2016年02月19日の読書
2016年02月19日(Fri)
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本日の初読図書: 「小説家になろう」から書籍化、2巻目です。 WEB版も削除やダイジェスト化は一切されておらず、代わりに大幅加筆で購買意欲をくすぐる、その姿勢に敬意を表します。あと、加筆修正ではなく、あくまで加筆。ストーリーの流れは変更されず、その時この人物はこんなこと考えてた、とか、あの旅の途中で実はこんなことも起きてた、といった形なのもありがたいです。 WEB版と書籍版の内容があまりに食い違っていると、読んでいて混乱してくるので……
今回は、ひそかに気になっていた元砂漠の盗賊(推定)なハマーム関係のエピソードが増えている他に、たまに挟まる別視点が大幅増量されているのがまた、嬉しかったですね。自己評価の低い主人公が、周りから見るとめっちゃすげえと言う展開、大好物なのでww さらにシャルディールの領主アラムさん視点の部分などは、彼の過去とか、似合わないキャラを演じていた理由とかが掘り下げられていて、今ひとつイメージのつかみにくかったアラムという人物が、生きた一人の人間として迫ってきました。 バルツェとクルツェの竜人兄弟の会話も微笑ましく。 そしてメレーネ先輩の下りでは、ヴァイトがみなに頼りにされている理由が、その戦闘力でも外交力でもないことが明かされていて、もう読んでてニヨニヨが止まりません。 そうか、魔王軍の中で、魔王様が父親でモヴィちゃん師匠が母親で、ヴァイトは長男ポジションなのかvv WEB版のロルムンド編で名乗ってる名前もあれですし、もう完っ全に副官どころか宰相兼軍団長すっとばして王太子ですよね。よっ、王子様!!
収録されているのは、38話「戦いに備えよ」から71話「静謐の王」まで。
……はい、WEB版を読んでいて「うぇぇぇえええ!?」ってなった、魔王様のアレが入ってます(しょぼん) ほんとにね、びっくりしたんだよあの展開は(泣)
書き下ろしは50P超。 ヴァイトがまだ魔王軍の臨時お手伝いだった頃に、半年ぶりに戻った人狼の隠れ里で魔物の群を相手に防衛戦をやるお話でした。 ヴァイトが隠れ里で事実上のトップとして認められ、なおかつその功績によって魔王様の目に留まり、魔王軍に正式雇用&人狼隊結成となるエピソード。 相変わらず前世知識(主に理科)を活用して、いろいろ面白いことをやらかしてくれてます(笑) そしてすごいこと成し遂げたのに、「こんなものは功績とは言えない」と、いつものヴァイト節。ブレてねえww
初回限定特典リーフレットは、師匠がヴァイトに対して魔王様と出会った頃の思い出話をするSS。 あの威厳たっぷりな魔王様が、若かりし頃はけっこういろいろやらかしてた……ってか、実はけっこうヴァイトと似た者同士? 的な意外性があって、これまた楽しかったです。 ってことは、ヴァイトも長生きしたら魔王様みたいに……って、無理だろうなあ(苦笑)
ところで、「ナード」って単語、一般常識なんでしょうか? ヴァイトがやたらアラムに対して「ナード体型なんだよな」とか「ナード野郎かと思ったら」って連呼してて、でもまったくピンとこなくって。 WEB版を読んだ時も、意味が判らなくて後で調べたんですよね。 もっと後には「ギークお嬢様を虐めるジョックどもみたい」なんて表現も出てきますし……これは単に私の語彙不足なのか、それともラノベ読者とかの専門用語なのか、どっちなんでしょう??
あと、今回の書籍化について、不満点がひとつ……いやふたつありました。 以下は辛口なので、いちおう畳んでおきます。
それは挿絵でした。
個人的にはめっちゃ好みの絵柄なんですよ。イメージぴったりですし、挿絵によって買うかどうかが大きく左右される私をして、即決で購入を決めさせた素敵なイラストなんです。 ……ただ、1巻の時も正直思ってたんですが……粗い。 おそらく相当に過密なスケジュールで描かれているのではないでしょうか。キャラデザはしっかりされているし、表紙やカラー口絵などもきちんと仕上がっています。しかし本文の挿絵が半ばプロット? ラフ?? 状態です。背景がないどころか、人物の線すら怪しい状態。 これを商業出版物として出すとは、かつて某漫画雑誌で、人気がある作品だからとペン入れされてない未完成下書き状態の原稿を掲載された時を彷彿とさせられます。 ぶっちゃけ刊行ペースをもっと落としても良いから、一巻を12月に、二巻を2月になんて無茶な勢いで出さなくて良いから、もうちょっと絵師さんに時間をあげて欲しいです。ちゃんと描ける力があるのは、カラー見れば判るんですから。
ふたつ目は、同じく絵師さんの過密スケジュールに根っこがあると思うんですけど……本文と絵があってない部分がある。 1巻目でも、魔王様に謁見してるシーンで、人狼形態のはずのヴァイトが人間の姿で描かれてました。今回も勇者三人組+ラシィと戦ってるヴァイトが以下同文です。 挿絵自体は格好良いんです。躍動感もあるし、勇者達もそれぞれにちゃんと個性あるキャラデザインが成されていて、ただのやられ役ではないと思えます。でもやっぱりラフ状態。そして本文のヴァイトは勇者登場の前に既に変身しているうえ、該当挿絵のあるページでしっかりはっきり「毛皮も魔力を帯びて硬くなった」と書かれてる。その横に、人型で戦うヴァイトの挿絵。 これは興醒める。
さらに、魔王様のアレで血まみれになってる、ヴァイト単体挿絵。 これもメチャメチャ格好いいんですよ。他の絵よりは描き込まれてますし、むしろざっくりタッチがあの殺伐とした雰囲気を表現していると思えます。 でも本文のこのシーンでは、ヴァイトまだ人狼形態。 次のページで人型に戻ってますけど、そこだと解釈するなら、今度はあの表情と目つきがしっくりこない。 あの表情は明らかに、**を見下ろして「俺はヴァイト。ただの副官だ」って、いつもの決め台詞言ってるところでしょう!?
両方とも屈指の名場面なのに、それなのに……なまじイラストが好みなだけに、残念でなりません。 これって「人狼よりイケメンのほうが絵になる」という大人の事情なのか、それとも打ち合わせ不足なのか。 前者ならいっそ本文の方を変更して、変身のタイミングを少しずらせばそれで済んだことでしょう。あれだけの加筆や書き下ろしができる筆の早い作者様なら、充分それができたと思うんです。ストーリー的にもおそらく問題出たりしない部分ですし。 後者なら、ちゃんと時間をかけて、絵師さんと作者さんの間でチェックをさせてあげて欲しかったです。
惜しい……本当に本当にもったいない……
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No.7415
(読書)
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| プロフィール |
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神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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