2014年12月01日の読書
2014年12月01日(Mon)
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本日の初読図書: 差配人の儀右衛門が千鳥屋という質屋を営んでいることから、千七長屋の名を持つその長屋は、善人ばかりが住んでいると、周囲から『善人長屋』の異名で親しまれていた。ところがその実態はといえば、千鳥屋は裏で盗品を捌いているし、髪結い床の半造は情報屋をやっていて、文吉・唐吉の兄弟は季節のものを振り売りしながら美人局稼業。小間物商いの安太郎は巾着切りで、下駄売りの庄治は空き巣や夜盗を繰り返し、煮豆売りの菊松・お竹夫婦も詐欺騙り、浪人の梶新九郎は代書屋の傍ら偽の証文や手形作りを裏の生業としている。 そう、善人長屋の住人は、揃いも揃って『悪党』揃いであったのだ。 裏稼業の間では重宝されているそんな長屋に、新たな住人がやって来ることになった。なんでも三河は赤坂で錠前破りをやっていた男なのだという。 ところが現れた錠前屋の加助は、なんとも人が良さげで涙もろく、他人の難儀を目にすると無条件に首を突っ込んでは助けようとするお人好しがすぎるほどの、文字通り『善人』で。 儀右衛門の娘お縫や長屋の面々は、次々と厄介事を拾ってくる加助に振り回されながらも、時にしぶしぶ時に進んで人助けに手を貸すことになるのだが……
「お蔦さんの神楽坂日記」シリーズが面白かったので、同作者さんの時代物を借りてみました。全9篇からなる短篇集。 んー……面白い設定だとは思うんですが、ちょっとパンチが弱いかな? 個性的なはずの長屋の面々なのに、誰がどんな稼業だったかとか、ちょっと頭に入りにくかったです。まあとりあえずは、美人局の色男 文さんと差配人の娘お縫だけ覚えておけばいいような気もしますが。 でも最初の頃にちょっとだけ名前が出た盗賊のお頭とかが、あとからもちょいちょい関わってきたりとかして、ちゃんと読みこめばかなり楽しいと思うんですよ。
面倒を拾うだけ拾ってきて、皆が裏稼業を駆使して奔走する間、自分は蚊帳の外になってるっぽい加助さん。 彼がどうしてそこまでお人好しになってしまったのかは、書き下ろしのラスト二編で語られています。 時に苛立たしいほどに人が良すぎるように見えた彼が、その内に秘めていた傷。これはかなり重かったです。 この加助さんは、いつまでも何も知らないままで過ごすのか。あるいは知っていて、知らないふりを続けていくのか。それはどうなるのか判りませんが……悪の道にありながら人の心を忘れずにいる、一種いびつな長屋の面々にとっては、逆の方向にいびつな彼とともにあることで、ある意味上手くバランスがとれているのかなあと。 そんなふうに思えるお話だったのでした。
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No.6399
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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