書いたは良いけれど
2010年01月12日(Tue)
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夢で見た情景をネタに、寝起きに思わず書きとめたは良いけれど、あとで読み返したら、なんじゃこら、な代物に仕上がっていました(苦笑) 拍手にするのもなんだし、かといってお蔵入りも勿体ないので、ひっそりとここに貼りつけておきます。 きつね(日月堂?)で、小ネタ。
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直人の自宅(下宿)には、一台の変わった自転車が存在している。 使用禁止、と札をつけた上に厳重な鍵をかけられたその自転車を、彼が外出に使うことは滅多にない。 ただ時おり ―― レポート作成で煮詰まったときなどに、車輪止めを立てたままで漕いでいる光景が見られたりする。 彼の友人などは、運動不足解消に使っているのだろうかと、その程度に考えているのだが。
実は ―― その自転車がただのそれではないことを、知る者は少ない。 正確には、ただのそれでは『なくなってしまった』のであるのだが。
それは数年前のこと。 直人の地元の友人である、某骨董品屋の主人に自転車を貸したところ、何があったのか、大破して返ってきたのである。もちろん相手は恐縮し、修理代一切を負担してくれたのだが。 ―― しかしそれ以降、その自転車には不思議な現象がまとわりつくようになったのだった。 漕いでいると、どこからともなく曲のようなものが聞こえてくるのである。 不可思議な、聞いたこともないようなその旋律は、周囲の誰にも聞こえることなく、ただ自転車を漕いでいる者の耳にだけ届くのだ。 ある時は陽気に、ある時はもの寂しげに、そしてある時は趣深く ―― 聞こえるたびに異なる、けれど美しいそのメロディーは、けして持ち主に危険を加えるような存在ではなかったけれど。それでもいたずらに他人へ貸すことを躊躇わせるには充分な代物であった。
「……お礼のつもりらしかったんだけど」
そう、骨董品屋の主は告げる。 誰からの、何に対するお礼だったのかは、訊くに訊けなかった。 ただ直人は無碍に処分するのも忍びなく、そして誰かが不用意に使って驚いたりしないよう、大学入学時にはそれを下宿先にまで持ち込む羽目になったのである。
それでも、耳に優しいその旋律は、ときとして持ち主を慰める役に立っているらしい。 少なくとも、レポートの仕上り度合いには、貢献しているらしかった。
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―― こうして直人は不思議に慣らされていくのでした。
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No.2611
(創作)
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この記事へのコメント
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雪華
2010/01/12/22:27:54
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そうして直人は(笑)> お爺ちゃんになった時、膝の上に孫を抱いて『実際に体験した』日本不思議話を語れそうですね(爆)。孫も幼少の頃の遊び相手が黒白の犬ならぬ御狐様とか(笑)。 俊己の孫なんて『本物の鬼』に鬼の昔話とか聞かされて、傍で見ている俊己が胡乱な視線で呆れてそうです(笑)。 平和でいいですねvv
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No.2612
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神崎真
2010/01/13/23:40:17
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語る話のネタは尽きなさそうです(笑)<直人 ……直人老人と孫の話は一個ネタがなくはないんですが、未来の状況をどう描写すべきか迷いつつお蔵に入っています。書いてはみたいんですけどね…… 俊己の場合……好き勝手しそうですね、あそこの鬼主従は(苦笑) でもそんな平和な光景が来るのは良いことでしょう。たぶん……きっと。
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No.2615
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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