よしなしことを、日々徒然に……
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 やっちまった……
2015年08月29日(Sat) 
あの世界観は、私の文章では書き表せない。
だから妄想だけで済ませようと思っていたのですが。
ちょっとネタを思いついたので、ここにさわりだけメモして、「誰かこういうの書いてくれませんかねえ」とかぼやこうかと、日記の下書きに使っているアプリを起動してみたのですが。

……気が付いたら原稿用紙12枚ほどの何かが(ry

しかもうすっ暗いわ、楽士と殿下しか出てきてねえわ……(汗)
とりあえず某Pの付く場所に、全年齢向けで投稿してきたんですが、手のひらへのキスって、R18とか腐向けには引っかからないですよね? だって主君と臣下だし。
うちの楽士も黒騎士も、こじらせてはいるけれど、あくまで忠誠の人達なので。
愛情に限りなく近い忠誠 or 友情って、尊いと思うのですよ……

でもって。

よく考えたらあそこは、会員登録してないと読めなかったと今さらながら気が付いたので、やっぱりここにも貼り付けておきますね。
ご興味がおありの方は ↓ の「全文を表示」からどうぞ。
イメージは荒川版アニメ準拠で。
あ、いきなりダークっぽい始まり方してますが、バッドエンドではないのでご安心を。



 それは泡沫の【アル戦SS】

 港町の酒場で酌婦を侍らせながら、赤紫色の髪を持つ楽士は、いい気持ちで杯を傾けていた。
 その耳に、なにやら別の卓で話されている噂話が飛び込んでくる。なんでもルシタニア軍に占拠された王都エクバターナの城壁に、囚われになっていたパルス国王と王太子の首が晒されたのだという。

 怖いわと大仰に悲鳴を上げてしなだれかかってくる女達をなだめつつ、楽士は口元を歪める。
 ああ、あの世間知らずのお坊ちゃんは、ついに死んだのか、と。
 さぞや忠義者の黒騎士や軍師殿は、嘆いていることだろう。いや、すでに彼らもこの世の者ではないのかもしれんな。
 最後に見た、お坊ちゃんの驚愕の表情を思い出し、嗤う。

 何故おぬしが、と。悲痛なその叫び声が、ひどく心地良かった。

 他人に奉仕されることを当たり前と思う王族のお坊ちゃんは、まさか自分が裏切るなど、考えもしなかったのだろう。
 邪魔な騎士や軍師とはぐれ、麗しき女神官どのの目もなくなったあの時。多少使える程度の侍童を出し抜くなど、文字通り、赤子の手をひねるようなもので。
 ルシタニア軍を手引きし、あのお坊ちゃんを引き渡した結果は、ずいぶんたくさんの金貨デーナールとなってくれた。そのまま戦火を避けて、このギランまで来たが、当分は生活に困らないだろう。いざという時は、他国に逃れる船賃にすることもできる。

 くつくつと笑いながら、よく冷えた葡萄酒ナビードを口に運んだ。
 まあ、ごきげんですわね、と女達がすり寄ってくる。
 ここ数日、ずいぶん気前よく金貨をばらまいたから、いい金づるだと見なされているのだろう。それも良い。柔らかくて温かい身体は気持ちが良いものだ。たとえ内心でどう思われていようとも、見るからに嫌そうな態度で相手をされるよりも、うわべだけでも笑顔で楽しませてくれるほうがずっと良い。

 女の一人を選び、二階へと上がる。
 こういった酒場では、気に入った女と遊べるよう、部屋が用意されているものだ。
 廊下にいた店員に銀貨ドラフムを投げ、一室を選んで中へと入る。

 そうして ――

 扉を閉め、女と二人きりになった、その瞬間。
 脇腹に灼熱を感じた。

 驚いて見下ろせば、今の今まで腰を抱いていたその女の手に、血に濡れた刃物がある。

 何故、と。口にしようとしたが、喉の奥からぬるいものがこみ上げてきて、言葉にならなかった。
 がくりと膝から力が抜け、己の身体が床へと崩れ落ちるのを、意識だけがどこか他人事のように傍観している。

 喚く女の声が、遠くに聞こえた。

 あんたは覚えていないだろう。
 あんたに弄ばれた姉は、婚約者に捨てられ、自ら死を選んだ。おかげで家は没落し、あたしはこんな遠くの街で、身体を売る境遇に落ちたのに。
 なのにあんたは、今でも同じことを繰り返してるんだろう。
 この、ひとでなしが ――

 泣き叫ぶ女は、幾度も刃を振り下ろす。返り血に彩られたその顔に、先ほどまでの美しさは欠片も残っていなかった。

 ああ、これが俺の死に様か。

 誰も信じず、自分以外の全てを見下し踏みにじり、心赴くままに生きた阿呆に、相応しい末路だ、と。
 己の死を目前にして、それでもなお、冷めた眼差しのまま天井を見上げる。

 判りきっていたことだ。
 後悔など、これっぽっちもするつもりはないけれど。

 ―― けれど、

 ああ、何故だろう。
 天井と屋根に遮られて見えないはずの、夜空が。

 明るく晴れた、星のきらめく夜空が見える。
 どこまでも広く、深く、美しい。
 その青藍色の夜空を見ていると、何故か、胸がざわめいて。

 さながら心臓を押し潰されるような、この痛みは、なんだろう。
 それはけして、女のふるう刃がもたらすものではなくて……


  *  *  *


「ギーヴ!!」
 まだ声変わりも迎えていないだろう、少年の声が、鋭く己の名を呼んだ。
 はっと目を見開けば、ごく間近から覗きこんでくる、澄んだ夜空の色の瞳。
「うなされていたぞ、大丈夫か?」
 冷や汗に濡れた額に、そっと当てられる、小さな手のひら。

「……でん、か……?」

 問い返す声は、粘るような喉に引っかかり、掠れた聞き苦しいものになった。
 それをどう取ったのか。心優しい王太子は、枕元にある水差しに手を伸ばすと、杯に水を注いでくれる。
 寝台から上体を起こしたギーヴは、手ずから渡されたそれを口に運ぶこともできず、ただ呆然と目の前の少年を見つめた。

「皆はまだ酒宴を続けているが、私は早めに下がったのだ。ただ、寝室に戻る途中で、おぬしのことが気になってな」

 今宵もファランギースを潰そうとして、ずいぶんたくさん呑んでいただろう?
 おぬしもけして酒に弱い訳ではないのに、ファランギースを相手にすると、どうも過ごしやすいようだから。

 そう言って微笑むその顔に、裏や作為など、これっぽっちも感じられず。
 この少年は、ただただ心から、こちらの身を案じているのだろう。生まれも育ちも定かではない、身元不明の自称流浪の楽士などという、不審極まりないこんな男の身を。

 ―― 臣下のそのまた部下をただ一人助けるために、この手をすり抜け敵の刃の前に戻っていった、あの時のように。

「……ギーヴ?」

 いつまでも言葉を返さないことを不審に思ったのか、少年はわずかにその眉をひそめる。

「そんなに気分が悪いのか。医師を呼んできたほうが良いか?」

 離れようとしたその身体を、とっさに手首を掴んで止める。
 本来ならば、王族にこんな真似をしただけでも不敬罪を問われるものだ。けれどこの少年は、そんなことなど気にも留めない。そもそも、咎めようと思いすらしないのだろう。

 引き寄せたその手の手のひらに、そっと口唇を触れさせる。

 己のそれと比べれば、ごくごく頼りない、白く華奢な……けれど、いくつもの肉刺まめが潰れた跡のある、剣をふるう者の手。
 この小さな手のひらこそが、王位を掴むに相応しいのだと、いつから自分は思い始めたのか。

 ルシタニア兵に追われ、国境の砦を目指して三手に分断された、あの時。
 いつもしていたように、この少年を見捨てていたら。
 己の欲と保身にまなこを曇らされ、この少年が持つ資質に気付くことなく、金に変えるべく売り飛ばしていたら。

 ―― 今のように、満たされた想いを感じることは、一生なかったであろう。

 常に疑心と猜疑に苛まれ、そして苛まれていることを自覚すらせず。
 己を失うほどの深酒など、けしてしなければ、武器もろくに持たぬまま、揺り起こされるまで目を覚まさないなどということもなかっただろう。

「……大丈夫ですよ、殿下」

 そうして迎えるのは、どこまでも無様な、愚か者に相応しい末路。
 先刻の夢は、起こり得たはずの未来。
 むしろこの少年が王太子でなかったならば、いつか確実に訪れていたはずの、明日。

「ギーヴ?」
「もう少しだけ、このままで」

 右手を持ち上げ、そっと少年の頬に添わせる。
 二つの夜空を、間近から見つめた。

「もう少しだけ……お側に、いさせて下さい」

 囁くように落とされた言葉に、少年は目をしばたたいた。

「私で良ければ、ここにいるが。しかし看病されるのなら、おぬしには女人にょにんの方が良いのではないか?」

 至極真面目な声で、そんなことを言う。
 ギーヴは女の人が好きだろう? と。

『ギーヴはお金が大好きなのに、私のせいで……』

 耳の奥に蘇るのは、初めてこの胸の奥にまで届いたのかもしれない、どこまでも真摯なあの時の言葉。

「……いまは、殿下のことも好いておりますよ」
「だから、おそばにいさせて下さい」
「もう、少しだけ……」

 起こり得たはずの未来も、確実に来たはずの明日も、儚き夜の夢に変えて。
 どうかその瞳の夜空の中で、すべてを泡沫うたかたの幻にしてはくれまいか。


  *  *  *


 それは、王太子軍がシンドゥラ遠征から国境の砦に戻って、まだ間もない頃のこと。
 各地へと飛ばした檄により、多くの兵や武将達 ―― ルーシャン、ザラーヴァント、トゥース、そしてイスファーンらが、ペシャワールへと集結し始めた時期の、ある晩のことであった……

====================

時系列的にはアニメの20話前後。
楽士は殿下の臣下になっていなかったら、きっと遠からずろくでもない死に方をしたんじゃないかという妄想と、大所帯になって新参組と古参組の不協和音が生じ始め、自分みたいな素性の怪しい不逞の輩は、そろそろはじき出されそうだなあという諦念が見せた悪夢、みたいなのをひとまとめにしてシェイクしたら、こんな話に(苦笑)
せめて少しでも長く殿下にお仕えしたいという想いと、かと言って王侯貴族なんぞに尻尾を振って媚びることはできないという矜持からくる葛藤とかですね、あったりしたら萌えるなあと。
ちなみにこの直後に、楽士は軍師に呼び出されるという流れで★

……っていうか、荒川アニメ、そこらへんちゃんとやってくれるよ、ね……?(汗)
No.7058 (創作)

 
 この記事へのコメント
 
いのやま  2015/08/29/21:14:17
…いや本当に夢で良かったです…。
ゆ、夢オチだよね?大丈夫だよね?ね?!と途中までハラハラしながら読みました。
とある海外視聴者の感想を載せている所で11章について読んでいた時に、
「彼は金貨を放り投げた代わりにダイヤモンドを見つけた」という内容の感想があってああなるほどな、と思っていたのですが、この夢の彼はエラムを助けるために彼の手を振り切って駆け戻る王太子の後ろ姿に唖然とすることもなく、金貨も投げ捨てなかったんだなあ…。
分かれ道を選び間違えてしまった彼。命が消えようとする時、かつて踏み躙ったあの子の瞳のような夜空の幻が眼前に浮かんだのは、過酷な旅路に麻痺していた感情が最期の最期に蘇ったからなのか…。余りにも痛ましく哀しく孤独な、人生の終焉でした。
間違えなかった現実の彼、どうか幸せになってくれ…。
つーか行かないでー!最終回までに帰ってきてー!ああとうとう明日だあ…orz
 
No.7059
 
神崎真  2015/08/29/22:25:11
ご感想、ありがとうございます!
この話は、いのやまさんちでコメントを書き込みまくらせていただいたからこそ、生まれました。
いやあ、まさか自分がアル戦の二次創作を書く日が来るとは、夢にも思いませんでしたよ。

そしてうちのモットーは「ご都合主義でも何でも、最後はハッピーエンド!」なので、そこは譲れませんww<夢オチ
っていうか、死にネタは私も地雷でーすーー( T _ T )
夢の場面を書いていて、自分でも泣きそうになった大馬鹿者ですよ。あああ、実際にこうならなくて、ほんっっとーーーに良かった! あのとき殿下がエラムを助けに走ったのは殿下クォリティですが、もしもあそこでエラムが落馬してなかったら……とか仮定しちゃうと、運命の神様はやはり殿下とその仲間達に味方してるんだろうなあとしみじみ実感しました。

……もっともそうなったらそうなったで、殿下はまた別のシチュエーションで、最終的には必ず楽士を魅了するのかもしれませんが(笑)
出会ってしまえば、もう逃れられない。それが殿下クォリティ?
良かったね、ギーヴ、殿下に出会うことができて……

あの分岐点で間違えなかった、現実の彼。殿下やその一行と関わりを持ち、凍らせていた感情を蘇らせた彼だからこそ、夢見ることができた『もしも』の世界。
それを知った楽士は、たとえ幾度旅立ったとしても、必ず殿下のいる場所に戻ってくることでしょう。
殿下がいなければ、自分が迎える未来には孤独で無様な破滅しかないと、知ってしまったのですから★

明日の放送が、果たしてどこまで原作小説を反映してくれるのかは謎ですが……黒騎士と軍師のフォローを削らないでいてくれるのであれば、多少はいのやまさんも落ち着きを取り戻せるんじゃないでしょうか。
……角川版OAVでは、思い切り削られてたからなあ、あのあたり……(遠い目)


しかしこうして書いてみると、つくづく私は『子供の頃に辛酸を嘗めて、それでもなお再生を果たした、飄々たる態度でつかみ所のない美丈夫』ってーのが好きなんだと実感しました。
ヒルメス王子も、凄惨な経験をきちんと成長の糧として、もっと他者の苦しみを想像できる存在になれていたら良かったんですけどねえ。外見だってめっさ好みなんですよ、あの人。今の布で半面隠してる風体とか、よーく見ると火傷側の目の色がちょっと変わってて、オッドアイ状態になってるところとか。
それなのに、ああそれなのに。まったくもって、もったいないお人だ……
 
No.7060

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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