よしなしことを、日々徒然に……
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 黒井戸殺し
2018年04月29日(Sun) 
遅ればせながら三谷幸喜脚本、野村萬斎主演の翻案ドラマ「黒井戸殺し」を観ましたのです。

重ねて言いますが、観もせずいきなりディスってしまって、ほんとに申し訳なかった!

はい、普通に面白かったです。いや、すごい面白かった。

まず、オリエント急行〜に引き続く豪華キャスティングにより、キャラの見分けがつけやすくて非常に助かりました(……とか言いつつ、メイド姿を止めた女中さんと花子さんが判らなくなって、途中でちょっと混乱しましたがww)。
執事@寺脇さんの、なんかミステリー好きっぽいところと言い、医師のお姉さん@斉藤由貴のエキセントリックぶりも面白かったvv

うっかりトリックを事前に知っていたがために、最初からこいつが犯人……と思いながら観てしまいましたけれど、逆にそれが、ああこのシーン、裏ではどんな事考えてるんだろう? とか深読みしたくなり、何度も巻き戻しを繰り返す結果となりました。
特に最後の犯人と勝呂さんの語り合いは素晴らしかった……犯人は知ってましたけど結末は知らなかったので、ああ、そういうふうに持っていくのか、と。そこに至るまでの、どこまでも静かな、けれどどこか狂気すら感じさせるやりとり。
そして夜が明けるまでの間、一晩中じっとソファに座り続けている勝呂さんがもう……なんだかんだで勝呂さん、やっぱりあの人のことけっこう気に入ってたんだろうなあって。だってそうじゃなかったら、あんなに手の混んだ結末なんて用意してあげないでしょう。半年間も犯人上げられないで、搜査が低迷していると、関係者や世間の者達には噂されるんですよ? しかもその間、弁明は一切できない。そんな屈辱を被ることを、あの自尊心の塊である勝呂さんが、甘んじて受けるんですよ?
それって相当なことだと思うんです。

探偵としては、失格かもしれない。
オリエント急行〜でも、犯人を隠蔽してますし。
でも、勝呂さんがそれをやるということが、どれだけ貴重なことなのかというのが、普段の鼻持ちならない言動から伝わってくる。あの嫌味ったらしい勝呂さんが、あえてそれを行う。そこにどんな想いがあったのか。
夜が明けて、ふと窓の外を見て、一度俯いて顔を覆う勝呂さんの表情がたまらなかったです。


なお、図書館で借りてみたクリスティの原作「アクロイド殺害事件」をめくってみたところ、そちらではやっぱり、いきなり地の文「ファラーズ夫人が死んだのは、九月十六日から十七日かけての夜 ―― 」で始まってるんですね。そして犯人を名指ししてからのラストシーンはわずか数ページだし、犯人の動機にも同情する余地が一切ない模様。
それを思うとやっぱり、私にとってはこの三谷幸喜版翻案バージョンの方が好みでした。

というか、フェア・アンフェア論争に一票を投じるなら、私は原作はアンフェア・三谷版はフェア、と答えると思います。

一番最初に、この話には手記が存在していると示すこと。
この導入パターンは、たとえば「八つ墓村」とか、映像作品なら稲垣板金田一などでもお約束の手法となっているので、まったく違和感はありません。しかしこの導入部があることこそが、どんでん返しの際に大きなキーになってくるのだと思うのですよ。
なので、この導入部があることで、三谷版はフェア、と私は感じました。

ああしかし本当に、お姉さん@斉藤由貴のエキセントリックぶりというか、ちょっとしんどいぐらいハチャメチャなところが、その背景を知った上で、最後の「今日は久しぶりにカレーよ」という台詞を聞くと、そうか……もう記憶障害的な症状が……ってなってもう ・゜・(ノД`)・゜・


なんと言うか、そういう切ないやりきれなさとか、謎の復員兵の存在とか、犯人の末路とかに、どこか金田一シリーズっぽいテイストを感じました。
金田一さん、ラストでしばしば犯人の自殺(※ネタバレにつき要反転)を止められないのは、むしろあえて見逃しているからなんじゃ? と私などは思っちゃうんですよね……けして探偵として正しくはない、けれどそれが彼の人としての優しさなのではないかと。
そんな解釈をしている私からすると、もしかしてタイトルと言うか人名の「アクロイド」が、もっと自然な人名っぽく聞こえそうな「安久路」とかじゃなく、ちょい不自然な「黒井戸」になっていたのは……もしかして金田一シリーズの「車井戸はなぜ軋る」へのオマージュもあったりするのでは、なんて<車井戸〜の方は姉ではなく祖母でしたが
そんなふうに思うのは、いささか穿ち過ぎでしょうかね……?


ともあれまあ、そんなこんなで楽しく観ることができました。
食わず嫌いしていた私に、面白かったとプッシュして下さったみなさま、ありがとうございました★
No.323 (映像)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

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