モノカキさんに30のお題より】
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
(2002/12/25 16:45)
神崎 真


 鬼。
 悪魔。
 人でなし。


 繰り返し投げつけられる、恐怖と嫌悪に満ち満ちた言葉。


 剣を鞘におさめた青年は、無表情でぐるりとあたりを見わたした。
 その足元に広がる、真紅の海。
 玩具のように散乱した、かつては人体であった部品パーツ達。


 おののき身を引く民衆に、青年は静かな嗤いを向ける。


「あいにくだが、その台詞は聞き飽きてるんだ」


 そう残し、きびすを返して歩き出す。
 その後ろ姿に、揺らぐ色などまるでなく。


 人間ひとと呼ばれて殺されるより、化け物と呼ばれて生きてゆく、と。


 返り血にまみれた青年へと、連れとおぼしき幼子おさなごが、満面の笑顔で駆け寄っていった。


(2002/12/25 16:53)


極短。文章を削ぎ落とす場合、どこまで可能なのかと模索してみたり。


モノカキさんに30のお題

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