よしなしことを、日々徒然に……
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 2012年06月06日の読書
2012年06月06日(Wed) 
本日の再読図書:
4041497817三毛猫ホームズの推理 (角川文庫 (5680))
赤川 次郎
角川書店 1984-04

by G-Tools
片山義太郎は刑事である。
ノッポでひょろりと長い身体に乗っかっているのは、女性的な印象を与える童顔で、血も苦手なら死体はもっと駄目。ついでに言うなら女性と同席していると脂汗が出てくるし、高い所では足がすくむ。職場での呼び名は「お嬢さん」だ。
そんな情けない男でも刑事である以上、仕事はしなければならない。名刑事だった亡き父の遺言を真に受けた捜査一課長 三田村警視は、あれよあれよと言っている間に片山を刑事の道へ進ませ、今日も部下として仕事を言いつけてくる。
三日前に起きた女子大生殺しに関連して、被害者の在籍する大学内に売春組織が存在するという情報が入った。その大学の学部長は三田村の古い知り合いで、内々に刑事を寄こして調べさせて欲しいと連絡してきたのだという。
血も死体も駄目だというお前には、そちらの捜査を任せると言う三田村に、自分は女性も苦手だとは言えず、片山は渋々その羽衣女子大学へと向かうのだった。
そんな彼を迎えたのは、ロマンスグレーとはかくあらんと言う風情の紳士 森崎学部長と、その飼い猫である三毛猫のホームズ。
彼の説明を聞き、また学年主席だという吉塚雪子などに引き合わされた片山は、ひとまず一晩、女子寮を隣にあるプレハブから見張ることになった。
とは言えその夜は女子寮への侵入未遂騒ぎが起こり、見張りの成果はほとんど上がらなかったのだが。
しかし二日後の早朝 ―― 片山が見張りをしていたそのプレハブ内で、森崎の死体が発見された。頭部を鈍器で殴られたと思しきその死体は、かんぬきと鍵で完全に封鎖された、密室の中に横たわっていたのだった。
売春組織捜索から殺人へとうって変わった事件の捜査線上には、森崎の資産相続争いや新校舎建設に関わる贈収賄など様々な問題が浮かびあがってくる。そしてさらに続く、いくつもの殺人。
それらを追う片山の傍らには、森崎の恋人だった雪子と、そして猫のホームズがつき従ってきて……

ご存知、現在ドラマも放送しているロングセラーシリーズの第一巻。
小学生の頃、月三百円の乏しい小遣いをつぎ込んで、このシリーズの文庫本とノベルを少しずつ買っていました。それも友人に貸したまま返ってこなかったりなどして、いま手元に残っているのはわずかに五冊。どれもボロボロです。
個人的には、この「推理」と、これに続く「追跡」がシリーズ中でもっとも好きかな?
それにしても、いま大人の目で改めて読み返してみると、またずいぶん印象が変わりますね。
時代が変わったと言うこともあるのでしょう<そもそも書かれたのはバブル前
しかしそれ以前の問題として、小学生の純真な目は、書かれていたことをそのまんま鵜呑みにしていたんだなあ、と。
……いや何が言いたいかって、「ノッポでひょろりと長い身体」、「なで肩で穏和な顔の、優しい女性的な印象」で、ついた呼び名が「お嬢さん」な片山刑事は、ずっと男らしくなくてなよっちい、情けないキャラクターだと信じていたのですよ。そこは表紙絵の印象も強かったんでしょうが。
今になって読み返してみると、ぶっちゃけ「痩せ形で高身長、穏やかな雰囲気をまとった」、「草食系の美青年」って奴じゃないですか?? しかも優しくてごっつー誠実。
この一作目と言い、その後もなにかとゲストキャラに言い寄られているところからしても、片山さんがそれなりに魅力的な存在であることは、確かなようで。
……血に弱いとか女性が苦手とか、高所恐怖症とかいうヘタレ属性も、今となっては魅力のひとつに感じられます。ふふふふふ。

ちなみにホームズは、原作ではしゃべりません。人化もしません。あくまで「何故か頭が良くて、さりげない仕草で事件のヒントをくれる、謎の猫」です。
そして晴美さんは……これ最初は一作で終わらせる予定だったんでしょうか。続刊からは考えもつかないヘヴィな設定を背負ってらっしゃいます。二巻目以降の彼女と、今作の彼女はほぼ別人と言って良いぐらいで。

話としては、いくつもの謎と事件が錯綜し、意外な真相・犯人のオンパレードでなかなか楽しめると思います。これは多分いまはじめて読んだとしても、先が読めないんじゃないかな。
……まあつっこみ所も多くありますけれど。そこはやっぱり子供の頃に読んだ記憶が刷り込まれているせいか、「フィクションだしな」とあんまり気になりませんでした。
たとえ現職刑事が捜査中に堂々と関係者と恋仲になって、同僚の目の前通ってデートに出かけようが、女子大の寮に夜這ってようが、そこはそれさ。ハハハハハ!
ただ、最後に犯人に飛びこまれたトラックの運ちゃんは、さぞ良い迷惑だったことだろう……(遠い目)

ちなみに片山さんの外見ヴィジュアルは、佐々木みすずさんの絵で脳内再生してみたりとか。
三毛猫ホームズのメディアミックスは、何故か佐々木みすずさんの漫画が一番印象に残っているんです。……立ち読みしたときのおぼろな記憶によれば、確かラストがハッピーエンドに変えられたりとかしてましたが。 あの場合、続編の扱いはどうなるんだろう。パラレル……?
でも片山さんが美形(笑)なんだと気付かせてくれた、貴重なコミカライズでした。
何本か描いておられるみたいなのに、単行本化はされていないようなのが残念無念(しくしくしく)
コンビニのペーパーバックアンソロジーを入手すれば読めるみたいですが、佐々木さんの一本を読みたいがために何冊も買うのはアレですし……いっそドラマ化の波に乗って、これを機に一冊にまとめてくれないかなあ。
No.3805 (読書)

 
 この記事へのコメント
 
雪華  2012/06/07/00:32:26 [HOME]
こんばんわ、雪華です。

なんつー懐かしいモノをvv
忘れもしない小学校中学年時(<ここポイント)の誕生日プレゼントby母ではありませんか(爆)!!
あの頃は「母よ、○歳時にこんな人間関係ドロドロな推理小説贈るのはどーよっ!?」と心の中で突っ込んだものです。やっぱり低学年時のプレゼントだった「吸血鬼はお年頃」とはモノが違うでしょうに。
さすがは金田一耕助を愛読している我が母のチョイスでした(苦笑)。

>美形草食青年
確かに、今改めて読めば「背が高くほっそりとした、小奇麗で優しげな顔立ちの誠実な草食青年」ですね。
肉食男に食傷気味の女性や、まだ恋に恋する年頃の娘さん方に絶大な人気を誇ったのも頷けます。
普段は昼行燈&ヘタレなのに、いざ本当に必要な時には逃げ出さないのも高ポイントですね。本人に自覚が無いだけで、学生の頃から密かに本命チョコ(<ここポイント)を机の中にこっそり置かれていそうなタイプです。

私が一番好きだったのは、ラストにわざとコンサートに顔を出さずに別れたバイオリニストの娘さんの話でしょうか? 
ラストの別れを選ぶ片山と、失われた恋の哀しみとそれでも幸せだった思い出をありったけこめて啼いたバイオリンの音色が綺麗でした。H2Oの「大人の階段上る 君はまだシンデレラさ(中略)少女だったといつの日か思う時が来るのさ」というフレーズを想起させるシーンでした。青春だなぁ。

慰み者にされて自殺した姉の敵討に来た娘さんの話の設定や、古城を舞台にした優しすぎた娘さんの話のワンシーンは、ずいぶん前にコナンの二次小説で参考にさせて頂きました。

ああ、本当に懐かしい。
 
No.3806
 
神崎真  2012/06/07/20:15:27
私の場合は「晴れ、ときどき殺人」でした<小学校中学年時の誕生プレゼント
それで赤川次郎という作家を知り、三毛猫ホームズと吸血鬼シリーズに手を出した……って、そんな初期から読んでるものが被ってるって(爆笑)
吸血鬼シリーズも、いまは飛び飛びに五冊しか残ってないなあ。お父さんがいきなり娘より年下の嫁さんゲットして子供まで産ませるという、なかなか衝撃的な展開でしたっけ。いやまあ、幸せラブラブだったから良いんですけど。

> 人間関係ドロドロ
この「〜推理」は、シリーズ中でも群を抜いてドロドロで暗鬱なお話ですよね。
かなり後味が悪いバッドエンドなので、ドラマやシリーズの他作品から入った人は、けっこう驚くと思います。でも私はむしろこの初期のシリアス展開が好きなんです。そんな私はやっぱり金田一(爺)スキーvv

> いざ本当に必要な時には逃げ出さない
そこポイントですね。試験に出ます。
ヘタレキャラは、ここぞと言うときのギャップがあるからこそ萌えるのです。
片山さんはきっと、周囲から好意を向けられていても、ちっとも気付かないか自意識過剰だと思いこんでスルーしてきた人だと信じてます。

> バイオリニストの娘さん
音楽家ネタと言うことは「狂死曲(ラプソディー)」ですかね?
これも買って間もなく紛失してしまったので、内容をまったく覚えていないのですが。機会があったら図書館で頭から順に改めて読んでいこうと思っているので、その時はH2Oの曲を念頭に置いていてみます。
仇討ちの妹は「追跡」、古城が舞台は「騎士道」か「恐怖館」か……雪華さんも割と、初期作品の方がお好みのようでvv
……っていうか、今でも新作出てるっていうんだから、本当に長いシリーズです。最新作あたりでは片山さんがPC使ったり、スマートフォン持ったりしてるんでしょうか……?
 
No.3807

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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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