2013年01月31日の読書
2013年01月31日(Thr)
本日の初読図書: 西暦二〇八年、中国南部揚子江の沿岸で、歴史に名を残す戦いがあった。 寄せ手は皇帝を飾り物とし、その側近として権力を振るいながら、事実上の支配者として中国全土を統一しようと目論む丞相 曹操。 それを迎え撃つのは、後に蜀を建国することとなる仁者と名高い劉備玄徳と、その配下達。そして彼らと同盟を組んだ、江南呉国を統べる孫権である。 当初は劣勢な劉備らに力を貸すことへと難色を見せた呉国の重臣らだったが、曹操は呉国の併呑をも狙っており、いずれ訪れるだろう戦争を逃れるすべはなかった。ならば共通の敵を前に手を組むことは、有効な策略だ、と。 劉備が三顧の礼をもって迎えた天才軍師 諸葛孔明は、呉国との同盟交渉を無事まとめあげた。呉国の先頭に立つのは、国主孫権の義兄弟であり、やはり優れた軍師である周瑜。 二人の軍師は関羽・張飛・趙雲・甘興・黄蓋など勇猛な将軍らを指揮し、曹操率いる百万の水軍を、わずか五万の兵で迎え撃つ。 後の世に「赤壁の戦い」と伝えられるいくさが、いま始まろうとしていた…… はーい、ポチりましたvv 映画「レッドクリフ」のノベライズです。 読み始めた途端にスマホが届いたので、読了まで一週間も掛かってしまいましたのことよ。 ……ってか今年に入ってから、マンガとオンライン小説以外は三国志関係しか読んでねえvv<ハマるとこだわるオタク気質 ノベライズは出来にかなり波があるし、この本けっこう高いので迷いましたが……うっかり1円出品・コンディション「新品同様」×上下巻を見つけてしまいまして、つい(^ー^;;) で、上巻を読み終わった感想としては、「すっげえ面白かった!」です。いやはや、買って良かった。 映画の方もたいがいエンターテイメントでしたけれど、ノベライズの方はさらに輪がかかっています。文章もさすがプロの小説家が手がけられただけあって、普通に小説でした。少なくとも台詞とト書きの脚本を文章に起こしただけ、みたいな代物ではなく、キャラクターの外見や状況の描写もちゃんとあるし、映画では語られなかったそれぞれの心情や過去なども書き足されていて、すごく読みやすかったしお得感がありました。 特に力を入れられていたのが、女性陣の心情。小喬(周瑜の妻)や尚香(孫権の妹)は言うに及ばず、冒頭で井戸に身を投げた劉備の正妻 麋夫人視点まであります。それぞれタイプの異なる女性が、戦乱の世の中でどんなことを想っていたのか、いろいろ語られていておもしろいです。 ……ただまあ、これは読む人を選ぶかもしれません。 読んでいて「なんだろう……ものすごく親しみやすい。すっごくおもしろい。けれど、思わず含み笑いしたくなるような、この妙な親近感はいったい??」と思ったんですが。 あれですわ。同人誌です。三国志がとても好きな人が、溢れる愛を込めまくって書きあげた、呉メインかつ周瑜と孔明の友情を軸に打ち出した、パラレル長編二次創作(笑) なので格好良いシーンはとことん格好良く、その為なら演義の内容も改変しまくり。周瑜と孔明だって、「演義」と違ってすっごく仲良しです。お互い回転の良すぎる脳味噌を持っているが故に、目と目を見交わすだけでその思考を理解しあってしまう。それはけして腐った目で見る801的なものではなくて。判りやすい例を挙げるなら、名探偵コナンの服部平次と江戸川少年のようとでも言いますか。「なるほど」「ええ」みたいな最小限の会話だけで微笑み合う二人のまわりで、他の人間はぽかーんと置いてけぼりです。おまえらもうけっこ(以下略) まあ、周瑜にはラブラブな奥さんがいるので、そこはあくまで友情です。 でもほんとに同人誌っぽい。 多少は原作(演義)の予備知識がないと、地名や人間関係を飲み込むのに少々厳しそうなところとか、値段の割に文字数少ないところとかも特に(苦笑)<定価900円のこの巻で、文章はせいぜい 200KB ぐらいしかない で、もって。 読んでいて特に「おおvv」と思った点は、 ・周瑜がけっこうヘタレ属性+うっかりさんで萌え<奥さんとの出会い&口説くシーンでいろいろとありました ・映画では出なかった赤兎馬の登場と、曹操が関羽にそれを贈るエピソードに言及。 ・張飛が橋の上に仁王立ちして一喝し、曹操軍を追い返すシーンあり。 ・周瑜が軍師のくせに指揮を放り出して前線に出たことについて、ちゃんとフォローが入っている。 といったあたりでしょうか。 あとキャラクターの外見描写が、映画のキャスティングにとらわれていません。周瑜は美周郎の名に相応しい、百合にたとえられる優男として描かれ、夏侯惇も隻眼の将軍。孫権にいたっては暗紫の髪に碧眼と、完全に演義準拠となっています。本文内にも余計な挿絵(写真)などないので、本当に普通の小説として読めると思います。 ……いっそ登場人物紹介からも、写真をはずしてくれた方が良かったような。特に尚香、よりによってあの写真をチョイスすることはないだろうよ(−ー;) ただ気に掛かったのは、ところどころ専門用語に説明がなかったところ。注釈がありすぎるのも興醒めですが、たとえば「髪はY《 あ 》 に結い」って、それいったいどんな髪型よ?? ※「Y」はそんな形の漢字です。 的な部分が何ヶ所かありまして。 そして曹操が小喬に似ている踊り子を身代わりに寵愛しているシーンで、実は判ってて代用品にしているのではなく、頭痛による記憶の混濁ではないかと分析されるところ。 ……曹操はそんな一種『弱い』人間ではなく、ある意味で一本筋の通った揺るぎないダークヒーローであって欲しかったんですが。 本物の小喬に惑わされて出陣の時期を逃しちゃうあたりは、思い上がってしっぺ返し、英雄色を好んでうっかりさん、と思えば愛嬌を感じるのですが。 まあそのあたりを除けば満足です。 1と2合わせて五時間近い映画をいちいち見返すよりも、こちらで好きなシーンを拾い読みする方が楽でいいかもしれませんvv さて、下巻で劉備が疫病を恐れて撤退する場面は、どんなふうにえがかれているものやら。ふふふ、読むのが楽しみです♪
No.4526
(読書)
この記事へのコメント
paoまま
2013/02/01/10:00:40 [HOME]
まこっちゃんおはようございます。 ハマリまくっとるねー。 さすがまこっちゃん、ハマリ体質。 私もどちらかと言うとハマリ体質かなぁ、でもまこっちゃんには及ばないデス。 映画で見てわたしは周瑜が好き。 あらま「しゅうゆ」って打ったら「周瑜」っていきなり変換してくれました。 ちょっと驚き。 物語なんだから、出て来る主要な男性陣は「全員美男でよろしいことヨ〜」じゃマズイですかね?
No.4528
iwamoto
2013/02/01/20:18:05
映画では見ましたが、これを読んで理解できるとは、凄いです。 周瑜、打ってみました、出ました。 綺麗な奥さんでしたねぇ。
No.4529
神崎真
2013/02/02/00:37:53
pao まま様> もともと年末に「三国志」を読み始めた動機が、『いっちょ時間もあるから映画「レッドクリフ」でも見るか。その前に基本知識を入れとかないと』という理由だったんですよね。 そして映画を見ておもしろかったから、ノベライズも読みたくなったわけです。私はほら、基本的に映像より活字が好きな人間ですから(苦笑) > 全員美男でよろしいことヨ もちろんでっす(握り拳) 映画の周瑜なんて本当に格好良かったです。孔明さんも孫権さんもダンディで素敵vv オリジナルキャラ甘興(中村獅童)に至っては、格好良すぎて爆死しちゃうという悲しい展開に……(涙) ただ映画の周瑜は、なんというか非常に男の色気が漂うイケメンでしたよね。 ノベライズだと「花が似合う」とか「百合のような」とか書かれていて、いかにも少女マンガチックな中性的美人さんっぽかったです。それはそれで、想像すると楽しいのですがvv iwamoto 様> こんばんはです。 この小説は映画で語られていない情報がだいぶ足されていたので、むしろ映画を見るよりも物語の流れは理解しやすいかもしれません。 それに私は基本的に、迫力映像を見るよりも活字を読んで、そこに描かれている光景を想像する方が好き性分なので。 ちなみにスター・ウォーズとかもノベライズを持っていますが、家族などは「あれはすごい映像アクションを楽しむもんだろうに」とか言いますね。 そして私が使っている古いATOKだと「周瑜」は出ません。「劉備」や「孔明」、「曹操」は出るのに。 映画の小喬は、本当に美しかったと思います。 「傾国の美女」というのもうなずける配役でした。
No.4530
iwamoto
2013/02/02/08:10:47
周瑜役のトニー・レオンですが、 ウォン・カーウァイ監督の2000年の映画「花様年華」で良い感じだなと思いました。 年齢的には彼はわたしのひと回り下のようです。 文字から頭の中で組み立てる、その楽しさは分かりますが、言葉に出来ないものがあると思います。 ないと言う人もいますが。 (美術家としてはそう思いたいなぁ。 これはお互い様ですね) 表現のスピードが映像の方が圧倒的に早いときがあります。 その良し悪しは言えませんが。 3ページの文章が0.5秒というときも。 それぞれの特徴ということ。 そこをゆっくり楽しむのが幸せな場合もあるでしょうから。
No.4531
神崎真
2013/02/02/11:09:18
トニー・レオン、金城武、中村獅童。みんな名前は目にしたことありましたけれど、顔は全く覚えていませんでした。金城さんも、いまだに「かねしろ」さんなんだか「きんじょう」さんなんだか(−ー;)<ほんとに人の顔と名前を覚えるのが苦手 文章を楽しむ人、映像を楽しむ人、それぞれですよね。 私はたまたま文章派ですが、もちろんそれ以外のかたも数多くいらっしゃるわけで。これは別に善し悪しとかではなく、人それぞれの性分というものでしょう。 > 3ページの文章が0.5秒というときも。 文章を書いているとき、たとえば脳内で「ここで右足から一歩踏み込んで右手で剣を抜き、低い姿勢で左下から右上へ一気に切り上げ、剣を掲げたまま数秒静止。左後ろからぐるりと半周回りこみつつ、ちょっと引いていくカメラワークで」といった感じの映像イメージがあるのに、それをどう小説の文章に落とし込めばいいのか、すごく悩むことがあります。 私に絵心や映像技術(それは無理)があれば、この脳内映像をそのまま取り出して他人様に伝えることができるのに〜〜《o(><)o》 と。 きっと私の文章を読まれた方が思い描かれる光景と、私が想定していたイメージには、だいぶ違いがあるのでしょう。そこがまた面白いところなのですが。 > それぞれの特徴ということ ですね。 ちなみに映画とノベライズの両方に目を通すと、文章を読んだときに映画の映像が脳内に展開し、映画を見ていると小説で知った情報が補完されて、二重においしいです。 それぐらいには良くできたノベライズでした。
No.4532
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プロフィール
神崎 真 (かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。