いきなり金田一耕助のフラットで死体が発見されるという、なかなか珍しい展開のお話。
ジャズシンガー関口たまきのマネージャー小山順子は、殺人事件が起こるかもしれないという不安を持ち、金田一耕助を訪ねてきた。しかし外出中だった金田一耕助が帰宅するよりも早く、彼女は常備薬に仕込まれていた毒物を飲み死亡してしまう。彼女が依頼したかった件についての手がかりは、彼女の持ち物から発見された新聞記事と、そして何者かの手で破られている日めくりカレンダーのふたつばかり。
はたして数日後、関口たまきの自宅で行われたクリスマスパーティーで、たまきの夫である服部徹也が刺し殺された。関係者にはみな、確かなアリバイが存在する状況で……
金田一耕助の留守中に訪れた依頼人が、帰宅を待つ間に常備薬に仕込まれた毒を飲んで死んでしまった訳ですが、自宅で人が死んでいたにもかかわらず、まったく疑いを受けないあたりが金田一さんらしいです。私立探偵というのはけっこう警察に邪魔者呼ばわりされることが多いと思うのですが、一番に駆けつけた警官に「われわれはなにをすればいいんですか」とか訊かれてるし、本文にも「金田一耕助をよくしっている人間にとっては、かれの部屋で殺人事件が起こるということが、なにかしら、滑稽千万な間違いのようにおもわれるらしい」と明記されているしで、金田一さんすっかり身内扱いになってます(笑)
本筋の方は正直あまり後味のよろしくない話というか、いまひとつ印象が薄いというか。
結局は被害者が犯人に対して抱く罪悪感から、刺された後もしばらく平静を装っていたため、アリバイが成立してしまっていたというものなのですが、狡知に長けた犯人という割には、結果オーライなアリバイのような……
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