2013年06月23日の読書
2013年06月23日(Sun)
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本日の初読図書: ヒヨドリとかタヌキの観察にかまけていたら、うっかり五日も掛かってしまいました。ようやく折り返しの六冊目を読了。 曹操はもっぱら北部の平定と袁紹の息子の掃討に力を割き、孫権と周瑜はひたすら揚州内部を固めることに腐心。あとは涼州の馬超が出始めたぐらいで少々中だるみ感があるかと思いきや、どうしてどうして。後半、これまでどちらかというとエピソードを削られがちだった劉備サイドが、鬱憤を晴らすかのように活躍してくれました。
今回の見どころはなんと言っても、劉備が隠棲している孔明の元を三度尋ねて迎え入れるあたりからでしょう。そして荊州牧 劉表の死に乗じて南下してきた曹操軍のために新野を逐われ、十万の民衆と共に進軍するも、あえなく大軍に追いつかれて民もろとも壊滅。わずかな手勢のみで命からがら敗走し、かろうじて関羽の船団に助けられ、揚州と手を結ぶべく孔明を使者に出す……という、劉備の生涯でも屈指の大敗北エピソード。映画「レッドクリフ」では導入部分に過ぎないあたりが、じっくりしっかり語られています。 もうね、北方謙三はこれをこう料理するか! と驚かされっぱなしでした。
軍師として劉備軍に参加した孔明さんは、「戦(いくさ)で負けつつ戦略で勝つ」という方針を説明し、数年・十数年後を見すえた作戦を立てるのですよ。その為にまず、曹操に降伏することを選択した荊州を、いったん放棄して揚州方向へ逃げるように進言。そして曹操に荊州を容易く取らせることで、そのまま勢いに乗って揚州までも攻めるように仕向け、そこで危機感を覚えた孫権と同盟を組むことで曹操の南下を阻む、と。しかしもし曹操が孫権を攻める前に荊州へ腰を据え、時間を掛けて力を蓄えてしまっては、もう勝ち目がない。なのでいかに曹操を後先考えず突っ走らせるかを考えて出した結論が、「囮を使って荊州の要である江陵へ曹操の軍を誘導する」です。 囮になるにはできるだけ遅く進軍しなければならない。しかしあまりゆっくり動いていては疑惑を招く → そうだ民衆を護衛しているように見せかければ、遅くても不思議ではないし、徳の将軍という面目も立つ。さらに劉表の弔い合戦として兵を挙げるという名目もプラスすれば、男を上げた上で、降伏を不満とする荊州内の武将達も配下に組み込めて、一石でいくつも鳥が落ちる★
どうだ、この腹黒さは!<誉め言葉 十万の民衆が最初から完全に盾&捨て駒ッスよ? 護衛しているように見せかけて、その実、軍の主力は別行動して全部温存。力及ばす潰走したと思わせるため、確かにかなり綱渡り的な危険は侵しましたが、それでも蹴散らされたあとに民衆を置いて兵達だけ離れた場所で集合したら、ほとんど被害なく元通りです。
なんて斬新な劉備軍!!
徐州を捨てた時もそうでしたが、この劉備は完全に武人として『天下』を見すえているんですよね。『帝を奉じ国民を守るため、乱世を終わらせる手段として天下を統一する』『だからそれまでは民よりも天下統一が優先』と、割り切っちゃってる感じ。……部下を指揮する武将としては、こっちのあり方のほうが正しいんだと思います。人徳人徳言った挙げ句、部下も民も死なせまくりな一般的劉備像よりも、個人的にはずっと好みだったり。
あ、ちゃんと孔明さんと二人、
「責めは、すべて軍師たる私のものです。民が死んだという責めは」 「もういい、孔明」 劉備は言った。本来なら、責めは自分だと言うべきなのだ。
といった具合に、自分達がやっていることの汚さは自覚しているのがポイントです。 うん、北方孔明はちっとも超然としてなどおらず、悩むし苦しむし、自分はこのまま世に出られず埋もれていくのかと落ち込んでみたり、この作戦で本当にうまくいくのかと迷ってみたりと、人間味に溢れているのも面白いですね。自ら剣をとって血まみれになるというのも、なかなか新しい孔明さん像。 劉備と孔明が似ている(かつて筵に日頃のうさを織り込んでいた=土に怨念を込めて耕していた)が故に手を取り合えたというのも、関羽や張飛とは異なった関係になった理由として納得できるんじゃないかと。
そして今まで劉備陣営の見せ場が散々削られていたので、今回も……? と心配だった『趙雲が阿斗を懐に一騎掛け』はしっかりとありましたvv 張飛も長坂橋でちゃんと活躍したし♪ しかしこの長坂坡の戦いで一番魅せてくれたのは、張飛の従者のオリキャラ(王安)かもしれません。なんというかもう、格好良いというか、切ないというか……くそう、オリキャラに泣かされるとはッッ( T ^ T )
そしてそして、待ってました! 関平もついに登場vv 酔っぱらったお義父さん(関羽)を甲斐甲斐しく介抱しております。 ……相変わらず周倉はいないんですけどね。架空の人物らしいからなあ、周倉は(しょぼん)
そして物語終盤。 孔明は同盟の話し合いをするため魯粛と共に孫権のもとへ向かい、荊州水軍を自軍に取りこんだ曹操は、揚州攻めへと駒を進める。 次回はいよいよ赤壁でしょうか? 三国志の中でも最大と言っていい見せ場を、北方先生がどう書いてくれるのか、楽しみでなりません。
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No.4884
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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