2014年02月02日の読書
2014年02月02日(Sun)
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本日の初読図書: 児童向けジュヴナイル「星からきた探偵」の原作小説。なのであらすじは先日読んだものに準拠です。 そして実はこの話、このブログを始める前にも一度読んでいるんですが、その時は新装版(2002年発行)だったので一応今回(1963年発行旧版)は初読にカウントしようかと。……まあ中身(訳者)は同じなんですけどね(苦笑) 旧版は表紙のイラストがいかにも一昔前の怪奇SFっぽいエイリアンの図でした。書影を紹介できないのが無念です。 そしてその印象とは裏腹に、非常に理知的で大人で友好的な異星人の登場するのが、ハル・クレメントの書く小説の特徴らしいです。そんな解説を読むと他の作品にも手を出してみたくなるけれど、積読が(ry
文章としては、ジュヴナイル版で「デカ」だった異星人が「捕り手」、「ボブ」だった主役の少年が「バブ」になっているのが最初ちょっと違和感を感じさせますかね。あとバブの友人達も数人出てくるのですが、場面によって名字や名前や愛称(複数)など呼び方がかなり入り乱れているせいで、どれがどの子のことか把握しにくいのが難点です。 そのくせジュヴナイル版ではざっくりカットされていた、SF小説の中に推理小説の要素が色濃く入っているテイストがありまして。ホシがいったい誰の体内に潜んでいるのか、ひとつひとつ可能性を潰していく課程がつぶさに書かれているのに、肝心のキャラの見分けがつきにくいせいで、いま一つ話に没入しにくいのが難点かと。 島のお医者様という第三者の協力者を得るエピソードも、ジュヴナイルでは削られていた楽しいポイントですね。十五才の少年では行き届かない部分をフォローしてくれる、理解ある頼もしい大人の専門家。続編「二千億の針」では、このお医者さんの存在が非常な助けになってきてますし。 あと大人向けバージョンの見所は、バブがかなり最後の方まで捕り手への疑いを持ち続けているところでしょうか。素直かつ無鉄砲な少年の心と、年に似合わぬ聡明さを持ち合わせた彼は、途中で「実は捕り手こそが犯罪者であり、自分(バブ)を作り話で言いくるめて、追っ手を『ホシ』と偽っているのではないか」という可能性に気がつくのですよ。 捕り手と交流を深め、お互いに親愛の情を抱きながらも、その心中では捕り手=ホシでは? という疑いを捨てきれない。しかしその疑いを表に出すことはけしてせず、時々さりげない問いかけで捕り手を試しつつ、反証を得るたびにそっと笑みを浮かべる。そんなバブの思慮深さがあるからこそ、たまにやらかす子供っぽいポカのあれこれも、許容することができるのですよ。 翻訳が古すぎるせいか、バブの話し言葉が子供らしくないというレビューも見かけますが、私はこのくらいの方が「聡明な少年」という印象がはっきりして良いと思います。 ……まあ、「キャットウォーク」が「猫道」だったり「シアトル」が「シャートル」だったりとかするのには、違和感を感じなくもありませんが(苦笑) あとたまに、地形描写で東西南北がおかしい気がするのが困りどころですかね。文章だけだと、うまく脳内で地図を描けないんですよ。たとえばどう考えても南東が、北東って書かれてる場所がある気がする……もしかして文中で出てくる地図、北が上じゃないのか?? 新装版には確か島内地図が載ってたと思うんですが……いっそ新装するだけでなく、新しい訳が出てくれないかなあ。古い文章は古い文章で味があるのですけれど、どうせなら判りやすい方でちゃんと内容を把握した後で、ゆっくり味わいを楽しみたいところです。
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No.5542
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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