よしなしことを、日々徒然に……
※ 2018年以降の記事は、別ブログの方へUPしています ※
新しいブログへは こちら からどうぞ。



 2013年03月27日の読書
2013年03月27日(Wed) 
本日の初読図書:
4102325018リプレイ (新潮文庫)
杉山 高之 ケン・グリムウッド
新潮社 1990-07-27

by G-Tools
1988年10月18日13時06分。
もはや日常となっていた妻との口論をしていた電話の最中、冴えないニュースディレクターだったジェフ・ウィンストンは、突然の心臓発作に見舞われ死亡した。43歳であった。
そして……気がつくと彼は、ベッドに横たわっていた。大学の学生寮で。
時は1963年の春。彼は25年の歳月をさかのぼり、18歳の自分の身体に入り込んでいるようだった。それまでに積み重ねてきた記憶と知識はそのままに、世界も肉体もすべてが過去に戻っているのだ。
おおいに混乱しながらも、ジェフは人生をやり直すチャンスが来たと考えた。まずはおぼろげに覚えていた競馬の大穴レースに、かき集めた有り金をつぎ込んだ。さらに大番狂わせで世間を湧かせたベースボールの試合に大金を賭け、のちに大企業へ成長すると『知って』いる、さまざまな会社の株を購入する。おもしろいように金が増え、彼はまたたく間に大富豪となった。変わった未来により、かつて妻だったリンダとは結ばれなかったが、代わりに結婚した上流階級の女性との間には娘が生まれ、目に入れても痛くないほどに愛しかった。
幸せだった ―― あの日が来るまでは。
再び訪れた、1988年10月18日13時06分。医者から百歳まででも生きられるだろうと太鼓判を押されたはずの健康な心臓は、またも激しい発作を起こし、その動きを止めた。そうして再び、1963年の、春 ――
幾度も繰り返し同じ時間に死に、同じ時代を生きる羽目になったジェフは、そのリプレイのなかで時に大金持ちになり、時に平凡な生活をし、時に厭世家として過ごした。そうしていつしか自分の身に起きている事態の解明と、そこからの脱却を願い始める。やがて彼はかつての記憶にはなかったはずの、世界的大ヒットを果たした映画の存在を知った。それをきっかけに意外な人物と出会うことで、彼のリプレイは大きな転機を迎える……

以前ラジオドラマを聴く機会があったので、図書館で見つけて借りてしまいました。
ううむ、なんなんだろう、この話は。
発行は二十年以上も前。設定はもはや使い古された、ライトノベルのチート物に近いでしょう。良くも悪くも。いやまあ、言ってしまえば、これがそれらのはしりなのかもしれませんが。しかしやはり、おもしろい。むしろ手垢が付く前の作品だからこその、おもしろさでしょうか。
SF……かと思えばファンタジーでもあり、R−18要素もしっかりありつつ、随所に哲学的でもあり。
リプレイを繰り返すたびに深まってゆく苦悩と、現在の状況についてや自分が世界に何を及ぼせるのかという、何に対するとも知れぬ問いかけ。あらゆる事にチャレンジし、そしてすべてが白紙になってゆくやるせなさ。
……深いです。
ただラストの展開は、読む人を選びそうでした。
風呂敷がどう畳まれるのかまったく読めない展開に、ドキドキし、ハラハラし、そうして訪れたのは意外な結末。
しかし果たしてこれを是とするか否とするか。400ページ以上読んできてこれか! と思う人もいるでしょうし、解釈がいくらでもできるぶん、想像の翼を広げる人もいるでしょう。むうう。
とりあえず、『現在』を大切に生きようという、そんな気持ちになれます。

あ、原作はラジオドラマよりもラストの情報が多かったです。ラジオドラマもあれはあれで悪くはなかったので、どちらが良いか、これもやっぱり評価が分かれそう。
私は途中の哲学部分で何度か挫折しそうになったので、先にラジオドラマ版を聴いていて正解だったかも。おかげである程度読み飛ばしても大丈夫だって、判っていたから(苦笑)
そして個人的には、二番目のリプレイが一番羨ましく。
良いなあ。余計なしがらみが出ない程度にほどほどの経済的成功を果たし、愛しい奥さんと子供達がいて、身体的にも医者に太鼓判を押される健康体って……それだけに、全部チャラになった時の絶望感は半端なかったんでしょうが(−ー;)
そして一番気の毒なのは、やっぱりリンダなんだろうか……ジェフってば、どれだけ苦悩しようがなんだろうが、それでも一番好き勝手に生きて、一番得してますよね?

60年代はじめから80年代後半にかけての ―― 特にアメリカの ―― 歴史や風俗をもっと詳しく知っていたら、もうちょっと楽しく読めたんだろうなと。そこが少々残念であったり。
No.4665 (読書)

 この記事へのコメントは以下のフォームからどうぞ
Name
E-Mail
URL
感想
2560文字まで

Pass

 
 この記事のトラックバックURL
https://plant.mints.ne.jp/sfs6_diary/sfs6_diary_tb.cgi/201303274665


No. PASS

<< 2013年03月 >>
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

サーチ :


 最新の記事
 2013年03月27日の読書

 リンク
 神崎へメール
 私立杜守図書館
 蔵書リスト

 

   

 ブログ内記事検索:
 
 AND OR  


Back to Home...

[管理用] [TOP]
shiromuku(fs6)DIARY version 2.41