よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年01月28日の読書
2014年01月28日(Tue) 
本日の初読図書:
410136916Xかまいたち (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 1996-09-30

by G-Tools
享保二年、大岡越前守忠相が南町奉行の職についてから、様々な不正が正され江戸の庶民たちは大いに喜んでいた。しかし奉行所の一部の人間からは彼の存在は煙たがられているらしく、水面下で不満も湧いているようである。そんな状況で、連続辻斬り事件が発生した。姿を見たものは犬でさえ手にかける残虐なその人斬りを、いつしか人々は「かまいたち」と呼んで恐れるようになる。ある日のこと、医者の娘おようは往診に出た父親を迎えに出て、人が殺される現場を見てしまった。かまいたちだ、自分も殺されると覚悟したおようだったが、なぜか気が付くと一人死体と共に取り残されていた。だが慌てて自身番に駆け込み居合わせた同心を現場に案内すると、もう死体は消えており、これだから若い娘はと叱責を受けてしまう。あれはけして見間違いなどではないと不満をつのらせるおようの前に、元目明しの平太が現れた。越前守によって目明しの存在は禁止されたが、実は越前守自身に使われる特別な探索役「お耳」が存在するのだという。自分はそれであり、おようの目撃証言を信じるから協力して欲しいと平太は告げてきた。喜ぶおようは、しかし真向かいに引っ越してきた新たな住人を知って背筋を凍らせる。新吉と名乗るその男は、確かにおようが見た人殺しの犯人だったのである……「かまいたち」
旅籠梅屋には、毎年師走にやってきて五日ほど逗留する客がいる。伊達様の城下で小間物屋を開いている常二郎という男だ。気の良い男で、梅屋の家族はいつも彼の逗留を心待ちにしていた。それには彼の宿賃の払い方が、いっぷう変わっていることもあげられる。彼は宿賃に毎年小さな干支の金細工を置いていくのである。換金はできない約束なので実質は身にならない支払いだが、そこにはちょっとした事情があった。最終的には十二年かけて十二支がひと通り揃ったところで、それを改めてまとまった金額で買い戻してくれるという。いわば梅家は担保として細工物を預かって、十二年後に利子を含めた預かり料をもらえるという趣向だ。細工物が実に良くできていることもあって、今年の細工はさてどんなものかと、それもまた家族の楽しみであった。ところが六年目になる今年、常二郎が発った後に預かった巳の置物が消えてしまい……「師走の客」
義姉と共に一膳飯屋を切り盛りする少女お初は、道行く商家のお内儀のたもとが血で染まっているのを目撃する。しかし傷はないかと問いかけると、お内儀も周囲の人々もそんな血など見えないと言う。危うく巾着切りと勘違いされかけたお初を救ってくれたのは、通りすがりの武家の老人であった。なんでも植木職人である次兄直次の知り人らしい。後日、お初が岡っ引き六蔵の末妹であると知った商家は、酒樽を持って詫びに訪れた。いまその蝋燭問屋柏屋では、女中の失踪が相次いで、六蔵の世話になっているのだという。いなくなった女中はいずれも謎の病気で寝込んでいる主人の世話をしていたのだが、主人と共にいると自分も具合が悪くなるからと、病が感染るのを恐れていたらしい。兄からそんな話を聞きながら柏屋からもらった酒樽を持ち上げたお初は、激しい頭痛とともにまたも自分にしか見えない不思議な光景を目にした。それは畳いっぱいに飛び散る真っ赤な血しぶき。そして耳も割れんばかりの悲鳴。その声は確かに「人殺し」と叫んでいて……「迷い鳩」
お初達のもとへ、不思議な脇差しがやってきた。六蔵の上役でもある同心の一人、内藤新之助が古道具屋から買ったそれは、夜になると呻き声を上げるという。気味の悪さに眠れず御役目にも支障をきたした内藤は、六蔵へ相談を持ちかけ脇差しを預けてきたのだった。夜になると確かに脇差しは怪しい声を発し始める。六蔵夫婦も直次も何を言っているかまでは聞き取れなかったが、一人お初だけはその言葉を理解できた。「小咲村、坂内の小太郎に伝えてくれ。虎が暴れている」と。しかしこの日の本に本物の虎などいるはずがない。不思議に思いつつも、ひとまず直次が小咲村へと向かった。だが彼の留守の間にとんでもない事件が起こる。とある商家で父親が乱心し、妻と嫁入り間近の娘を斬殺。自らも首をはねて死んでいたのだ。しかも現場には凶器となったはずの刃物が見当たらない。首を傾げる六蔵だったが、惨劇はそれだけにとどまらず……「騒ぐ刀」

宮部みゆきの江戸モノを読もう月間。今回は初期短編集のひとつ「かまいたち」です。
収録作は中短編が四作。うち後半二作は、後にシリーズ化される「霊験お初」のパイロット版です。
うむ、やはり宮部作品は短編集、それも初期の作品のほうが好みだなあ。
表題作は、もう最初から最後まで「お約束」が満載。最初の殺人が起きた時点から、こいつが真犯人で、犯人だと思われてる人はアレやろと分かり切っているだけに、主役のやらかしちゃうあれこれが可笑しいやらいたたまれないやら。オチも秀逸。まさにTVの時代劇SPのようでしたvv
短編「師走の客」は、貧しくとも心豊かに暮らしていた純朴な家族がひどい目に遭わされて……と他人事ながら心を痛めていたら、最後には気持ちのいいどんでん返しがあって、ほんわりできる読後感でございました。
後半の二つは、ミステリとしてはちょっぴりずるい、超常現象が絡むお話。
これはジャンルとしてはどうなるんでしょうね。推理物というには、手掛かりを得る手段がフェアではないので、やはりミステリ風ファンタジーでしょうか。
個人的に直兄さんが格好良くて大好きです。しかしこの人、正式な下っ引でもないのに、いきなり仕事休んで遠出とかして、大丈夫なんだろうか……(苦笑)
さて次は正式版シリーズの「震える岩」あたりを借りてきましょうかね♪
No.5525 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
paoまま  2014/01/29/12:42:27 [HOME]
ああ良いですねぇ、宮部みゆきの江戸物それもちょっと怪奇談混じり。
そしてまこっちゃんのストーリー紹介も実に良く書けていますね。
「師走の客」はハイハイ、最後はあんな感じで落着しましたね。
本を読んでいる時は感じませんでしたが、まこっちゃんの文章を読んだら、
「これって今頃流行の詐欺と変わらんね」
と思いました。
人当たりの良さで相手の懐に入り込み、最後の最後になるまで騙されているとは気付かせない。
昔も今もこれは詐欺の王道なんだぁー。
宮部さんが最後にあんな形でまとめてくれたから良かった。
宮部さんの作品にはワンコさんはよく登場するので、彼女は犬好きなんでしょう。

お初っちゃん来たー!
お初っちゃんのお店の煮しめ食べたい。

すでに何度も読んでいる本にもかかわらず、まこっちゃんの作品紹介は実に読んで面白いし楽しいデス。
技量の高さと本への愛情を感じるよい文章と存じますデス。
 
No.5527
 
神崎真  2014/01/29/21:17:34
「初ものがたり」も、日道坊やがこのくくりに入りますよね<ちょっと怪奇談混じり
っていうか、もともと今後「初ものがたり」とクロスオーバーするという情報があったから、宮部さんの江戸モノを総当りしてるんですが(苦笑)
「師走の客」は本当に、読んでいて最近の様々な詐欺を思い浮かべました。
これは近年になって詐欺の手口が広く一般に周知されるようになっただけで、基本は昔から変わらないということなのでしょうか。それでもこんなお話を二十年以上前に書かれた宮部さんは、本当にすごいと思います。
読後感が良かったのがまた救いでした。やっぱりねえ、ラストは爽快なのが良いです。
ワンコさんは、お初ちゃんの「騒ぐ刀」にも出てきましたね。「パーフェクト・ブルー」のマサといい、宮部さんは確かに犬がお好きなのかも。

> お初っちゃんのお店の煮しめ食べたい
「鬼姫(おにしめ)」ですねvv
 
No.5528

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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