ぬえの集う街で  小話
 
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
(2020/12/01 5:54)
神崎 真


※元々は拍手お礼用に準備していたもので、時系列的に七話目のあたりです。
未読の方は、そちらを読了されてからどうぞ。



「ねえ、シルバー。前から気になってたんだけどさ」
「何がだ」
「シルバーって、なんで男の人みたいなしゃべりかたするの?」
「……おとこ?」
「うん。それに年上の人とかにも、ですとかますとか使わないよね。なんで?」
「ふむ……(なにやら思案中)……」
「(((うわあああ、人間ヒューマンにそれを、面と向かって訊くか!?)))」
「……敬語とは、あくまで尊敬に値する相手に対して使うものだ。対象の年齢や性別に左右されるものではないだろう」
「えっと……じゃあシルバーは、誰も尊敬してないってこと?」
「(((ルディィィイイイッッッ!!!)))」
「む……いや……義父ちちはある程度問題はあれ、敬意を払うに充分な人物だった。ここの面々も……だが……(しばし静止ののち黙考に入る)……」
「(((あ、なんかまた変なことを考えてそうな気が)))」
「 ―― ドクター・フェイ」
「お、おう、なんだ?(ドキドキ)」
「……Dr.ドクターとは敬称だ。使用に問題はない。と、なると……」
「(((ハラハラハラ)))」




「ミスター・バックスとお呼びする……べき、です、か?」




「…………勘弁してくれ。なんでそうなる」
「敬意を払うべき相手と言うならば、ここには数多く存在している。しかしこれまで敬語を使わなかったのはなぜかと問われれば……考えたことがなかった」
「は?」
「文法として理解はしているが、己が使用するものとしての認識がなかった。義父に言葉遣いを正すよう言われることもなかったし、そもそも義父以外に敬意を表そうと思える存在がいなかったということでもある。だが……確かに、もっと女らしい話し方をしろとか、目上に対してそんな態度を取るなという指摘は受けなくもない」
「そ、そりゃあ、仕事してりゃ、そう言うこともあるだろうが」
「 ―― ここの方々にはお世話になっていますし、至らぬ面を御教授いただくことも多いです。礼をもって接する理由としては充分でしょう。その表現方法として、言語の選択というものが有効とおっしゃられるのであれば……」
「いや待て! だからちょっと落ち着け!!」


「(((お前ゴウマこそ落ち着け! 命令口調になってんぞっっっ!?)))」
(2020/12/01 6:18)
 


シルバーの口調や物腰は、ある意味で完全に無自覚です。敬語=意味は判る外国語みたいな感覚。
なおこのあと、全力でこれまで通りを懇願されました。


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