図書館でたまたま目に止まったので借りてきました。 日本人の手によって書かれた本格贋作、語られざる事件を扱った短編集です。 著者の北原さんは、もともとホームズ原典やパスティーシュの翻訳を多く手がけられている、有名なシャーロキアンの方だそうで。文章には全く違和感がなく、ドイル自身の作品だと言われたら、普通に信じちゃうだろうレベルでした。 ワトソンさんも、突出して有能でも気が強くもありませんが、頓珍漢な謎推理を披露する愚か者というほどでもなく、ちょうどいいさじ加減のキャラクターだったと思います。 あと最初から日本語で書かれているので、翻訳特有の読みにくさがないのもありがたいところでした。 作者さんいわく「原作を読んでいない人でも何ら問題なく、十分お楽しみいただけると思います」とのこと。 それでいてヤードの警部アセルニ・ジョーンズがホームズさんへ出馬を乞う手紙で、「暇なら、来て下さい。暇でなくても、すぐ来て下さい」と書いてきて、ホームズさんに「これはいい。今度、僕もこの手を使わせてもらおう」と笑われるといったサービスシーンが、ちょこちょこ挟まっています。判ってらっしゃるww <ホームズからワトソンへの、「ツゴウガヨケレバ スグコイ、ワルクテモコイ( Come at once if convenient ? if inconvenient come all the same. )」という電報は、原典「這う男」の冒頭