よしなしことを、日々徒然に……
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 指輪の選んだ婚約者
2020年01月20日(Mon) 
読書記録:
■指輪の選んだ婚約者
 https://ncode.syosetu.com/n1253cj/

辺境伯の令嬢アウローラ・エル・ラ=ポルタは、大の刺繍好きだった。社交よりも刺繍、色恋よりも刺繍。貴族でさえなければ刺繍職人になりたかったほどの彼女の夢は、神殿に入って一日神に捧げる刺繍をすること、というぐらいの傾倒ぶりであった。
そんな彼女が一人で夜会に出席していたのは、後継ぎである兄が風邪を引いたため。辺境を守る武の一門に生まれながらも身体の弱い彼は、むしろ学者肌の青年で、妖精のように可憐と称されるほどの美形であった。そんな兄とまったく似ていない平凡な容姿のアウローラは、ぽつんと壁の花になりながら、それでも彼女なりに夜会を楽しんでいた。
(流石、公爵家の夜会となると違うわね。素晴らしい刺繍のお衣装ばかり。眼福!)
行き交う人々の、衣装に施された刺繍を観察する。流行のおかげもあって、その日の夜会服の刺繍は男女ともに、見事なものばかりだったのだ。
しかしそんなふうに過ごしていた彼女へと、何か小さなものがものすごい勢いで飛んできた。
額を直撃したそれを、痛みに涙目になりながら、アウローラは確認する。
彫り込みの美しい、金の指輪。古式ゆかしいデザインのそれは、婚姻の際に夫が妻に送るものだ。
どうしてこんなものが、あんな勢いで飛んできたのだろう。誰かが痴話喧嘩でもして、魔法を使ったのだろうか。
首をかしげる彼女の腕を、誰かがいきなり強い力で掴む。
銀の髪に、紫味を帯びた青い瞳をした、凍るように冷たい美貌の持ち主が立っていた。彼は呆然としたアウローラには何も告げず、会場すべてへむけて、凛とした声で宣言する。
「指輪が選んだのはこの人だ! 私は、この人を妻にする!」
その青年は、夜会の主催者であるラエトゥス公爵家の親戚で、クラヴィス侯爵家の嫡男。王太子の近衛を務める、エリート中のエリートと噂の氷の貴公子、フェリクス・イル・レ=クラヴィスだった。
突然のことに混乱するアウローラをよそに、あれよあれよと事態は進み、彼女はラエトゥス公とクラヴィス候の前に引っ張りだされ、逃すかと言わんばかりに金細工の指輪をはめられた。そうしてフェリクスとダンスを踊らされ、屋敷へと送り届けられる。
翌朝 ―― あれは夢だったのかとまだ呆然としていたアウローラの元を訪れたフェリクスはと言うと、見事な仕立てと刺繍の近衛騎士団の制服をまとい、長い銀髪を陽の光に輝かせながら、
「……本当に、ほんっっとうに申し訳ない!!」
華麗な土下座を決めていた。
「……クラヴィス様、ご容貌とご内面が噛み合わないと、言われたことはございません?」
「知り合って三日以内にほぼ十割の確率でそう言われる」
触れれば凍てつきそうな面差しの持ち主は、ちっとも氷のようではなかった。
なんでもその容貌と立場から、昨年は86件、今年はすでにそれを上回る勢いで縁談を持ち込まれ続けていた彼は、昨夜の夜会でも幾人もの令嬢を紹介されるわ、言い寄られるわで、自棄になったのだと言う。そうして酒を飲んでいた勢いもあって、婚姻の指輪を全力で投げ、当たった女性を妻にすると宣言してしまったのだと。
もちろん彼はアウローラのことなど昨夜まで存在すら知らなかったし、アウローラもまたフェリクスの噂こそ多少は聞いていたものの、興味などまったく持っていなかった。これはもう完全な事故である。
しかし夜会で大々的に宣言してしまった以上、昨日の今日で破談にするなど、クラヴィスの家名にもアウローラの名誉にも傷をつけることとなる。それはあまりにも不実が過ぎる、と。
その外見とは裏腹に、彼はどこまでも生真面目に告げる。
いずれ円満な理由を作り、正しく解消できる日が来るまで、しばらく婚約していてくれないだろうか。
そう続ける彼へと、しばらくの風よけになってあげられるのなら ―― そして己もその間、余計な縁談に煩わされることなく、刺繍に没頭する時間を取れるのであれば、と。そう思った彼女は、慈善事業のつもりで、改めて形式的な婚約に同意したのだが……


本編完結、たまに番外編更新。書籍化・コミカライズ済、ダイジェスト化なし。
刺繍大好きのちょっと変わったご令嬢と、見た目は極上で剣の腕も魔法も一流だけれど、中身は残念……というか、堅物すぎてコミュ障気味かつ人間不信も入ってる青年騎士との、偽装婚約から始まる恋物語。
フェリクスの方はかなり早い内に恋心を自覚して努力しようとするものの、あまりにも不器用すぎてまったく伝わらないww
アウローラの方はアウローラの方で、自分が平凡だと自認しているので、アプローチを受けてもありえないと完全にスルー。結果的にすれ違いまくっている二人を、周囲がやきもきしながら見守る的な?
なおアウローラは平凡だと自認しているだけで、周りからの評価はまったく異なっています。っていうかお前が平凡なら(ry
とりあえず、フェリクスが酒の勢いでやらかした結果が、ただの偶然ではなかったというオチが、ちゃんときれいに付いていたのが好印象でした。
No.1768 (読書)


 本日のストームグラス
2020年01月20日(Mon) 


今日の結晶は密度が低めで、右側の方などシダ状になっているのがよく見えます★

No.1769 (日常)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

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