よしなしことを、日々徒然に……
※ 2017年以前の記事は こちら になります ※



 河底の寶玉 探偵奇譚呉田博士第四篇
2020年02月20日(Thr) 
読書記録:
■「河底の寶玉 探偵奇譚呉田博士第四篇(国立国会図書館デジタルコレクション)」三津木春影
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/914196

読み始めたのは、ものすごーーーーーく前……まだ国立国会図書館デジタルコレクションが、近代デジタルライブラリーという名称だった頃のこと。それを、ようやく、読了しましたーー。

例によって大正時代のホームズさん翻案作品で、原作は「四つの署名」。
これまでにもテキスト入力して自サイトで公開している呉田博士シリーズの長編でして、国会図書館でPDF公開されているうち、ホームズさんが原案の作品、ラスト一作です。
残り一つ「機関士の拇指」は、やはりまだ国会図書館では読めないようですが……改めて調べてみたら、このシリーズ近年になって総集編が出てるんですね。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

探偵奇譚呉田博士完全版 [ 三津木春影 ]
価格:7480円(税込、送料無料) (2020/2/20時点)



……さすがに買おうとまでは思いませんがww
そもそも呉田博士シリーズは、ホームズさんよりも「ソーンダイク博士」シリーズを翻案したお話が多いそうで。一応そっちも原作読みはしたんですけど、いまいち印象が薄いと言うか、あまり記憶に残らなかった……^^;;
しかもこの翻案、ワトソンさんこと和田さんが「醫科大學を卒(を)へ、大學院に籍を置く一介の書生」と、完全に呉田博士より格下であることが明言されていまして。ホームズさんとワトソンさんの微妙な力関係を良しとする身としては、何度も言いますが、これはとっても悲しい改変。だから個人的には「資料的な意味合いで、いちおう目を通しておこうかな」ぐらいの熱意しか持てなくて……それもあって、読了するまでこんなに時間がかかっちゃいました。

で、今回の「河底の寶玉」。
やはり冒頭のコカイン注射のエピソードはまるっとカットされてましたね。ワトソンさんの著作やホームズさんの各種論文についてもカット。懐中時計からお兄さんについて推理する場面もなし。いきなり依頼人が訪れた場面から始まってます(´・ω・`)

例によってキャラ名や地名などをざっと上げてみると、

メアリー・モースタン → 須谷丸子と日本名なるも、金髪に碧の眼
ローワ・キャンバーウェルのセシル・フォレスター夫人 → 築地の濠田瀬尾子夫人
サディアス・ショルトー → 山輪周英
アセルニー・ジョーンズ → 阿瀬田讓作警部
モーディカイ・スミス → 隅原介作
エジンバラの寄宿学校 → 横濱のハリス女學校の寄宿舍
ロンドンのランガムホテル → 上海の蘭葉旅館
アッパー・ノーウッドのポンディシェリ・ロッジ → 東京郊外の砂村
ハリエット山の傾斜地にあるホープ・タウン → 針枝山の麓の帆立
タイムズ → 東京英字新聞
6ペンス → 十錢
テムズ川 → 隅田川
オーロラ号 → 北光丸

といったところ。

物語のキーとなる署名をした四人、ジョナサン・スモール、マホメット・シング、アブドゥーラ・カーン、ドスト・アクバルは、それぞれ梁瀬あるいは簗瀬茂十(やなせ もじう)、眞保目宇婆陀(まほめ うばだ)、阿多羅寒陀(あたら かんだ)もしくは漢陀、波須戸阿武迦(はすど あぶか)となってます。
このあたりは名前の漢字やふりがなの濁点などに、ちょいちょい揺れがありました。
他には結列阿曹篤(ケレオソート)とか亞爾加魯乙土(アルカロイド)、斯篤里規尼涅(ストリキニーネ)といった当て字も、当時の雰囲気を感じられて興味深いところです。

あとベーカー・ストリート・イレギュラーズは「浮浪人(ごろつき)探偵局員」となっており、構成員が子供という描写はありませんでした。リーダーのウィギンズは銀州(ぎんしう)という「ノラクラした威張り顔の親方」です。これって現代版SHERLOCKのホームレス・ネットワークを思い出したり。

そしてちょっと気になった宝石類の翻訳は、英文と見比べた感じ、ルビー(複数形: rubies )が紅寶玉、ガーネットなどの赤い石の総称カーバンクル( carbuncles )はただの紅玉とされているようです。これを鑑みるに、コナン・ドイル御大はちゃんとルビーとカーバンクルを書き分けておられたんですね。
ほら、青いルビーって普通にサファイアですから(苦笑)<かつての邦題「青いルビー」こと The Adventure of the Blue Carbuncle 、いまは「青いガーネット」などと訳されているそうで
……とはいえやっぱり、ガラスが切れる炭素の塊って表現だと、それブルーダイヤなんじゃとは思っちゃうんですが^^;;
話を戻して、さらには緑柱石がエメラルド( emeralds )で、緑玉石がベリル( beryls )と区別されていたり、瑪瑙がアーゲートで縞瑪瑙はオニキスだったりと、実はけっこう細かったことが今回判明したり。
当時の翻訳、大変だったろうなこれ……
あ、巨大ダイヤ the Great Mogul は「大蒙古帝(だいもうこてい)」となってました(笑)

■ダイアモンドに関する基本的な知識・有名なダイアモンド
 http://www.nihongo.com/aaa/diamond/d1kihon/d19famo.htm#orlov


全体的には、二人の日常や他愛のないやりとり、博士の推理の細かいところなどが削られたり省略されているので、ストーリーそのものはかなり原作に忠実なのに、今ひとつ物足りないものを感じてしまいました。
他にもワトソンさんが、メアリ嬢が財宝を得て高嶺の花になるかもというショックのあまり、医者としてストリキニーネの大量摂取を勧めたりしているうっかりさんな部分も削られちゃってるし、ホームズさんが拳闘で試合をしたことのあった門番は、呉田博士が以前大學病院で難病を治療してやったことがある男に改変されています。
ホームズさんが「女性は全面的には信用できない――どんなりっぱな女性でも」と言っている台詞は、結婚して子供までいる呉田博士にかかると「由來女といふ者ほど信用にならぬ奴はないから――尤も優れた婦人は別だけれども。」と似て非なる言い回しに変わっていたり。中澤君の恋も、年長者の余裕で内心応援してるっぽいしなあ。
あ、ちなみにコカイン関連がカットされていることもあり、ラストに一人取り残されるホームズさんの物寂しさなんかも綺麗さっぱりありませんww
そもそも中澤君たちは結婚まで到達せず、ただ節度を持ったお付き合いを始めただけっぽいですし。

……なまじストーリーが忠実なだけに、時おり垣間見えるキャラクターの性格や私生活部分の魅力が、ごっそり変えられているのが目についちゃうんですよねえ……(しょぼん)

あ、そうだ。
英文と今回の翻案を見比べていて初めて気がついたんですが、どうやら三津木春影さんの場合「卷煙草」と書いているのは「 cigar(シガー)」、つまり「葉巻」のことのようですね。ずっと紙巻煙草( cigarette )のことだと思ってました。
ううむ、タバコひとつとっても奥が深い……
No.1837 (読書)



<< 2020年02月 >>
Sun Mon Tue Wed Thr Fri Sat
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

サーチ :



にほんブログ村 ハンドメイドブログ タティングレースへ
にほんブログ村

 最新の記事
 河底の寶玉 探偵奇譚呉..

 リンク
 神崎へメール
 私立杜守図書館
 蔵書リスト

 

   

 ブログ内記事検索:
 
 AND OR  




Back to Home...

[管理用] [TOP]
shiromuku(fs6)DIARY version 2.41