奇人百景 冥土ノ道先案内
2022年12月16日(Fri)
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読書記録: ■奇人百景 冥土ノ道先案内 〜第三景 煉獄に彷徨う https://kakuyomu.jp/works/16816700428914793160
新米の学芸員 高村秋。専門は刀剣。 職場の博物館は、見学に来た霊感の強い友人が「ここの博物館…、一杯居るよ…。気分が悪くなったりしたら絶対相談して!」と告げるような場所だが、秋も同僚達も、霊には未だお目にかかった試しがない。 さあ、早く出てこい! と意気込んでみたり、出るのか出ないのかはっきりしろと思いつつ、その日も閉館後の後始末に追われていた彼女は、刀剣や甲冑が陳列されている部屋へと足を踏み入れた。例の友人はもっとも嫌な部屋だと言っていたが、彼女にとっては宝箱のようなものだ。 特に平安期の作である太刀「友成」は大のお気に入りで、この部屋に入るたび、ついつい目をやってしまうぐらいである。 いつものようにそちらを見ると、甲冑なども陳列してある硝子の向こうに、やたらと背の高い男がいた。 「誰だ!? お前っ!!」 指を突きつけてから気が付く。男が甲冑を着込んでいるということに。 「文化財を盗もうとは、いい度胸だ。このやろう」 そう思って展示スペースの鍵を見ると、何故かかかったままである。え、と思ったところで、鎧武者は硝子をすり抜け、こちら側へと出てきた。 「ゆ、幽霊……?」 念願の心霊現象を前に、秋が取った行動は ――
まだネットを始めて数年にしかならない頃にリンクさせていただいていた、個人サイト「ひすばと。」さん。 いつしかネットの海に消えてしまわれたのを、本当に残念に思っていたのですが……なんとなーく、本当になんとなく巴屋伝助さんのお名前で検索してみたら、カクヨムで再掲載されてるじゃないですか! なんか手直ししておられる間に、あちこちが気になって更新がストップしておられるようですが……ここはぜひ! サイトで公開されていた第十二景、そしてさらにその続きまで拝読させていただきたいところです!!
そんな思い入れたっぷりな現代FTというか、オカルトというか。 現代日本で学芸員をやっている成人女性(たいていの相手が初見で男と勘違いする)と、その周辺に集まる愉快な幽霊達とのわちゃわちゃ同居生活です。↑で書いた通り、連載中かつ更新停滞気味なので、みんなで応援しましょうww
主人公の秋ちゃんは、関西出身なので、普段は標準語喋ってるけど気が抜けたりツッコミの時は関西弁になります。そして短気で言葉より先に手が出るタイプなんですが。 でも、たとえ幽霊であれ、考えたり笑ったり、悩んだりしている相手は人間となんら変わらないような気がする。だから助けたって良いだろうと、どこか愚直なところがすごく良いんですよ。しかも理由が、見捨てたら後味が悪いみたいな、そういうちゃんと自分のエゴだって判っているところがまたね。 そしてこれは↑のカクヨム版ではまださほど触れられてないんですけど、同僚の寺の息子で霊感持ちな藤野さんによると、登場してる霊達はどれも只者じゃないらしいです。 平安時代の鎧武者な教方(のりかた)さんは、怨霊通り越して御霊レベルだとか、上野戦争で死んだ彰義隊隊士な冬悟も相当なもの。他にも江戸時代の元切支丹とか大正時代の詐欺師とか、普通なら近づくのも恐ろしい存在のはずなのに、これがなぜか秋ちゃんのそばにいると、普通の人間と区別がつかないような言動と見た目になっている不思議。 藤野さんは首を傾げてますが、秋ちゃんはこれが初霊体験なので、そういうものかと思いつつ、言葉の通じない怨霊や通り魔(※人間)などには容赦なく対処していたりとか。 ともあれ、 個人的に第四景から登場するお方が大好きなので、続きを心から切望する次第です。
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No.3397
(読書)
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悪役令嬢が活躍する乙女ゲーム逆転小説のざまぁされるヒロインに転生したんだけど。
2022年12月11日(Sun)
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読書記録: ■悪役令嬢が活躍する乙女ゲーム逆転小説のざまぁされるヒロインに転生したんだけど。 https://ncode.syosetu.com/n7812gt/
読み切り短編。 悪役令嬢が魅了持ちのお馬鹿ヒロインをざまぁする小説の、ヒロイン側に転生してしまったというアンチ悪役令嬢モノ。 悪役令嬢も転生者ですが、原作通り王子とヒロインをザマアしてイケメン幼馴染とくっつくつもりでいたら、ヒロインの行動が原作と異なった結果、自滅する系です。 ヒロインは別に特別なことしなかったんですけどね。せずに普通に生きていたからこその勝利という感じです。
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No.3392
(読書)
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うちの捕虜だった聖騎士様の執着が怖いんですが自業自得ですか?
2022年12月10日(Sat)
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読書記録: ■うちの捕虜だった聖騎士様の執着が怖いんですが自業自得ですか? https://www.alphapolis.co.jp/novel/84296488/696642566
異世界転生したら、貧しい農村生まれで早々に戦奴として売り飛ばされ、前線近くの砦で拷問吏の助手 ―― という名目で身の回りの世話をしていた青年。本職の拷問吏が別の砦へ出かけている間に、敵国の聖騎士が捕虜となったので、情報を聞き出せと命じられるも、元日本人の彼は人を傷つけるのも傷つけられるのも精神的に無理。しかし命令に背けば奴隷の自分などあっという間に首が飛ぶ。仕方なくエロい方向での尋問で時間を稼いでいたところ、敵国が砦に攻め込んできて逆に捕虜となってしまい……という流れのイケメン聖騎士×平凡尋問吏。R18・BL注意。ほどほどの長さで完結済。 「異世界でのおれへの評価がおかしいんだが」の秋山龍央のお話で、この方のいつもの感じ。世界観や状況がけっこうエグいのに、なんだかんだで主役まわりはどこかのほほんとしているというか、あんまり凄惨な方向にいかないのがありがたいです。 と言うか主役の前世の部長、あなた何を狙ってたんですかってぐらいに、部下を連れて行っていた風俗店のチョイスが特殊すぎてもうね…… 聖騎士の方は、聖騎士とは名ばかりの、宗教的に忌避される被差別的な容姿と能力を持って産まれ育ったがゆえに、対人関係がマイナスをぶっちぎっていて、主役に執着している自分の感情をよく理解できていないヤンデレ。 「ちがうそうじゃない」と画面のこちらで思ったのは、私だけではないはず(苦笑)
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No.3391
(読書)
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VRMMOの錯覚
2022年12月09日(Fri)
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読書記録: ■VRMMOの錯覚 https://ncode.syosetu.com/n4515cl/
神代ふみあきさんの、VRMMO斜め上系。ネタ的一話短編です。 完全初心者で、見た目絶世の美女かつ内面も女子力高い系の男子大学生が、弟に誘われて初めてVRMMOをプレイ。 初心者故に、他の人が取らないようなスキルを最初に選んでいたのがきっかけで、初日からいきなり隠しシステムクエストをクリア。その後もなんだかんだで周囲から祭り上げられ、「どうしてこうなった?」という流れに。 後書きの『何処にでもある、それっぽい話を神代風にしました』という文章を『神話風にしました』と空目しちゃいました(笑)
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No.3390
(読書)
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転生したようなので婚約破棄物をみんなで常識的に対処してもらおうとした結果〜おまけ集〜
2022年12月04日(Sun)
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読書記録: ■転生したようなので婚約破棄物をみんなで常識的に対処してもらおうとした結果〜おまけ集〜 https://ncode.syosetu.com/n1312gc/
以前読んだ悪役令嬢婚約破棄の脇役転生系、一話完結のおまけ集が公開されていたので、読んでみました。 おまけのほうがはるかに長い(ほぼ文庫一冊レベル)というのがなんともはや(苦笑) 最初の方の、悪役令嬢の兄及び悪役令嬢視点は、会話とかがかなり本編とかぶっているので、一気に読むとちょっとくどいかもしれません。でもリーリア嬢がちゃんといろいろ『判った』うえで、あの選択をしたというのが語られていて、そういう意味ではすごく面白かったです。 あと活動報告で現地人だとされていた、お花畑ヒロイン視点もあったんですけど、そっち読んだら印象ががらっと変わったのも興味深く。 つまりこれって、最初に秩序を無視したあげく、ろくに責任も果たさず独りよがりに上辺のことだけやっていた父男爵が、諸悪の根源ってことなんじゃないですかね。彼女は平民のままで不満もなかったし、そのまま暮らしていれば何ら問題も起こさず普通に、むしろしっかり地に足つけた現実主義者として生きていけてたっぽいですし。駄目王子は……うーん、これで更生できると良いんですけどね。離婚が許されないヒロインちゃんのためにも。 あと、本編の感想で『主役が自分でお爺ちゃん感覚だと言ってる割に、一人称の文章が普通のあんちゃんなのがちょっと違和感』と書いていた主役の思考ですが、そこらへんは『本編その後』の部分でちゃんと回収されたし、安易に来世でも〜的な展開にいかなかったのも好感が持てました。 なんだかんだで現代日本人の感覚が抜けず、高位貴族としてはいささか甘い主人公と、それを全力でフォロー(ただし本人には気付かせない)する、本来なら悪役令嬢となる要素を持っていた愛が激重令嬢との、良い感じの今後が期待できる終わり方だったかと。
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No.3386
(読書)
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ふれんず〜逸般人の自称普通プレイの日々
2022年12月03日(Sat)
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読書記録: ■ふれんず〜逸般人の自称普通プレイの日々 https://ncode.syosetu.com/n4236bx/
リアルの人間関係がきちんとしていないと、ゲームに参加するIDが入手できないという、SNSやリアルの人間関係が大きく影響してくる妙なVRMMO「ふれんず」。なかなかの人気を誇るそれに、何故か友人知人親兄弟から「お前はプレイするな」とハブられてしまっている男子高校生リュウジ。 彼は昔から抜け道とか裏技とか、「正規に用意されてはいるがみな知らないこと」を見つけ出すのが異様に得意だった。チートではない。規約には何も違反していないし、少々……いささか……かなり、リアルラックが高くて引きが強いぐらいだ。 ただ本人に自覚はないが、基本スタンダード以外から攻めているらしく、「邪道」と言われ続けているプレイスタイルなのである。 そんな彼へと、従姉妹が「ふれんず」のIDを譲ってくれた。誰かの紹介 ―― 特定の氏族に入るためのいわゆる子IDではなく、優待券発行によるもので、つまりは氏族の最初の一人、長となれる親IDである。 つまり多少おかしなことをやっても、親筋に迷惑をかけることはない。 そんな訳で、さっそく本体を入手。ログインした彼を、まずはチュートリアルが迎える。 「短剣で、敵を倒してスキルを手に入れよう!」 そうして目の前に現れた、小さなうさぎ。可愛い顔でふるふると震えているそれを……彼はダッシュして蹴り上げ、そして殴りつけた。 そこから始まる3日にも及ぶチュートリアルの内容に、制作陣は愕然とするしかなく ――
神代ふみあきさんの、VRMMOを斜め上……ならぬ斜め下にプレイしていく系。 終わったのか終わっていないのか微妙な感じで「未完結のまま約7年以上」の状態です。 正直、ちょっと内容判りにくかったかな……とにかく、人間関係はどこまでもつきまとってくるけど、それをゲームまで持ち込むなよという、ゲームで好き勝手する系アンチのさらにアンチ? でしょうか。でも他人に迷惑かけるのダメ絶対というスタンスは崩されてないです。
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No.3385
(読書)
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おっさん、転生して天才役者になる
2022年12月02日(Fri)
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読書記録: ■おっさん、転生して天才役者になる https://ncode.syosetu.com/n9085gr/
才能がなく華がなく、家庭を捨てて演技の世界に全てを捧げつつも、それで得られた立場は『脇役に便利な俳優』。役者としての実力はそれなりにあるが、それはあくまで『上手いだけ』。どれだけ努力しても、主役にはなりえない。 そんな文字通りうだつの上がらない役者だった山下太郎(47歳)は、珍しく演技を褒められた仕事の帰り ―― 痴話喧嘩に巻き込まれて腹を刺されてしまう。 意識が薄れていく中で思ったのは、『刺される、とはこんな感覚なのか。次の芝居に活かせそうだ』ということ。 まるで本物の役者のようだ。そう思いながら、彼は生命を落とした。 そうして、どれほどの時間が過ぎただろう。見ることも、聞くこともできず、身体を動かすこともできない魂だけの存在となった彼は、いつしか温かな場所に浮かんでいた。 「早く生まれてきてね」 はっきりとは聞き取れないが、女性の声がする。どうやら彼は生まれ変わったらしい。 『私』という連続性を保った魂は、永遠にも等しい時間を魂の牢獄ですごし、変化していた。その魂は山下太郎と縁を持つが、既に山下太郎そのものではなくなっている。しかし新しい親の子どもとして、本来誕生するはずのまっさらな魂でもない。 呼びかけてくる声には、親としての無償の愛情が感じられる。 ならば演じてやろうと、その存在は胎児ながらに考えた。無垢であり、少しずつ成長していく魂を演技するのだ。それが牢獄から救い出してくれた、親へのお礼になるだろうと。 そうして山下マキという女の子として生まれ変わった元役者は、時に夜泣きをしたり、抱っこされても泣き続けたりと、子供特有のある種理不尽な行動を織り交ぜつつも、早熟で聡明な子どもを演じ始めた。 どうやら母は男に騙されたシングルマザーらしく、毎日遅くまで働き詰めで、いつも疲れた顔をしている。ならばなるべく負担を減らしてあげるべきだろう。 率先して家事をこなし、親の言うことは良く聞く理想的な子ども。そして時折あえてわがままを言って、申し訳程度の迷惑をかける、そんな演技を続ける。 その彼女が、再び役者としての道を歩むきっかけとなったのは、幼稚園でのお遊戯会であった。どうせ忙しい母は見に来られないだろうからと、背景で木の役をしていたのだが ―― その卓越した演技力を、たまたま会場を訪れていた芸能事務所の社員に見出されたのだ。 後に生きる伝説と呼ばれる大女優、山下マキ。彼女によって、多くの人物がその人生を変えられてゆくこととなる ――
同世界・ほぼ時間差なしのTS転生もの。コミカライズ・完結済。 後書きいわく『ガラスの仮面』的なお話が書きたかったとのことで、まさに「マキ、恐ろしい子っ(白目)」状態が続きますww 群像劇の感じが強く、全体の半分ぐらいは他視点で書かれています。まあ演技ジャンルですから、そのほうが効果的でしょうね。そして話もさくさく進みます。時系列があっちこっち行き来するのがちょっと難点ですけど、ちゃんと『将来歳をとったらこんなおばあちゃんになりたいなぁ』という年齢まで大女優であり続けると、さっさと明かされるのはある意味安心して読んでいられます。 転生後の演技力は完全にチート級。一度肉体のない魂の状態を経験したことと、生まれ変わった身体のスペックが高かったのが相まって、どんな役にでも成り切れ、動物すらも自在に巻き込むレベルです。 あまりにその演技力が高すぎて、生まれた時から『山下マキ』を演じていた結果、終盤には親を含めてちょっとゴタゴタしたりもするものの、それもあまり引っ張らずに終わってくれて、読後感は悪くなかったです。 あ、途中掲示板描写が何度か挟まるので、苦手な方は要注意です。 あと作中作にロリコンネタ(教師×小学生)のドラマがあるので、そちらもアウトな方はやめておいたほうが良いかと。
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No.3384
(読書)
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ミスリル令嬢と笑わない魔法使い
2022年11月30日(Wed)
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読書記録: ■ミスリル令嬢と笑わない魔法使い https://ncode.syosetu.com/n5681hh/
華やかな美女を引き連れたハロルド=イルンストン伯爵令息は、街中の公衆の面前で、堂々と言い放った。 「お前のように気が強くて馬鹿で女らしさが欠片もないような奴と結婚するなんて絶対に嫌だ。それに俺には愛するドロテアがいる。だからお前との婚約は破棄する」 仲が良かった親同士の口約束により、ミスリルことミスタリア=リルファーデ子爵令嬢は、幼い頃から彼と婚約していた。数年前に領地を襲った不作と流行病のため、イルンストン伯爵家からはかなりの援助を受けているが、それでも生活は困窮しているし、両親もその時に命を落としている。いまここで婚約を破棄され、つまり援助を打ち切られると、経済的にはかなり苦しいこととなるだろう。 「分かりました。でも婚約破棄に関しては叔父様の許可を得てください。わたしだけではどうしようもないので」 「ああ、分かっている。今日は前もって伝えに来ただけだ。後日改めて書類は送る」 清々したというように去っていく元婚約者を見送りながら、さて就職先を探さねばとミスリルは考えていた。 正直に言えば、婚約破棄自体はどうでも良かった。ショックではあるが、恋愛的な意味で好きになるには、これまでの相手の態度が悪すぎた。他人に書かせたのが丸分かりの、形ばかりの手紙の他は、婚約者としての義務など何ひとつ果たしてくれなかったのだから。 「よし! 働こう!」 生まれた時から別の世界で生まれ育った記憶を持っていたミスリルは、一般的な貴族令嬢が持つだろう、働くことに対する忌避感などない。幼い頃は領民に混じって、農作業や狩りなどもやったし、使用人を多く雇う余裕がない現在では、家の中の掃除などもミスリルが手伝っている。 これまでは元婚約者に「恥ずかしいからやめてくれ」と言われていたが、もう気にする必要もない。 そうして職業斡旋所に向かった彼女は、宮廷魔法士団の清掃係という募集に飛びついた。住み込みで三食つきで、おまけに給金が高い! これを逃す手はなかった。 掃除はかなりの力仕事ではあるが、身体強化魔法を使えるミスリルにとって、重いものを運ぶなどは得意中の得意である。 来年には弟が十六歳となり成人する。少なくともそれまでの間、家族を養うために頑張ろう。 そうして彼女は、あまりの汚さに『魔窟』と名高い宮廷魔法士団『紫水』の清掃係として、無事採用された。 「折れない欠けないへこまない、打たれ強さは世界一! このミスリルに何でもお任せください!」 そんな決め台詞とともに、彼女は『魔窟』の攻略にかかるのであった ――
異世界物で転生女主人公。書籍化・完結済でダイジェスト化なし。 「寝取られ令嬢は英雄を愛でることにした」や「悪役の王女に転生したけど、隠しキャラが隠れてない」の早瀬黒絵さん作品です。 婚約破棄からのシンデレラ・ストーリーはテンプレですが、なんかこう……ミスリルちゃんのメンタルがチタンもといミスリルすぎて、読んでいて不安が一切ないというか(笑) 嫌がらせで虫を送りつけられようが、自室のドアを開かなくされようが、水ぶっかけられようが、本人まったく気にしてないんですもん。「こんなのに負けない!」っていうんじゃなくて、「あー、なんか頑張ってるなあ」という感じで、嫌がらせということは理解していても「ま、実害ないし」とスルー状態で、逆に相手が哀れというか。 そして改めて親しくなったお相手の方にはかなり深刻な秘密があって、当人はすごーーーくそれを気に病んでいるのですけれど、読者視線で見ていると「いや早く打ち明けたほうが良いって」「彼女なら絶対気にしないよ」「むしろたぶん歓声上げて喜ぶww」というもどかしさがですね。
ちょっと気になったのは、ミスリルちゃんが次男とはいえ高位貴族の嫁に入るには、さすがに天真爛漫がすぎるかなあというあたり。なんというかお花畑ヒロインに近い部分を少々感じてしまって、駄目な方は駄目かも、と。いや本人は、いちおう最低限のマナーは把握しているし、現在進行形で努力して勉強しているので、電波系ヒドインという訳ではないんですけど。 あとこれ、転生要素いったか? という点。 まあ確かにそのおかげで、彼女は貴族令嬢でも働くことの大変さ大事さを知っていたし、若くして両親を亡くしても、弟を支えて立ち続けていられたのでしょうが……でもそれってミスリルちゃんがミスリルちゃんってだけで充分説得力出せたんじゃないかなあって。 唐突に現れる、前世知識による便利道具も、いまいち活用されきれてない感がちらりほらり。 なお個人的には、主役の親友アリエラ嬢が幸せになれたかどうかが気になりますね……年齢と髪と目の色からすると、紫水のもう一人の副士団長かもとか思うんですが。このかた、結婚してるかどうかの言及、あったっけ……?
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No.3380
(読書)
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悲劇のヒロインぶる妹のせいで婚約破棄したのですが、何故か正義感の強い王太子に絡まれるようになりました
2022年11月26日(Sat)
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読書記録: ■【WEB版】悲劇のヒロインぶる妹のせいで婚約破棄したのですが、何故か正義感の強い王太子に絡まれるようになりました https://ncode.syosetu.com/n3694gt/
妹ばかりを溺愛する両親に、悲劇のヒロインぶる妹、妹の言葉を信じて婚約破棄を突きつけてきた公爵家の令息。そんななにもかもに腹を立てることさえ面倒になった伯爵令嬢レイアは、その日も聖女としての務めを果たすべく、森で結界を張っていた。 エルシャイド王国における聖女とは、魔法に長けた女性が教会により任命され、国のため働く存在だ。その定員は3名。欠員が出た際、妹とレイアは同時に試験を受けたが、選ばれたのはレイアの方だった。それも妹には気に入らなかったようで、彼女は事あるごとにレイアが自分を虐めている、聖女としての己を鼻にかけ、優秀さをひけらかしているなどと吹聴しているらしいのだ。 信頼関係が築けぬ相手と婚姻しても良いことなどないし、公爵家との縁談は妹がそのまま引き継ぐだろう。もうどうでもいい。 そんなことを考えつつ、魔物の多くいる森で祈りを捧げようとしたレイアだったが……そんな彼女に、不意に声をかける存在があった。 「君が妹を虐めているという、不届きな聖女なのかい?」 その声の持ち主は、年若き王太子、エリック・エルシャイドだった。 なんでも友人であるフィリップ、つまりレイアの元婚約者から話を聞いて、そんな人格の人間に聖女は任せられないと考えたらしい。 「何と言われようと、私はジルを貶めるようなことを口にしたことはありません。それに私の人間性を全くご存知ないにも関わらず、一方的に虐めたと決めつけるのは失礼だと思いますが」 つい棘のある言葉で言い返してしまったのは、それでもやはりストレスが溜まっていたからか。これでは、王太子殿下に喧嘩を売ったも同然。 自分が妹を虐めた聖女だという話は、王室の中でも認知されることになるだろう。聖女を辞めることになるかもしれない。そう思った彼女だったが、王太子の反応は ――
転生要素なしの現地主人公。毒家族に嫌気が差している真面目で有能な聖女様と、正義感が強すぎて日に何度も暗殺されかける王太子殿下の、仕事から始まるもだもだな関係。書籍化、コミカライズ、完結済。ダイジェスト化なし。 両親と元婚約者もアレですが、妹が気持ち悪いです。自分の嘘を自分で信じ込んで、辻褄が合わなくなると「私そんなこと言ってません! お姉さま、そんなに私のことが……」と相手を悪者に仕立て上げるタイプ。 あ、こう書いて判った。この妹、うちの父と同じタイプなんだわ……^^;; 護衛二人、ちょっと和を思わせる剣術の使い手ヨハンと、中国的な雰囲気を感じるリンシャに関しても、もうちょっとエピソードが欲しかったなあと思ったり。
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No.3375
(読書)
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ようこそ『追放者ギルド』へ 〜無能なSランクパーティがどんどん有能な冒険者を追放するので、最弱を集めて最強ギルドを創ります〜
2022年11月24日(Thr)
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読書記録: ■ようこそ『追放者ギルド』へ 〜無能なSランクパーティがどんどん有能な冒険者を追放するので、最弱を集めて最強ギルドを創ります〜 第3章 https://ncode.syosetu.com/n1105gk/
1年ほど前、ステータスを数値化するアイテムが売り出されたことで、高ランク冒険者のパーティを中心に、ステータスが低い仲間を追放するのが流行となっている昨今。 ギルドマスター養成学校を卒業したばかりの青年アイゼン・テスラーは、冒険者ギルドの採用面接に、十回目連続で不採用となっていた。 理由は彼の信念、『冒険者の価値は、数値(ステータス)では決まらない』というものだ。 これを口にすると、試験官達は決まって怪訝な顔をし、そうしてアイゼンを頭がおかしいと判断して、不採用を言い渡すのだ。 しかしアイゼンには昔から、不思議な能力があった。それは『隠しスキルを見抜くスキル』とでも言うべきか。その人物の潜在的な能力(スキル)を鑑定することができるもので、ステータスが低いものほど、この隠しスキルは強かったり特殊だったりする傾向にあるのだ。 無能と呼ばれ追放されるような冒険者達も、彼の目で見ればその多くが有用なスキルを持っており、ただそれを自覚していなかったり、うまく活用できていないだけ。 そして今日も、Sランクパーティーから追放されようとする少女を目の当たりにした彼は、思わずそこへ割って入っていた。 「その子を追放するんですか? じゃあウチが貰いますね」 どこのギルドにも採用されないのなら、いっそ自分で作ってしまおう。追放された者達を集め、その才能をいかんなく発揮できる環境を提供する、ホワイトなギルドを。 それが後に世へその名を轟かせる、『追放者ギルド』の始まりで ――
コミカライズ済、ダイジェスト化なし。ただし中途半端なところで連載が止まってます。 昨今のステータス表示系、追放系に一石を投じる感じではありますが、要は隠しステータスを見ている訳ですから、結局はステータスで判断しているんですよね。ただ途中、隠しスキルさえ持たない入団希望者が現れたあたりから、どう言う展開にするのかなあというワクワク感が。 展開といえば、コミカライズとはだいぶ異なるっぽいですね。問題となるステータスを数値化するアイテムの開発者とか、少なくとも第三章まででは全く出てきてませんし。 あと意外なキャラが意外な形で再登場してまして……なんかもうね。良いよねこう言うのもと思いました。 単純なザマアで消えていくのではなく、ちゃんと己を見つめ直し、できることを精一杯やって、でもやってきたことを許されるとは思わず、そして……と。 感想欄でも賛否両論だったようですけど、私はありだなあと思いました。
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No.3372
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。
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