よしなしことを、日々徒然に……
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 2016年03月10日の読書
2016年03月10日(Thr) 
「無欲の聖女は金にときめく(小説家になろう)」〜《閑話》 レオ、真贋を見極める(4)
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かつて「フローラの禍」と呼ばれる大スキャンダルがあった。
事の始まりは、今から十三年前。ヴァイツ帝国が国の威信をかけて優秀な人材を育成している、ヴァイツゼッカー帝国学院に、庶民出身の少女フローラが入学してきたことだった。庶民の出でありながら膨大な魔力を有した彼女は、入学時の魔力計測で測定器を破壊するほどの魔力を見せ、その後もめきめきと頭角を現していった。花のような愛らしさと貴族とは異なる価値観を持つ天真爛漫な少女に、当時の第一皇子、宰相の息子、はては騎士団長の息子や隣国の王子など、学院カーストの最上位を占める青年たちが、次々と思いを寄せていった。そのあおりを食らったのは、それぞれの婚約者である。中でも幼い時分より正妃にと定められていた、ハーケンベルグ侯爵家の令嬢クラウディアは、婚約者である第一皇子に突然変心されたあげく一方的に婚約破棄を突きつけられた。
それだけならばまだしも、彼女はフローラを不当に虐待したとして学内裁判にかけられ、学院から追放されてしまったのだ。箱入りで育った侯爵令嬢はひとり夜の街をさまよった結果、夜盗に襲われ ―― 妊娠してしまう。家に戻ることもままならなくなり、幼馴染の従者一人を連れて下町に姿を消した彼女は、その後、娘を出産した際に命を落としたのだという。
皇子達のやりように激怒した侯爵家らが激しく弾劾し、徹底的な調査を行った結果、皇子をはじめとした学院の多くの者たちは、フローラの魅了の魔術に掛かっていたことが判明した。つまりフローラはごくわずかな魔力の持ち主でしかなかったにもかかわらず、関係者を魅了することでそれを偽っていたのである。そんな彼女の最終目的は、容姿端麗で知られた皇子の正妃に収まることであった。
この件で第一皇子は継承権を剥奪され追放、現在ではその弟が王位についている。その息子である皇太子アルベルトは、十三年が過ぎた現在、ヴァイツゼッカー帝国学院の生徒会長となっていた。
あの事件がきっかけとなって、学院の体質も徐々に変わり始めている。
そうして今年もまた、入学式前夜がやってきた。国内に存在する一定以上の魔力を持つ12歳の少年少女を、その身分の区別なく召喚する儀式が行われる夜。
ハーケンベルグ侯爵家夫妻は、一縷の望みをかけて魔法陣を見守っていた。
十三年前、行方知れずになったクラウディアが産んだという娘。もしも生きていれば今年でちょうど12歳になるはずだった。そして貴族の血を引き魔力を持っているのであれば、召喚の儀式によってこの場に現れてくれるかもしれない。
沈痛な面持ちで祈る夫妻へと、当時を知る周囲の貴族達も痛ましげな目を向けていた。
そうして ―― 儀式も終盤にさしかかり、もう望みはないと諦めた頃、奇跡は起きた。
太陽が爆発したかのような強い光と爆風。その収まった先にいたのは、うずくまる一人の少女であった。
粗末な衣服から見える、痩せ細った、けれど透き通るような白い肌。地に伏した少女の肩を覆う、豊かな黒髪。長い髪の間から現れたのは、汚れてはいるが、この世のものとも思えぬ美しい顔。そして何よりもその血筋を証だてる、真実を見通すハーケンベルグの紫の瞳。
それは、後の世に「無欲の聖女」と伝えられることとなる、レオノーラ・フォン・ハーケンベルグが初めて世に知られた瞬間だった。
人々は過酷な運命に翻弄されながらも、常に感謝と慈愛の心を忘れない彼女を愛し、そして称える。
……彼女のその内面が、実は下町育ちの少年レオと入れ替わっており、無欲どころかこよなくお金を愛する守銭奴にほかならないのだと、誰ひとりとして気付くことなく……


こちらもTSものですが、トリップはなし。現地主人公で、勘違い系。本編完結済。
追放されたのをいいことに、幼馴染の従者と駆け落ち。いまやパン屋の女将として自由な下町生活をエンジョイしている元侯爵令嬢クラウディア。その娘たるレーナもまた、貴族社会に関わる気などさらさらないが、召喚の儀式からはどうあっても逃れられない。そこで手近な小動物と魂を入れ替える魔法を使おうとしていたところで事故が起き、お金大好き少年レオと入れ替わってしまう、と。
なまじ容貌が整っているだけに、一度貴族社会に巻き込まれれば、四六時中野郎どもにハアハア言い寄られるどどめ色の人生まっしぐらだからと、いっそそこらのバッタになってしまうことを選ぼうとするレーナもたいがい。
レオはレオで、代わりに学院へ行って1日でも2日でも過ごして戻ってこれたら、金貨二枚を支払うと言われてホイホイ引き受けちゃう守銭奴っぷり。

で、レオは汚い言葉を口にしようとすると喉に痛みが走るという術をかけられているせいで、たどたどしくしか話せない&感情が高ぶると(喉の痛みで)身をこわばらせる&見た目は色白な超絶美少女というコンボが重なって、周囲からは「監禁され言葉もろくに教えられないまま、心ない大人に虐待を受け続けてきた、気の毒な娘」という認識に(笑)
実際には、嫌がらせで出された激マズ料理すら、高級食材使ってるタダ飯だからイケると判断する超絶守銭奴なのに、周囲は「こんなものにでも笑顔で礼を言うほどに、過酷な過去を送ってきたのか……」と逆に絶句して同情してしまうというww

また、レオが「カールハインツライムント金貨」をカー様と呼んで、事あるごとに「カー様を下さい」「カー様を返して」と繰り返すのが、周囲には「母様を下さい」「母様を返して」と聞こえるので、ますます深まる誤解と同情の嵐www

そもそも物語のきっかけからして、冤罪を着せられた悪役令嬢系のその後からという感じですが、追放されたその悪役令嬢はたくましく下町で生きています的な展開なので、とことん上流階級の空回りっぷりが笑えます。
No.7452 (読書)

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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