔑され続け。
そんな彼を唯一助けてくれたのが、淫僧・邪僧と呼ばれるチベットの血刀僧なのですが……この人が本当に悪い人なんですよ。通りすがりの花嫁行列を、嫁が美人だったら略奪しようと遮ったあげく、あんまり可愛くなかったからとその鼻を切り落とし、花婿はついでに殺しちゃうような正真正銘の悪人です。狄雲を殺そうとした弟子が返り討ちにあったとはつゆ知らぬそのお師匠が、着るものがないから仕方なくその弟子の法衣を剥いで着ていた狄雲を孫弟子だと勘違い。役人に追われていたところを「見所があるな」と助けてくれるのですよ。 しかしそのお師匠さえも、この巻の最後では狄雲を殺そうと考えているあたり。雪崩で雪山に閉じこめられてしまったので、食べる物がなくなったら殺して食べてしまおう。せめて順番を最後にしてやれば申し訳も立つだろう、って……狄雲、不憫という言葉では言い尽くせないぐらい不憫すぎる…… ・゜・(ノД`)・゜・
狄雲がへこたれない……いや逆にへこたれきって達観してしまったというか、「今さら一つや二つ濡れ衣が増えたところでどうだというんだ」というスタンスでいるから、まだなんとか読めていますが。 モンテ〜と違って、獄中で頭脳を鍛えられた訳でもなく、伝授された武術の奥義や宝の在処を示す暗号も不完全なままで、いったいこの先、彼が血刀僧として堕落する以外の道があるのかどうか、不安でしょうがないですよ。 これはもう、2巻(完結編)でよほどのカタルシスがないと、読んでいて下がったテンションが持ち直せそうにないです。
ああでも、さっさと狄雲見捨てた戚芳と寄りを戻すのだけは止めて欲しいなあ。なんか一応助けてはくれたっぽいけど、それでも自分の幸せは捨てないっぽいし。メルセデスだって、わきまえてみずから身を引いたからこそ良かった訳で。 どうせなら水笙との誤解が解けてくれた方が、まだしもです。 ……たとえそれが服装見て血刀僧だと思っただけで、問答無用で自分の使用人の命の恩人である狄雲を、鞭で殴り倒したあげくに足の骨折るような自称『任侠』だとしてもね!<ほんとにろくな目にあっていないよ狄雲……
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No.5328
(読書)
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2013年12月01日の読書
2013年12月01日(Sun)
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本日の初読図書: 「肖像の秘密(近代デジタルライブラリー)」高等探偵協會 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904893
今回のホームズ翻案は、訳者が「高等探偵協會」となっていて個人名が判りません。著作権はちゃんと切れているらしいのですが。 で、原作は「六つのナポレオン」をベースにしているものの、最初の方には「緋色の研究」の二人の出会いや、「四つの署名」にある懐中時計からワトソン役の兄のことを推理するシーンなどが織り交ぜられています。
ホームズさんは「京都大學出の理學士」で「探偵博士」の緒方緒太郎(をがた をたろう)さん。 ワトソンさんは「日獨戦争帰りの元軍醫」で和田義雄(わだ よしを)さん。 今回はちゃんとそれなりに対等な立場にあり、年齢差もさほどない相棒関係……なのかな?<ちょっと自信がない でもって例の住まいについては、「牛込の神樂坂通りを一寸左に外れた處」にあり、「老つた寡婦さんの持物で一人の孫娘と一人の下婢と都合三人暮し」の二階の「六疊二間」。 ……舞台が日本なのは翻案の醍醐味だからむしろ望む所なんですけど、六畳二間に二人暮らしって、むしろ狭くね? そして大家さんは年寄りなの? ってか孫娘ってナニ?? と、なんだか突っ込みどころがありすぎる(苦笑)
物語はちゃんと和田さんの視点。大正三年の青島(ちんたお)の戦いに徴兵されたことを語るところから始まっています。大正三年ということは、西暦1914年。1880年代あたりがメインの原作よりは、三十年ぐらい遅い計算でしょうか。 「青島攻圍軍に參加」し「即墨(そくぼく)附近の小競合(こぜりあい)で敵の流彈を肩に受け」「それから引起した熱を激しく病んだ」ため、東京へ送還されて駿河台の宿から病院通いをしております。 傷が治ったあとも、故郷には親戚係累もなく「手當金」とやらがだいぶ手元に残っているので、しばらく東京でぶらぶらしようという心づもりだそうで。なんだか原作よりも少々優雅というか、体調や経済的困窮の度合いが少ない印象です。下宿を探すのも、宿屋に毎日ゴロゴロしているのがたまらないから、定まった住処を決めたいという理由からになってますし。 そして緒方さんが同居人を募集している理由もやはり、「二間あつて一人ではやゝ廣過ぎる」とのこと。これ確か、九皐散史さんの「壁上の血書」でもそんな感じでしたよね。なんで「家賃が高いから」という理由じゃいかんのだろう?? そしてスタンフォード改め須藤さんによる緒方さんの人物評はというと、「決して毒の無い、一緒に生活して居ても、君に不愉快を與へるやうな人物ぢや無いと云ふ事は、僕が堅く保證する。」と、「壁上の血書」における「キ印」扱いとは雲泥の差。 っていうか、須藤さんが無責任に適当な事を言っているのか、緒方さんの外面が良かったのか、これは一体どっちなんだろう(笑) ……そもそも、なんで保険会社の社員と理学士が友人だったのかも謎が残る…… まあ少なくともこの緒方さんは、死体を杖で叩いたりはしていないようですが。 また和田さんが和田さんで、「僕も無聊に苦しんで居るのだから、なるだけ變つた人物と同宿することが望ましい。」とか言っちゃって……戦争帰りで傷ついたあげく、静かに療養したがっていたワトソンさんはどこへ消えた(苦笑) しかも実際に緒方さんと顔を合わせた時には、「私はひどく健康を害してゐますから、噪々しいのが何よりも禁物です」とかゆってるし、緒方さんの推理でも「此人の衰弱は一朝の治療では回復が覺束ない」とか見立てられているあたり、ここでいきなり原作通りなのが、なあんか最初の方の文章との違和感を…… さらに和田さんは初対面でいきなり、緒方さんの血液検出薬の実験を褒めちぎっています。「すごいけど、それがなんの役に立つの?」的スタンスだった原作のそっけなさとは、これまた大違い。 あと引っ越し関係といえば、緒方さんが引越し荷物を「荷車に積んで」運び込んだことが、なんだか異様に受けました(笑) へ、変装とかではなしに、素で荷車を引くホームズさん……っっ(悶絶)
ちなみに二人の服装は、洋装なようです。「背廣服」という言葉が出てきているので。 ……背広着て荷車引いて、六畳二間に住んでる二人か……胸が熱くなるなvv
でもって。 本題である事件に入るのは、21章あるうちのようやく8章目に入ってからです。 そう、「六つのナポレオン」です。 ……これが、近代デジタルライブラリーで表紙をご覧になっていただけたらすぐに判ると思うのですが。なんと壊されるのが『乃木大將』の半身像になってるんですよ(爆笑) ナポレオンが乃木大将!! 当時の世相をたくみに取り込んだ、その翻訳センスに脱帽ですvv
……しかし複数の物語(「緋色〜」と「四つの〜」と「〜ナポレオン」)を一つにまとめた結果、この「乃木大將(六つのナポレオン)」事件が、初めて二人がコンビを組んで捜査にあたるエピソードになってしまっているのですよね。それなのにも関わらず、レストレード警部改め水守探偵が、やけに気安くべらべらと和田さんにまで捜査情報を喋りつつ、意見まで求めているのがなんだか「良いのかそれで」という感覚を覚えたりとか。 そもそも原作初期のレストレードは、かなり態度が悪かったのに…… そんな和田さんはまだ緒方さんの仕事がよく判っていないので、ひたすら後をついてまわっては、感心しているだけなのも残念といえば残念。まあ、最初の事件なのだから、仕方のないことではあるんですがね。 でもせめてラストに「君の活躍を出版しよう!」という、あのワトソンさんの存在意義とも言える、アクティブな意思表示はして欲しかったなあ……
あと物語の最後に、今後出版予定の続編の予告が長々と綴られています。しかしこれらは国会図書館にもなかったり、あるいは原作がホームズさんではないといった点で、私にはほとんど読めそうにありません。けっこう面白そうではあるんですけどね。特に「緋色の研究」が原作らしい『不思議の膏薬』が、近代デジタルライブラリーに収蔵されていないのがとっても残念です。
そして恒例、改変された設定の数々は、まず人物のたぐいが
かつてのワトソンの助手でバーツの病院勤務のスタンフォード → 幼馴染で今は東京で保險會社に務めてゐる須藤(すどう) レストレード警部 → 身丈の低い頭髮の赤い黒瞳がちな男で、東京でも有名な警視廳の名探偵 水守練吉(みづもり れんきち) 殺されたピエトロ・ベヌッチ → 三浦仙吉(みうら せんきち) ケンジントンロードで絵や彫刻を売っているモース・ハドソン → 上野廣小路に繪草紙や石膏像などを賣つてゐる松田淺吉(まつだ あさきち) 同じくケンジントンロードとロウワ・ブリクストン・ロードに住まいと診療所を持つ開業医のバーニコット博士 → 上野山下に本院を、菊屋橋の傍に分院を持つ外科醫の上原操(うえはら みさを) セントラルプレス通信社のホレス・ハーカー氏 → 實業新聞社員の本多半兵衞(ほんだ はんべゑ)氏 ベッポー → 平藏
といった感じ。 完全に日本向けにアレンジされていますね。 地名や店の名前なども、
ハイ・ストリート駅から二軒隣のハーディング兄弟商会 → 日本橋通三丁目の波多野兄弟(はたのけいてい)商會 ステップニーのチャーチ街のゲルダー商会 → 浅草馬道二丁目の三角(みかど)商會 カムデン・ハウス通り → 宗十郎町 イタリア人 → 大阪者 ダクレホテルのコロンナ王子の寝室から盗まれた、ボルジア家の有名な黒真珠 → 帝國ホテルに滞在していたアウレル氏夫人の寝室から紛失した、米國の富豪アウレル家代々の重寶、稀代の黒眞珠
ってな具合です。 他にも「偏執狂( monomania )」が「一事狂(モノメニア)」と表現されていたり、「(護身用に持った)火掻き棒」が「木刀」に、「(ナポレオンの胸像を置いていた)マントルピース」が「(乃木大將の像を飾った)床の間」にと、いかにも日本家屋が舞台っぽいです。 あと「ドンカスターでスタンドが倒れた」という事件が「明治大學の二階が落ちた」となっているのは、実際にそういう出来事が当時あったんでしょうか??
ともあれ、複数の原作をひとつにまとめ、さらに戦争や乃木大將など当時の世相を違和感なく絡み合わせたその手腕は素晴らしいです。これぞ翻案の妙vv この作品は二人の関係も割と原作に近くて、今後の発展が楽しみな感じでした。 このシリーズはまだ『外交の危機』と『斑の蛇』が、デジタルライブラリーに収蔵されているんですよね。そちらもそのうち読もっと♪
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No.5327
(読書)
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2013年11月29日の読書
2013年11月29日(Fri)
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本日の初読図書: 同タイトルの小説のマンガ版、第二弾。 この巻で季節が一巡し、原作の1巻目が終わりました。後日談「初夏のひよこ」までしっかり収録されています。 うん、なんというか、原作をとても大事にしてくれているのが感じられました。 一巻目に較べると、だいぶ坂木のエゴとか二人の関係のいびつさが、解りやすく描写されていたように思いますし。 それでも坂木の涙もろさの訳とかは、結局語られないままだったなあ……あとやっぱりマンガで見ると、男二人がベタベタしていてもあんまり違和感を感じないのは、すっかりBL文化に毒されてしまったからか(苦笑)
絵という表現手法になって良かったと思うことは、たとえば亀の剥製のインパクトとか。あれは文章ではあそこまで来なかったですねえ。それから木村さんが、意外と初期からちょこちょこ顔出ししているのも、絵で見ると一目瞭然です。
コミカライズはここまでで終了とのことですが、それなりに綺麗にまとまっていて良かったと思います。 ああ、また読み返したい原作が増えた……ううう、時間が〜〜
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No.5323
(読書)
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2013年11月27日の読書
2013年11月27日(Wed)
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本日の初読図書: 男子高校生の与一は、近所で農業を営む男性 白躯(しらく)さんが大好きだ。何故か子供の頃から繰り返し見る悪夢 ―― 自分が死んでは、それを見た白躯さんが泣いている ―― も、その想いが高じたからだと思っている。昔からずっと見た目が変わらない、年齢不詳の白躯さん。彼が作る野菜やハーブは絶品で、ご近所でも評判である。そんな緑の指を持つ白躯さんを、与一は魔法使いのようだと思っていた。そしてある日のこと、与一は犬を庇って白躯の目の前で車に跳ねられてしまうのだが……「魔法使いの涙」ほか二編 御山に守られたその村は、昔から〈呪〉という化け物達に狙われてきた。その〈呪〉を、〈守〉という霊獣と共に倒す役目を代々担っている、二つの血筋。左川家と右田家。現代でもそのお役目は受け継がれ、右田家の少年 依人は〈守〉の緋丸とコンビを組んでいた。しかし十年前に強大な〈呪〉と戦って、両親と先代の〈守〉瑠璃丸が死んだため、緋丸はまだたったの十歳。ほんの子供で、ほとんど役に立たないのが依人にはもどかしい。左川家の三郎は200歳を越える立派な〈守〉翠丸と共に〈呪〉を退治しているのだから、いっそう自分達の未熟さを思い知らされる。せめて兄の方がお役目を継いでいれば、もっと活躍できたであろうに。しかしその兄は十年前の戦いで大怪我を負って、うまく歩けなくなっていた。それでも優しく自分を励まし、力になってくれる兄に対し、依人はじょじょに道ならぬ思いを抱き始めてしまう。その感情は、緋丸の成長に影響を与えていって……「恋とお化けの育て方」ほか一編 総務部に配属された二人の新人、安達龍平と安達友矢。同じ名字を持つ彼らは別に血縁関係などなかったが、どちらかが社長の息子なのだという噂が流れていた。もっとも二人ともその話は否定している。そんな彼らの直属上司となった真宮は、初対面の時からひどく機嫌の悪そうな顔をしていた。直情径行なところのある龍平などは、最初こそ激しく反発したが、次第にその不景気な地顔の背景にある、人柄の良さに心惹かれてゆく。そんなある日のこと、龍平は真宮が別の社員と不穏な会話をしているのを耳にする。真宮が妻子を持つ同性の友人と不倫関係にあって、しかも顧客データの持ち出しという不正に関わっているらしい。そう思い込んだ龍平は、煮詰まったあげくに真宮へと直談判に及び……「 SECRET NEWS 」
とりあえず作家買いしている直野さんですが、個人的には現代物よりFT系の方が好みです。 今回はFT系のお話が二作×2話づつ。現代リーマンものが一作。ラストに表題作の番外ショートが一編収録されていました。 田舎にいる昔から年を取らない近所の人が、実は人外で……という展開は、初期の雪男の話を思い出して、なんだか懐かしかったですね。 「〜お化け〜」の方が、お話としては好みだったかな。近親ネタは正直苦手なのですが、まさかそこでこう来るとはvv これならOK、大好物です(ぐっ) ……ただ今回はどうも、三作とも主役がアホの子度合いが高かったのがちょっと……もう少し人の話を聞こうよ。同じ事を繰り返すな、と思ってしまうのは、自分を顧みてしまうからなのか(しょぼん)
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No.5315
(読書)
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2013年11月26日の読書
2013年11月26日(Tue)
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本日の初読図書: 今回の表紙は龍さんですvv くっそう、格好良い〜〜《o(><)o》 こうも良い男の表紙が続くと、つくづく古本屋の巻を買いそこねたのが悔やまれます<CD付特装版(夕士と長谷のツーショット)の方を買っちゃった この巻は、中身にも龍さん密度高かったですね。気が付くといる(笑) 後半、夕士のレベルアップ修行の際は、意識してアパートに留まって見守っていてくれたようですが。 それ以前でも、三浦を救いきれなかったと悩む夕士を無言で見守る姿とか、もうvv ミニキャラ姿も可愛いしvv あと風呂(笑) 文章で読んでた時はあんまり意識してなかったんですが、修行で落ちた夕士を交代で風呂に入れる画家と龍さんの姿に、腐女子魂がキュンキュンとしてしまいますよ。こうして見ると、香月さんはこの頃からけっこう腐った内容をちりばめていたんだなあ。
あと、怪我した夕士に往復ビンタかます長谷も素敵でした。 いいなあ、こういう遠慮も忌憚もなく全力でつき合える友人って。
今回は三浦先生編が終了し、夏休みに入って夕士の修行レベルアップ編が途中まで。 「イドの怪物が抜けたからって、三浦が良い人になる訳じゃない。もとの三浦に戻っただけだ」という展開が、原作を読んでいた時も浸みましたね……今まで読んできた児童文学では、たいていああいう所ではめでたしめでたしで終わってたので、あの流れは新鮮でした。 修行編は、「え、ここで終わるの!?」ってところで以下次巻でした(しょぼん) まあ楽しみが伸びたと思えば良いんですけどね! 次回は夕士パワーアップ編と、あれかな、自殺しかけてる女の子を助ける編?? 千晶先生は新学期からのご登場ですよね……ううう、早く御尊顔を拝したいのに〜〜《o(><)o》
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No.5310
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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