よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年01月08日の読書
2014年01月08日(Wed) 
本日の初読図書:
4101369194幻色江戸ごよみ (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 1998-08-28

by G-Tools
年の瀬を迎えた商家で火が出たのは、なぜか火の気のない神棚からだった。女中頭と番頭が原因を調べてみると、燃えた注連縄の中に何者かの髪の毛が仕込まれていた。それは奉公に上がったばかりの少女が、亡くした母親の供養をしてやりたい一心でやったことで……「鬼子母火」
享保の改革で奢侈が禁止されたお江戸で、病気の妻を抱え仕事を失った飾り職人の元へ、老侍が上質な珊瑚の玉を持ち込んできた。嫁入りする娘へとひそかに持たせてやりたい。表には出さないから豪華な簪細工をと依頼してきた侍に、職人は一世一代の腕を振るったが……「紅の玉」
古道具屋へ行灯を買いに来た男へと、店の主人はとっておきの品を披露する。蔵の中にしまわれていたその二つには、それぞれいわくがついていた……「春火秋燈」
醜女だと有名な娘の元へ、大店から縁談が持ち込まれた。跡取り息子の一目惚れだという。馬鹿にするなと最初は怒った娘だったが、美男美女揃いの大店の家族も使用人も、みな彼女を綺麗だと褒めそやし、自分達こそ醜いのだと主張する。あれよあれよと縁談はまとまり、彼女は狐につままれたような気持ちのまま嫁入りした。しかしやがて、彼らが祟りのせいで美的感覚が逆転しているのだと知り、彼女が選んだその道は……「器量望み」
いなり屋の主人は、もうすぐ娘の嫁入りを控えて幸せのただ中にいた。そんな彼が唯一気になるのは、店の手伝いをしている男の様子が最近おかしいことだった。古着で寝心地の良い夜着を買ったとご機嫌な男は、しかしどんどん痩せおとろえていっており……「庄助の夜着」
祭りの夜に拾われた二歳ほどの迷子。首にかけていた迷子札の住所へ連れていくと、そこに住んでいた家族は三年前の火事ですでに死んでいるとのことだった。妻と子供の死体は見つからなかったが、それでも子供は明らかに別人だし、年も合わない。差配はどうにか本当の親を捜そうとするが……「まひごのしるべ」
火消しになりたいという夢が、どうしても捨てられない少年。しかし実際に火事場に経つと、足がすくんで動けなくなる。恐怖と夢の間で苦しみもがく彼へと、元火消しだったという親父が古びた頭巾を渡した。この頭巾を使えば、恐怖は消える。ただし人からは嫌われるだろう。どちらを選ぶかと問われた少年は、火消しとしての夢だと答えたけれど……「だるま猫」
娘が古着屋で小袖を買ってきた。とびきり安くて良い物があったと喜ぶ娘に、しかし母親は言い聞かせる。古着を選ぶ時に気を付けなければならない点とは……「小袖の手」
奉公が辛くて逃げ出した小僧は、家族から叱責されすぐに店へと連れ戻された。もう帰る場所はないのだ。いっそどこか遠くへ逃げてしまおうと考える小僧を、なぜか隠居した大旦那が呼び寄せる。そうして彼は不思議な掛け軸を見せ、自身が丁稚奉公をしていた頃の話を聞かせた。どこのお店にも、奉公人を見守ってくれる神様がいるのだと……「首吊り御本尊」
神無月になると現れる謎の盗人。できるだけ人を傷つけることなく、その時に得られるだけの無理のない金額を盗んでゆく、律儀な泥棒。どうして神無月だけに現れるのだろう。狙われる家の基準はなんなのか。未だ年若い岡っ引きは様々な推測を重ね……「神無月」
作品の片隅にいつも詫助の花の絵を入れる看板屋。理由を問われてただ一度、生き別れの娘を捜しているからだと出任せで口にしたのだが、何故かいないはずの『娘』が名乗り出てきて……「詫助の花」
因業だと有名な高利貸しのもとで、長らく働いてきた女中。彼女の夢は雪を降らせることだった。奉公にやってきて三年。ようやくその夢が叶う。屋根の上へと登り、袖の中からハサミで切り刻んだ紙吹雪をまき散らす。彼女が何年もかけて、そんなことをしたその理由は……「紙吹雪」

十二話からなる、お江戸が舞台の短編集。それぞれが暦に対応しているのだとは、読んでいるときは気づきませんでした(苦笑)
ファンタジーあり、人情話あり、心温まる結末もあれば、切なすぎる展開もあり。まさに変幻自在の宮部ワールドです。
深川近辺が舞台という他は、話同士の繋がりはまったくありません。岡っ引きの親分も時々登場しますが、名前も出なければ時代が一定なのかも不明なので、回向院のあの人なのかは不明です。
んー……人間心理をえぐり込むあたりが、さすが宮部さんというところでしょうか。
どのお話も、人の心の中に潜む『業』というか、感情の深さ複雑さをあますところなく書き表していると思います。それだけに、ほっこりできる話は本当に心温まるのですが、そのかわり切ない話は本当に辛い……
個人的に一番お気に入りは「器量望み」。主役の葛藤もリアルなら、結末もほっと一息つける素敵なお話でした。
描写や文章、ともにとてもすごいとは思うけれど、でもそれだけに読んでいて辛かったのが「紅の玉」。
あっぱれだと世間でもてはやされる存在の裏、武士の誇りを掲げる存在の背後には、常に泥を被る弱者がいたのだとしみじみ思い知らされると言うか……やりきれない( T _ T )
ラストは「読者の想像に任せます」と言った感じで切られているので、職人夫婦の未来が少しでも希望のあるものになってくれていることを祈りたいです。
No.5466 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
paoまま  2014/01/09/11:28:53 [HOME]
幻色江戸ごよみ、持ってますよ勿論、読んでますよ勿論。

だけどまこっちゃんの今日のこの記事を見て
「江戸ごよみ読みたいぃぃ〜〜!」

だってまこっちゃんがあまりにも上手にあらすじをチラ見せするんだもん。
「はいはい、そうだった、そうだった」、や
「アレ?この話しはかなり記憶が曖昧じゃわ」
で、こうしてコレを書いている間も、本箱へ飛んで行きたい脚を、抑えながらのキーボード叩きです。

イケーん、まこっちゃんアンタ悪い人だわー!
私は今「バスカのワンこ」さんを読んでいるトコなのヨ〜。
横やりは勘弁して下さーい。

あ、でも「江戸ごよみ」は短編集だから、チビチビ横に置いといて読みますか。 (トイレのお伴とか)

はぁ〜・・・PCの前ですっごくジタバタしてしまった。
この姿をまこっちゃんに見られたら・・・
「ニヤリ」
ってされるんだろうなぁ。
 
No.5467
 
神崎真  2014/01/09/21:52:16
ままさんはプロフィールにも宮部みゆき好きだと書いてらっしゃいますもんね。きっと読んでおられるだろうと思ってましたvv
宮部さんはいろんなジャンルを書かれておられますが、私は短編集、特に江戸人情モノ系が性に合う気がします。この江戸ごよみは、御都合主義でもハッピーエンドを推奨する私からすると切ない話運びが多いものの、それでも読ませてしまうところが、さすが宮部さんだと思いました。さすがですよ、ほんと。
例の「〈完本〉初ものがたり」のあとがきで、「今後は他のシリーズとあわせて、人物を往来させながら語り広げていきたい」と書かれていたので、すわ他シリーズも読まなければ! と現在、宮部みゆきお江戸モノ月間に突入中です♪

短編集は、確かにちょっとした合間にチビチビ読めるのがとっても便利。
さ〜て、次は霊験お初あたりをいってみよっかな?
ああでも、私も読み返したい本がいっぱいあ〜る〜〜(><)
 
No.5468

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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