―― ねえ、あなたは思わない?
―― 何をだ。
―― 雨って素敵だってことを。
―― 思わないね。
―― 優しいじゃない。
―― 冷たいだけだろう。
―― さあさあいう音が、耳にとっても気持ちが良いわ。
―― うるさくって耳障りだね。
―― ほら、濡れた地面から、土や草の匂いが立ちのぼってる。
―― じめついてうっとおしいだけさ。
―― あ、稲光。とても綺麗。
―― どっかに落ちなきゃいいけどな。ロウソクどこにしまってたっけ。
―― ……あなたは、雨が、嫌い?
―― さあ、な。いい加減にその口を閉じて、濡れた身体を拭いたらどうだ?
―― わたしはやっぱり、雨が好きだわ。
―― そうかい。
―― だってあなたが、こうしてタオルを渡してくれるもの。
―― …………。
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