横溝正史の文章って、ときどきいきなり横文字が混じり込んでいて妙な感じがします。しかもそれが最近のカタカナ英語ではなく、実際に英単語として覚えたものをカタカナに開いているらしくって、なじみのない表記になっているからいっそう違和感が。
そんなわけで金田一さんは、冒頭から世にも異常なサープライズを味わったそうです(笑)
金田一耕助が行きつけているパチンコ屋の看板娘、夢見る夢子さんこと本多美禰子が死体で発見された。懐の中に差出人金田一耕助による、不思議な呼び出し状を抱いて。
彼女は三年前に姉を殺害した犯人を捜して欲しいと、金田一耕助に依頼していた。呼び出し状はその犯人が判明したから、相手をとらえるための芝居として、姉が殺されたその場所へ、姉が死んだときと同じ格好でやってきて欲しいと告げていた。すなわち、姉の形見のイブニングドレスに真珠の首飾り、そして手にはホタルの入ったランタンを提げて、と。
そして彼女は姉と同じ場所で、姉と同じ姿をして殺されていたのである。
最近の世論として語られていた偽札事件が、あとになって本筋に絡んでくるのはお約束。
しかし夢想家であるが故に「夢見る夢子さん」と呼ばれていた少女が、実は相手の言動の裏の裏まで考える用心深い人間だったというのが、どうもいまひとつしっくりときません。
夢見がちだからこそ、金田一耕助の名で送られた手紙の、ドラマチックな指示にも従ったのだろうと誰もが信じていたけれど、実際はそうではなかったと、その展開は別に良いんですが、その理由というのが「夢想家というのはじぶんでいろんな場合を空想することは好きだが、他人の夢想には乗らないのがふつうだと思うんです」って……普通、ですか? その考え方って。
そうそうこの話、ラストの一文の気が利いてます。
金田一さん、自分は荒事には向かないのだと、ちゃんと把握しているのですな(笑)
|