2012年10月18日の読書
2012年10月18日(Thr)
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本日の初読図書: 御存知、名探偵金田一耕助のコミックアンソロジー。 Amazon をウロウロしていたら、なかなか好評価のレビューがついているうえに、「非常によい」の1円出品があったので、うっかりポチってしまいました。そしたら思っていた以上に状態の良い物が届いて、内容もおもしろかったので、ただいま御機嫌ですvv コミック文庫で、総ページ数はなんと 546 ページ。普通のマンガ単行本の倍以上あります。それだけでもお得感vv 収録作はそれぞれ、
影丸 穣也 霧の別荘の惨劇 40P 長尾 文子 八つ墓村 368P 秋乃 茉莉 傘の中の女 44P 永久保貴一 棺の中の女 34P 宗 美智子 夢の中の女 52P
となっております。全体のほとんどを「八つ墓村」が占めていますね。さもありなん。それぞれがどんな話かは「金田一耕助覚書」の方で紹介していますので割愛しますが、「八つ墓村」以外はみな短編なので、ページ配分としては妥当なところだと思います。
で、もって。肝心の内容についてですが。 これについてはもう、パーフェクトぉぉおお(喜) です。 金田一(爺)スキーを自称する私からしても、コミカライズ作品としては文句のつけようがありませんでした。 もうね、どの作品もプロットが原作にとても忠実。省略はあっても、余計な改変はほとんどなし! これですよ、ファンが求めているのはこれなんです!! 金田一耕助ものといえば、これまでにも映画やドラマ、コミカライズなど様々なメディアミックスをされてきております。しかしその中には、より猟奇的扇情的に味付けされていたり、ものによっては動機やトリック人間関係、挙げ句の果てには犯人まで違っているという作品がままあります。 これまで私の中での個人的ベストメディアミックスは、JETさんによるマンガ(初期作品)がナンバー1で、それに続くのが石坂版ドラマの「女王蜂」と、稲垣版ドラマの「女王蜂」及び「八つ墓村」でした。しかしいま、それが入れ替わろうとしています。 長尾文子さん……かつてこれほどまでに原作に忠実な「八つ墓村」があっただろうか!!(感涙) もともとMYベスト原作のトップ3が「獄門島」「女王蜂」「八つ墓村」な訳ですが、「獄門島」はJETさんの素晴らしいコミックがあります。「女王蜂」は、先に触れたようにドラマでそれなりの物が存在します。しかし! 「八つ墓村」! かつて幾度も映像化されながら、どれも残念だったあの作品が! 稲垣版ドラマもそこそこではあったけれど、それでもやっぱり不満感は残ったのが、それが、それが……(感涙)
……もとい、少し落ち着こう(すーはー)。 個人的「八つ墓村」のポイントはいくつかあるのですが、まあメディアミックスの際に取り上げられるかどうかと言う点においては、ざっと上げて
・そもそも主役が辰弥か ・鍾乳洞探険をするか ・殺人の動機が改変されていないか ・財宝を発見するか ・典子とのロマンスがあるか
です。 特に典子! なにをおいても典子!! 何故いつもその存在すら削られるのだ典子!? です。 そもそも「八つ墓村」は、その半ばに至るまで金田一耕助が登場せず、全編を辰弥の一人称で語られる物語です。そしてその内容は推理物と言うよりも、お宝探しの冒険活劇。 連続殺人の謎よりもむしろ、鍾乳洞を探険しながらドキドキワクワクしつつ、従姉妹の女の子と極限状態の恋を育んでいく物語なのですYO! それなのに、たいていのメディアミックスでは、いきなり冒頭から金田一さんが辰弥くんを迎えに現れ、鍾乳洞で見つけた屍蝋の謎をとくとくと演説し、屏風から手紙を発見しちゃうのですよ……そして典子は存在そのものが削られます(しょぼん) そして場合によっては、辰弥は真犯人と一線越えちゃいます(−ー;) あげく殺人の動機が26年前の惨劇の復讐になったあげく、真犯人は自白の最中に突然死とか、違うだろ!? あくまで恋のために入念な計画殺人をおかし、毅然として金田一耕助と一騎打ちしながら、最期は同じ恋の故に敗北しもがき苦しんで死んでいった、恐ろしくも美しき女殺人鬼はどこへ行った!?
……しかし今回の長尾さんのコミックは、本気でパーフェクトです。 すべてが見事に押さえられています。それどころか典子は初登場だと本気で醜かったり、自分は田治見家の狂った血を引いていないと知った辰弥が、ほっとしつつも財産を継ぐ資格もないんだと落ち込むような利己的な部分まで、きっちりしっかり盛り込まれています。 一部説明を削ってしまったが故に齟齬が見られる部分(姉が出戻りだという描写がないのに、あとで未亡人って書かれてるとか)もありましたが、おおむねにおいて「よくぞここまで」と言うほど細かいところまでエピソードが拾われていました。 クセのある絵柄に最初はちょっと……と思っていましたけれど、それも読んでいるうちに慣れました。
って言うか、私はメディアミックスのポイントは、
1に脚本(プロット) 2に演出・小物(コマ割りや背景などの書き込み) 3に演技(表情などの表現手法) 4にキャスティング(絵柄)
だと思っています。 ぶっちゃけ、ストーリーが良ければ、絵柄や配役などは二の次なのです。 ……まあ、あんまりハンサムすぎる金田一さんや、時代考証まる無視な戦後の光景があるとさすがに冷めますが。 その点で今回のこの本は、「八つ墓村」も他の作品も非常に良い出来だったと思います。 最後の宗さんの作品の、ラストのページがまた良いんですよ。うんうん、原作もこうだったという感じで、非常に気の効いたやりとりで〆られております。 「カルラ舞う」の永久保さんや「霊感商法株式会社」の秋乃さんの作品も、さすがベテランという感じで、要所要所が決まってて◎。 影丸さんとやらは初めて見ましたけど、これもなかなか面白かったです。……ビッグコミックとかに載ってそうな雰囲気でしたが(苦笑) いやあ、良い作品を読めました。お腹いっぱい。満足ですvv
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No.4247
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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