2015年05月20日の読書
2015年05月20日(Wed)
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本日の初読図書: 元ボクサーの黒人ガイ・フリーマンは、対戦相手をリングで死なせてしまい、プロボクサーとしての資格を剥奪されてしまった。今では父親の権力を傘にやりたい放題をしている貴族の坊っちゃん、クレメント・ウッドワードの用心棒に落ちぶれている。クレメントの悪行は気に入らないが、金で雇われている以上、逆らうことはできなかった。その日も気に入ったピアニストを口説こうとして突っぱねられたクレメントは、腹いせに彼女の指を折ろうとしたが、それを止めることすらできない。 ところがただ一人、颯爽と割って入ってきた青年がいた。誰一人動けなかった中で娘を救ったのは、背こそ高いものの、スレンダーで血色もあまり良くない若者。しかし猛禽を思わせるその眼差しには強い光と奥深さがあり、まるで魂の奥底まで見透かされるのではないかという、得体の知れなさを感じさせた。 そしてガイは不思議な格闘技 ―― ジュウジュツで、あっという間にノックアウトされてしまう。クレメントは気絶したガイを見限り、さっさと退散してしまった。 意識を取り戻したガイは、明日からの生活を心配しながらも、虫の好かない雇い主と縁を切れたことにどこかせいせいとする。そうして柔術に興味をもった彼は、若者 ―― まだ大学を出てロンドンに住み着いたばかりだという青年、シャーロック・ホームズと言葉を交わした。 翌日、ホームズはガイをある道場へと案内してくれる。リトル・タニと呼ばれる日本人が経営するそこでは、ホームズを含めた様々な年齢層の男達が柔術を学んでいた。リトル・タニはガイの胸にも届かない小柄で穏やかな中年男だが、ガイはおろか倍以上の体格を持つレスラーが相手でもあっさりと投げ飛ばしてしまう、凄腕の柔術家だったのだ。 タニの強さに感銘を受けたガイは、道場に入門し、柔術を学びながらまっとうな仕事を探し始める。 しかしある日のこと、ホームズと二人で自主トレーニングをしていると、タニがただならぬ様子で戻ってきた。話を聞くと、道場のマネージャーで興行師でもあるアポロ・リブマンが、三日前から行方不明になっているのだという。どうやら収益金の分配の関係で暗黒街の連中と揉めていた形跡があるらしい。その関係で闇組織に拉致されたと思われたが、しかし確たる証拠がないためスコットランド・ヤードは動いてくれないとのことだった。 話を聞いたホームズは、自分がアポロを見つけ、無事に連れ帰ってみせると宣言する。そして自ら暗黒街に潜入すると言うホームズに、ガイも力を貸すことになって……
ネット上でガイ・リッチー版「シャーロック・ホームズ」関係の感想記事を読んでいて、たまたま紹介されているのを見つけました。ホームズと名が付いていたら、とりあえずチェックしたくなるのが私のサガ。しかも今まで聞いたこともなかった作品で、レーベルがスーパーダッシュ文庫となると、興味をそそられます。 まだ221Bで開業する前でワトソンさんが出てこないとか、これは推理モノじゃない、バトルアクションだといったレビューを見てちょっと不安に思ったのですが、うっかり全2巻で送料込み180円なんて出物見つけてしまったら、もう逃す手はないでしょう(笑)
で、買いました。とりあえず一巻目を読みました。
……予想以上に面白かったですvv ってか、ちゃんとパスティーシュしてるじゃん。 確かに格闘技をメインにしたアクション重視のエンターテイメント満載な話運びでしたが、推理もしてるし変装術も駆使。相手を一目見て状況を読み取り、並べたて、びっくりされてから根拠を説明 → なんだそんなことかと言われ、だから説明したくなかったんだ的展開のお約束なやりとりも、きっちり盛り込まれています。むしろメイン相棒が脳味噌筋肉を自他ともに認めるボクサー崩れだけに、推理に対する驚きっぷりはワトソンさん以上かもしれません。 若かりしマイクロフト兄もしっかり御登場。まだそんなに太っていなくて、むしろがっしりとした体格と描写されてます。弟を上まわる推理の切れは、もはやエスパーの域vv
本文は200ページ足らずとちょっと短め。偶然が重なりまくって御都合主義も相当なるも、そのぶんスピード感が半端なく、まさにアクションエンターテイメントなハリウッド映画を見ている感覚でした。 こう言うとあれですが、これむしろイラストない方が良かったかも……特に表紙絵から妙にハードボイルド感が漂っていて、それで手を伸ばすのにだいぶためらいました。 内部挿絵も本文と食い違ってたりして、個人的に微妙でしたし(−ー;)
表紙こんなですけど、ちゃんとこのホームズさんもイギリス紳士なんですよ〜、正装してバイオリン弾いたりロンドン中の泥の種類や路地の隅々をきっちり暗記してる、インテリ派なんですよ〜〜。 あと、面白そうだと思った事件に対しては、玩具を与えられた子供のような興味とエゴイストぶりを発揮するあたりも、ホームズさんらしかったんじゃないかと。
なお三人称で書かれていて、ホームズさん視点の部分はほんのごく僅かです。 ほとんどの語りがボクサー崩れの黒人ガイで、あと一部は柔術の師匠リトル・タニが組んでる興行師アポロさん。ホームズさんの一人称は、原典でもなんというか微妙なところがあるし、彼は理解し難い神秘的な謎の人という立ち位置にした方が今回の場合は効果的だと思うので、他者視点メインなのは正解だと思います。
ちなみにリトル・タニとは、谷幸雄という英国で活躍した実在の柔術家。 タニさんと組んでる興行師がアポロという名前だったのも本当。 さらにラストにはミツヨ・マエダ(前田光世:グレイシー柔術の開祖の師匠)まで登場するサービスぶり。 すがすがしいまでにエンターテイメントです★
……ただ惜しむらくは、現実の谷さん1880年生まれ。前田光世も1878年生まれと、1881年に「緋色の研究」でワトソンさんと出会ったはずのホームズさんとは、ちょーーっと時代がずれてるんですよねえ……まあそこは、あくまでフィクションってことで(苦笑)
ともあれ予想以上に楽しめました。買ってみて良かったです。
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No.6826
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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