2014年01月21日の読書
2014年01月21日(Tue)
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本日の初読図書: 彼らにとってもっとも忌むべき犯罪を行ったホシを追って、異星人の警官デカは宇宙船を駆っていた。逃げるホシの船はやがて前方に現れた惑星へと突入する。それを追ったデカもまた、墜落に等しい状態でその星 ―― 地球へと到達した。落下の衝撃で宇宙船は壊れてしまい、デカの宿主であった生き物もまた死んでしまう。デカは悲しみにくれるが、しかしこのままでいるわけには行かなかった。おそらく同じように宿主を失ったホシがこの惑星の生き物に迷惑をかけ始める前に、なんとか退治しなければならないからだ。 宿主 ―― そう、デカとホシは、他の生き物の身体に寄生しなければ生きていけない、アミーバー状の生き物であったのだ。寄生とはいっても、一方的に取り付いて栄養を奪い取るような関係ではない。彼らの星では宿主になる生き物の合意の得た上で内部に入らせてもらい、宿主の怪我や病などを治すことで互いに利益を得ている、いわば共生関係を構築しているのだ。しかしホシは宿主の身体を守ろうとせず、故意にその生き物を殺してしまった。それは彼らの種族にとって最大の犯罪なのである。 海に落ちたデカはとりあえずサメの内部に入り込むと、もっとも近くにある島へとたどり着いた。そこで海水浴に興じていた二本足の生き物へと入り込む。どうやらこの星でもかなりの知性がある生き物らしいと踏んだデカは、その相手の協力を得てホシを探そうと考えた。 しかしそこで計算違いが起こる。彼が乗り移ったその生き物 ―― ボブという少年は、その翌日には飛行機を乗り継ぎ、遠く離れたアメリカへと移動してしまったのだ。彼はたまたま夏休みのあいだ実家へ戻っていた、アメリカ本土の中学校に通う寄宿生だったのだ。 ボブの中でこの星の言語や習慣を学びながらも、デカは焦っていた。こうしている間にも、ホシはこの広い惑星のどこかへと行方をくらましてしまうかもしれない。一刻でも早くあの南海の孤島へ戻り、ホシの行方を捜さなければならないのだが、しかしデカのような宇宙人の存在すら知らない少年に対し、どうやって自分の存在を知らせればいいのか。思案を巡らせたデカが取った方法は……
小学生の頃に図書室で何度も読み返したお話。 かの映画ヒドゥンの元ネタとなった古典SF小説を、児童向けに翻訳したジュブナイル版です。 このサイトを開設したての頃だったかな? どうしても読み返したくなったのですが、もよりの図書館には置いていなくって、遠くの図書館にまでわざわざ探しに行ったこともありました。 先日ヒドゥンを見た関係でまた読みたくなり、ふと思いついて最寄り図書館の蔵書を検索してみたら、2004年発行の新装版が!! ……という訳で、一応装丁が違うので、初読カテゴリに入れてみましたvv やー、遠い記憶の中にある、立ち上がったアメーバーがシャー芯を抱え込んで字を書いている絵とかも可愛かったですが、こちらの絵はこちらの絵で、またなかなかいい雰囲気です。 主役の宇宙人(そう、語り手は宇宙人の方なんです)が「デカ」、追われている犯罪宇宙人がホシという翻訳は、なかなかの名訳だと思います。大人向けの翻訳「20億の針」で使われている「捕り手」という名称は、確かにちゃんとした言葉ではあるのですが、今ひとつ遊び心が足りないと思うのですよ。
物語はかなりざっくりダイジェスト化されていて、デカとホシが地球に落ちる場面、デカがボブに入り込む場面、ボブとデカの交流でほぼ半分が占められています。 特にデカが何ヶ月も掛けて言葉や習慣を覚えた上で、四苦八苦して宿主であるボブに自分の存在を判ってもらおうとするくだりは、この話の中でも屈指の読みどころでしょう。
原作「20億の針」の方では、その後ボブとデカが島に戻ってから、いかにしてホシが誰の中に潜んでいるのかを突き詰めていくのかという、ミステリ的な物語をロジカルに語っていたり、あるいはデカの存在によって自分の負傷に無頓着になったボブをデカがたしなめたりと、かなり内容が盛り沢山……だったと思います<記憶が遠い しかし子供向けにはこれぐらいシンプルな方が中だるみもないし、解りやすくていいと思います。 読書に慣れた大人なら、一時間とかからずに読了できるだろう短さに、ワクワクできる要素がぎゅっと詰まっています。
宇宙からやってきて、人間に寄生するエイリアン。 しかしその人格はとても知性的かつ理知的で、至らないところのある子供を辛抱強く教え諭していける、『頼れる大人』なのです。これが数十年前に書かれたというのですから、なんて斬新なのでしょう。 ネットで調べてみると、この二人の関係は、かの「ウルトラマン」にも多大な影響を与えたのでは……とあります。なるほど確かに、「宇宙からやってきて、人間に寄生して、人類を助けてくれる宇宙人」です。 そう考えるとますます感慨深いなあ。
大人で理知的なデカが、ときどきやらかすポカがまた微笑ましかったりvv
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No.5503
(読書)
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この記事へのコメント
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paoまま
2014/01/23/16:37:44 [HOME]
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小学生の頃に何度も図書室で借りた本を大人になってからもう一度読みたい、と思う事はありますよねー。
私にもそんな本が一冊あるのです「子どもだけの街」って題名の本がそれです。
小学生の頃は面白くて何度も何度も読み返したけれど、大人になってから読んで大丈夫かしら。
初恋の人に大人になって再会したら、 「・・・思い出だけにしときゃ良かったヨ・・・」 みたいになったらって思うと、ちょっとその本に手を伸ばすのがコワイんですよ。
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No.5505
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神崎真
2014/01/24/12:09:02
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私は業間(二時限目と三時限目の間にあった30分休み)と昼休みには、ダッシュで図書室に走ってゆく子供でした。 そしてもっぱら生物関係の本とこの「SFこども図書館」のシリーズ、あとはファーブル昆虫記にシートン動物記、ドリトル先生シリーズあたりを、本当に何度も何度も繰り返し読んだものでした(懐) 思い入れはあるけれどタイトルが思い出せない本も多かったりして。実はこの本も大人になってから、わざわざ母校を訪ねてタイトルと作者名を調べたんですよ(苦笑)<そこまでして読み返したかったのか 今ならネットの捜索掲示板で質問すれば、すぐに教えてもらえそうですが。
> 「子どもだけの街」 ほほう、ちょっと調べてみたら、なかなかおもしろそうなあらすじ紹介ですね。 大人になって読み返して、せっかくの思い出が……という気持ちはよっく判ります。 私は一時期児童文学の読み返しにハマったのですが、どうせならできるだけ完訳に近いものを読もうといろいろ手を出して、大後悔したのが「ガリバー旅行記」でした。 子供の頃は、ワクワクする冒険物語だとシンプルに思っていたんだ……まさか本当はあんなにブラックな風刺小説だとは知らなかったんだよ……( T _ T ) あとロビンソン・クルーソーなんかも、大人の目で見ると「なんでいきなりフライデーを奴隷扱いなんだよ!」とか、十五少年漂流記で黒人少年が当たり前のように下働きさせられてるとか、気付かなかった点がいろいろ目についたりします。あとドリトル先生は自分や家族の動物たちが肉を食べることについて、どう思ってるんだとかとか(笑)
そういう意味では、ルパンもちゃんと子供の時に読んでおけばよかったかなあ……
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No.5508
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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