2011年10月10日の読書
2011年10月10日(Mon)
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本日の初読図書: それはなんの変哲もなかったある日のこと。世界各地に巨大な塩の結晶が墜落し、それと前後して人間が塩と化していく奇病が蔓延した。 日本にもいくつもの結晶が飛来。東京湾の埋め立て地に突き立った結晶は、五百メートルもの巨体で遠方からも見ることができた。初日に塩化した人間は、関東圏だけでその人口の三分の一に及び、日本の文明は崩壊した。政治家の多くは初日にその命を落とし、政府はその機能をほぼ凍結。かろうじて食料の配給と水道や電気系統こそ生きてはいるものの、燃料補給の目処が立たない民間車輌は完全に姿を消し、街には塩の柱と化した元人間の残骸が乱立している。略奪暴行が横行し、地域によっては一人で外を歩くことすらままならない。 普通の女子高生だった真奈の両親は、異変初日から帰ってこなくなった。 両親の死を認められないまま、ひとり懸命に暮らしていた彼女だったが、下劣な若者達に自宅を襲撃され、身ひとつで逃げ出すことになる。そうして点々としながら生きていた彼女を救ってくれたのは、秋庭という謎の男だった。 とにかくサバイバルスキルが高く、持っている引き出しが多い。口は悪いが、重荷にしかならない真奈を放り出しもせず、同じ部屋に住まわせてくれている。 そうして暮らす二人の周囲を通り過ぎていく、様々な人々。塩害に翻弄される彼らは、彼らなりの様々な結末を迎えてゆく。 やがて二人の前に現れたのは、秋庭の旧友、入江だった。彼は秋庭に問う。 「大規模テロなんてしてみたくない?」 それが世界を救う恋を、自覚させるきっかけだった。
有川さんのデビュー作。 のっけから重い展開でびっくりしました。いや粗筋見たときから、けして明るく楽しい話ではないと判ってはいたのですけれど。ちょっとこれまで読んだ話とのギャップが大きくて。っていうか、これがデビュー作なのだから、これが元々の持ち味? それとも最近になって、ようやく書きたいものが書けるようになられたのか。 有川さん特有の軽快な台詞回しなどは健在なのですけれど、個人的に読んでいて気分がローになる話は、正直いまは辛いです。 残酷なまでに現実的で、容赦のない入江の理論。 虐げられる側に立つ真奈の悲哀と、そこから立ち上がる強さ。 愛が世界を救うなんて嘘だと断言しつつ、自分達の恋を救うために、結果的に世界を救ってしまう秋庭。 どれも格好いいです。でもあまりにも犠牲が多すぎて切ない……(泣) 単行本書き下ろしだという後日談群は、あって嬉しいですね。本編だけだとちょっと尻切れトンボっぽくて。これは文庫版よりハードカバー単行本版を読むことをオススメします。
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No.3420
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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