2015年05月16日の読書
2015年05月16日(Sat)
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本日の初読図書: 名目上は隠居の立場になったのを利用して、ヤエトは世界の罅を塞ぐ方法について情報を集めることへ手を付ける。幸いにも恩寵の力が増しているのを肌身で実感している皇妹が、興味を示して力を貸してくれた。まずは邪竜の心臓が埋まっているアルハンを領内に持つ、第二皇子の元へ向かった二人及びジェイサルドとファルバーン。だがそこで告げられたのは、第二皇子に預けていたファルバーンの母親、すなわちアルハンの元王妃で浄化の恩寵を持つ女性が、何者が相手とも知れぬ子を孕んだうえで失踪したという衝撃の知らせであった。 とにかく詳しい状況を調べかつ、放置された沙漠の水源の浄化を行うべく、第二皇子を含む一行は水源のあるアルハンの廃墟へと向かう。そこでヤエトを待っていたのは預言者にしてしるべの星、ウィナエであった。 彼女の案内で迷宮状になった地下の水源に向かうと、地下洞窟内部で魔物の群が襲ってくる。だがそれさえも、しるべの星は折り込み済みだった。分断されたヤエト、ジェイサルド、ファルバーンの三名のみを連れた預言者は、彼らを水源ではなくかつて帝国に滅ぼされた都市のひとつ、シンリールの廃墟へと導く。智慧の女神を崇め、この世のありとあらゆる知識が集まっていた、かつての迷宮図書館都市。それらの貴重な資料は帝国の侵攻によってすべて焼き尽くされ、失われたのだとヤエトは心を痛めていた。しかしそれは誤りであった。シンリールの深部には現在も智慧の女神が眠る扉が存在し、正しき問いを持つ者には、一人につき一つのみ答えを返してくれるのだという。 預言者と共に異界へ通ずる扉をくぐったヤエトは、そこで世界の罅を塞ぐのに力を貸してくれる神の名を問うた。 いっぽう帝国中枢では、同母の兄達を次々と失った第七皇子が、不穏な動きを見せていた。沿岸部に領地を与えられていた彼は、帝都への物流を止め、海賊達と手を結び、着々と力を蓄えているという。 そして竜種と貴族達が集まる新年祭の場で、ついに第七皇子は帝国から独立し、自らの国を打ち立てるとの意志を明らかにした。 それはこれまで水面下で行われてきた密かな後継者争いとは一線を画した、帝国をも割りかねない戦の幕開けを宣言するもので ――
えー、キリの良い所からあらすじ書きましたが、実際の下巻の始まりは預言者が登場したところからです。というか、上巻のラストがウィナエさんの立ち姿イラストで終わってます。 登場した頃は人間らしさがなく、神の言うがまますべてを任せきっているような部分など掴みどころのなかったウィナエさんが、今回は打って変わってすごく身近に感じられるキャラになっていました。 彼女も彼女で、これまで生きてくる中でいろいろあったんだなあ……っていうか、まさかそこでヤエトがそういう関わり方をしてたって(驚) ターンの神の性質上、この世界にはタイムパラドックスも存在せず、すべては最初から決まった形に流れ続けているのかもしれませんが……それにしてもヤエトの歴史への関わりかたってパねえなとしみじみ思ってみたり。 そしてターンの神に「必要ない」と言われながら、それでもジェイ爺に昔の名前を探しだすよう指示したりと、なんだかんだで神に逆らっちゃって、しかもそれがちゃんと的を射ていたあたりの譲らなさとかが、ああヤエトさんだなあ、みたいな。 ジェイ爺も懸念だった鬼神関連を乗り越えて、もはや心置きなくヤエトさんに忠誠を誓いまくってるところが格好良いです。ビバ人外最強武闘派爺!
人間は人間として、人間にできうる限りの手段を尽くして、未来へ続く梯子をかけてゆくべきだと語るヤエト。 なまじ自分が過去視などという、ある種ずるい恩寵を持っているだけに、正確な情報を未来へ遺していくことがいかに難しいのかを、彼は実感しているのかもしれないなあと思いました。 特にヤエトがシンリールの門番の老人に語る言葉は、お遊びとはいえ創作に足を突っ込んでいる人間として、すごく心に染みるものが。
でもって。 それやこれやはさておいて。 皇妹・第二皇子・ジェイ爺の三人が取り揃って、今にも気絶しそうなヤエトを『痛ましく』見守ってる場面に、思わず悶えてしまいました。よもやこの三人が、意志を一つにしてヤエトの体調を気遣ってくれる日が来るとは。何をどうしたらそんなことが可能なんだ。まさしく人たらし(優秀な人物に限る)の面目躍如だなヤエト!! ちなみに絶不調で冷や汗かきながら、必死で意識を保とうとしてる苦しげなヤエトのイラストに、今回の上下巻 ―― いや下手すると1巻から通じて一番萌えた私の感覚も、いかがなものかとは思うんですが(苦笑)
今回の下巻で改めて強く思ったのは、この物語はつくづくヤエト視点で綴られているんだなあということです。文体こそ三人称ですが、ヤエト以外の心内語は出てこないし、彼が感知しない事実は伝聞でしか語られません。 ……つまり、ヤエトが異界に行ってる間、帝宮で起きていただろう高度に政治的かつドロドロした開戦間近の駆け引きとか、同じくジェイ爺の死闘あたりはさらっと流されてますし、あるいは戦争の場面なんかも例によって人事不省になってるので、目が覚めたら肝心な部分はほぼ終わっているという、いつものダイジェスト仕様です。 北嶺でレイランドが皇女に何やらかしたのかとか、北部でセルクとルシルがどうしてるのかとかも、ぜんぜん出てこないですしね。 レイランドと言えば、登場時にはもうちょっと活躍するキャラになるのかと思ったのに、今のところどうにも小物感が拭えません。暗躍するならする、皇女に傾倒するならするで、もうちょっと突き抜けてくれないとヤエトの視界には入り得ないなあって感じでした。
どうやら予告によれば、次の上下巻でこのシリーズも完結とのこと。 上巻はもう発売されているのですが、これまで読んだ感じだと上下の間にたいてい「ここで終わるの!?」的「以下続く」が用意されているので、やはり下巻が出てからまとめて読む方が良いだろうと我慢の子です。 上巻で意味ありげに登場した割に、今回はまったく出番なしだったタナーギンとか、いまいち影が薄くて誰だっけ感の強い第六皇子とか、ラストでは出番があるのでしょうか。 あとそろそろ、シロバのヒナたちの活躍をプリーズ《o(><)o》 最近ヤエトが北嶺に行かないので、もふもふ成分が足らんのですよ。もっともふもふを! ヒナたちに全力でじゃれかかられて倒れそうになりつつ、シロバに襟元くわえられて支えられる尚書卿を!!>妹尾先生&ことき先生
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No.6823
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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