よしなしことを、日々徒然に……
※ 2017年以前の記事は こちら になります ※



 黒ヒゲと七番目の妻 他二篇
2023年05月26日(Fri) 
読書記録:
■黒ヒゲと七番目の妻
 https://ncode.syosetu.com/n4386id/

超絶前向きでくじけない新妻と、人間不信だけど中身はすっごくいい人な中年男の、ハッピーエンドな青ひげ物語(というか、青ひげの結末ってどんなだったっけ/苦笑)
さほどこじれずさらさらっと終わるのでノンストレスです。
完結してから読もうと思っていた「石投げ令嬢〜」のスピンオフだと後書きに書かれていましたが、まったく問題なく読めました。

■婚約破棄?真実の愛?そんなものはいりません。魅了の魔力を制御するため魔道士長は男爵令嬢を研究する【連載版】
 https://ncode.syosetu.com/n2414hw/

何故か周囲の男子生徒が暴走し、決闘やら婚約破棄騒動やらを起こしてしまう男爵令嬢と、その無意識に発動している魅了の力を制御しようとする、魔法オタクな変人魔道士長のドタバタ騒動。
同作者さんのお話で完結済。
こちらも女性が強いです。幼い頃から男連中が暴走しまくるせいで、女性陣からは嫌われまくり。それでも頑張ってる彼女が、魔道士長と会ったあたりからだんだんざっくりした性格になって、ツッコミも切れていくのが楽しいww
あと成り上がり男爵な父親が普通に良い人で、ほっこりしました。

■追放された聖女の明るい復讐譚「声が甲高くなる呪いをかけてやる」
 https://ncode.syosetu.com/n3704hw/

こちらも同作者さんのお話で完結済。
追放された聖女が、ささやかな呪いを残して隣国へ。
そちらはそちらで新たな出会いもあり幸せに。むしろメインは、元の国でその『ささやかな呪い』に価値を見出した王妃様や、ささやかな呪いしか作れない魔女、彼女に救いを求めてやってくる悩み多き女性達のあれやこれやです。
うーーーーん、この作者さん、夫婦生活でなんかあるんだろうか^^;; ってぐらいに、旦那や恋人に不満を持つ女性がどんどん出てくるので、精神的にあれな時はちょっと辛いかも。まあ一応全部、ハッピーエンドなので、そういう意味では安心です。
No.3560 (読書)


 転生した元悪役令嬢、村娘生活を満喫していたはずが白豚王子に嫁ぐことになりました
2023年05月22日(Mon) 
読書記録:
■転生した元悪役令嬢、村娘生活を満喫していたはずが白豚王子に嫁ぐことになりました
 https://kakuyomu.jp/works/16816700427430153955

かつては公爵令嬢で、第一王子と婚約していたという、前世の記憶を持つ少女レイチェル。
しかしその時は愛した相手に自分ではない運命の人がいて、悪役として二人の背中を押して去ることしかできなかった。運悪く事故に巻き込まれ、そのまま命を落としたのだが……何故か彼女はそんな前世の記憶を取り戻してしまったのだ。
二歳にして突然流暢に喋り出した娘を、両親が見捨てずに育ててくれたのは感謝してもしきれない。のどかな村でおっとりとした両親や村人達に囲まれた彼女は、そのまま新しい生活をのびのびと楽しみ、十八になる頃には、村で唯一の飯屋兼酒場で、看板娘として働いていた。
面白がって誰も注意しなかったため、言葉遣いや立ち振る舞いに平民らしからぬ部分は残っている。しかし優しい人達に囲まれ、自分で稼ぎ、自分で作ったご飯を食べる暮らしを彼女は満喫していたのだ。
そんな楽しい日々を一変させたのは、唐突に現れた蛇のような男であった
一目で貴族だと判る豪奢な格好をした男は、レイチェルを舐め回すように見分して言ったのだ。
「――確かに瓜二つだな。それに、身のこなしには淑女のような気品もある。よかろう、ついてこい。今日からお前は私の娘“クリスティーナ”だ。いいな?」と。
そうして両親を人質に取った男、マルセル伯爵は、レイチェルへと命令した。
自分の娘の代わりに、この国の第二王子と結婚式を上げ、純潔を捧げてこいと。
なんでも望まぬ結婚を嫌がった娘『クリスティーナ』が、恋仲の騎士と駆け落ちを試み、連れ戻しこそしたもののすでに一線を越えていたのだと言う。初夜の際にそれが露呈すれば、家の恥どころでは済まされない。そこで瓜二つの容姿を持ち、平民らしからぬレイチェルへと目をつけたそうだ。
一晩を過ごしさえすれば、それで本物と入れ替えて戻らせてやる。とにかく純潔を捧げてこい。
身勝手かつ下衆も極まれリの要求だったが、両親 ―― 特に病で定期的に薬を飲まねばならぬ母親を人質にされては、どうすることもできなかった。
どうやら一度死んだことで、、レイチェルの肝は据わってしまったらしい。もう恋はしないと決めていたこともあり、前世であればそれこそ自害してでも拒んだだろう行為も、なんとか受け入れることができた。
そうして当の結婚相手について話を聞いてみると、これがなかなかに問題のある人物だそうで。
あだ名は“白豚王子”。かなり太っており、重度の吃音持ち。そのうえ気性が荒く、すぐに怒っては物を投げつける癖があるらしい。おかげで誰も婚姻相手がおらず、野心を持つマルセル伯爵のもとまで結婚の打診が来たという次第らしい。
太っているのと吃音はしょうがないにしても、乱暴なのは頂けない。皆の手本となるべき王子としてあるまじき行動だ。
前世の記憶からそんなことを思いつつも、覚悟を決めて式に望んだ彼女だったが……


無石の宝玉治癒師〜と同作者さん。文庫100Pぐらいで完結。
魔法ありの異世界 → 魔法なしの異世界に転生した、元悪役令嬢的な立ち位置の公爵令嬢。ただし性根はまっとうが、村娘として地に足つけて生きていたら、その容貌と村娘らしからぬ言動に目をつけられて、悪徳貴族に利用される結果となったけれど……というパターン。
周りがおおらかすぎて、両親どころか村の住人達まで「出たよ、それもまた“前世”とやらかぁ!?」「ええ! その通りでしてよ!」なんて会話をしているのがなんか斬新ですww
そして身代わりとして差し出された先で、問題児とうまい感じに関係を構築、周囲の信頼も勝ち得てめでたしめでたし……なお約束。
今は村娘でも、前世で王太子妃として教育を受けてきているので、多少の文化は異なってもうまくやっていけるんじゃないですかね。それに今回のお相手は、継承権のない第二王子ですし。

……ただ、正直ちょっと、本物クリスティーナとその恋人にもにょりました。
望まない結婚を拒んで駆け落ちするのは良いんですが、失敗して連れ戻されて、赤の他人に迷惑かけまくった挙げ句、当人たちはお咎めなしどころかむしろこれでもかってほど優遇されてる感じが恵まれすぎじゃね? と。
終わり良ければ全て良しとは言いますけれど、最後の最後でやっとレイチェルを助けようとした情状酌量を加味しても、駆け落ちが成功した扱いにしての、二人揃って平民落ちぐらいが妥当だったんじゃないかなあとか思っちゃう、ザマアものを読みすぎて感覚が麻痺気味かもしれない私だったのでした(苦笑)
No.3557 (読書)


 花の聖女と胡蝶の騎士 〜ないない尽くしの令嬢ですが、実は奇跡を起こす青薔薇の聖女だったようです〜
2023年05月17日(Wed) 
読書記録:
■花の聖女と胡蝶の騎士 〜ないない尽くしの令嬢ですが、実は奇跡を起こす青薔薇の聖女だったようです〜
 https://ncode.syosetu.com/n5935hk/

貴族令嬢のほとんどが、花の聖女となり、様々な祝福の力を持つブルームガルテン王国。
ソワレ侯爵家はその中でも至高とされ、生涯に一度しかその祝福を使うことがない、紫薔薇の聖女を排出する家として名高かった。
令嬢達は16歳の誕生日に神殿で儀式を受ける。ソワレ家の長女であるサティーナは、3年前の儀式で、期待通り紫薔薇の聖女となっていた。そんな彼女は美貌も品格も教養も兼ね備えた完璧な淑女と讃えられ ―― そして妹であるリリアーナは、【ないない尽くしの令嬢】と呼ばれていた。美貌も品格も教養もなく、教育など受けさせるだけ無駄。立派な姉の機嫌を損ねぬよう、決して物音を立てず、決して部屋から出ぬよう言い聞かされて育った彼女も、ついに16歳を迎えた。
もしも聖女に選ばれれば、両親や姉も少しは自分を認めてくれるかもしれない。そう願って儀式を受けたリリアーナだったが、彼女が咲かせた花は、黒い薔薇だった。
黒薔薇の花言葉は、恨み、憎しみ、あなたはあくまで私のもの。その祝福は、相手を意のままに操る邪悪な力。故に黒薔薇の聖女は時に黒薔薇の魔女と呼ばれ、問答無用で辺境の地にある茨の城へ送られることとなっていた。
絶望に打ちひしがれる彼女へと、カレンデュラの聖女ルアネが手を差し伸べてくれた。追放のための馬車が用意されるまでのわずかな間だったが、彼女はリリアーナに優しい言葉をかけてくれ、そうしてひとつの提案を持ちかけてきた。
黒薔薇の聖女は、茨の砦へ行く際、一人だけ同行者を選ぶことができる。その同行者として、推薦したい人物がいるのだと。そもそも同行してくれる人物に心当たりなどないリリアーナに、断る理由もなく。
そうして告げられた相手は、近衛騎士団第二小隊副隊長ハリー・エドランド。今は隣町で演習中のため、道中で合流することになるという。
その名は、家から出たことのない彼女の耳にも、使用人達の噂話で届いていた。大柄な体格に固くて癖のある髪のせいで、【毛虫の騎士】などと呼ばれている人物である。
美しい容姿と剣舞で有名な流浪の民【胡蝶一族】の美姫と宰相であるエドランド侯爵の末息子なのだが、容姿端麗な両親とは似ても似つかぬ、醜い容姿をしているらしい。しかし努力の才能に恵まれた彼は、貴族男性に必須な剣や経営はもちろんのこと、料理や掃除など家事全般、さらに女性の必須教養である刺繍なども会得しているとも聞く。
はたしてそんな人物と打ち解けることができるのかと心配していた彼女だったが、隣町についてすぐ、道端でうずくまる近衛騎士団の制服を着た人物を見つけて ――


虐待されてて自己評価底辺聖女と、家族からは溺愛されつつも周囲からは容姿で差別されまくってきたハイスペック騎士の、追放から始まるもだもだ恋愛。ザマアあり。書籍化、完結済。
えー……書籍版の表紙絵でがっつりネタバレされてますが、ハリーさんはかなり初期の方で細マッチョの絶世イケメンになります。正直「えー」と思いもしましたけど、イケメン化の理由が聖女の力ではなかったことと、イケメン化後もリリアーナは、「元のほうが良かったかも」とか思っているので、まあそれなら……という感じ。
あと「追放」と言われて、本人も周囲もひどい環境を想像していたけれど、蓋を開けてみたらけっこう快適な暮らしになっています。王家が聖女を保護する責務を持っているので、たとえ黒薔薇であろうとも、住む場所と生活費は支給している……のかな?
むしろ王家の方の認識としてはこれ、黒薔薇の聖女には辺境の守りを固める任を与えてる的な? とも思ったり。それが長い年月の間にいろいろ変容して、現場から遠い王都の人間も邪推して……みたいな流れなのではないかと。
そんな訳で追放先の町では、むしろ黒薔薇の聖女に対する印象も良くって、そんな人々と接するうちにリリアーナの自己評価も徐々に改善されていき、と。
そんな彼女が元家族へと最終的に向ける感情が、過剰すぎなくて、そのあたりは良かったなあと思いました。
惜しむらくはハリーの家族が、ハリーの変化についてどうこう言うシーンがなかったのが残念です。書籍版では追加されてるのかな?
……って、この記事UPするために念のため確認に行ったら、いつの間にかSSが追加されてるww
そっかあ、そういう理由で体質のことを黙っていたんですね……でももうちょっと、リリアーナに対して感謝する場面とか読んでみたかったです。

そして紫薔薇の姉は、いったいなんでまたあんなに妹を疎んじていたのやら……?
No.3552 (読書)


 詰め物(じゃがバター)
2023年05月13日(Sat) 
読書記録:
■詰め物(じゃがバター)
 https://kakuyomu.jp/works/16816700428780322647

本編あとがきで初めて存在を知りました。
書籍化・コミカライズ済長編「転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。」の、本文に入れづらい季節ものなどのSSとのこと。
……タイトルに転移したら〜の文字入れとこうよ、作者さま^^;;
現在5話ほどで、3月にあったフォロワー用のメール配信SSも含まれています。
でも一番嬉しかったのは、最初のレッツェ視点! 森の奥に調査に行った直後らへんの、まだ打ち解けきってない頃になに考えてたかのレッツェ!!
いやもうほんと兄貴っすww 自分は平凡だと信じて、地に足つけて身の程をわきまえる、でも実際はクッソ有能で面倒見の良いおっさん最高ですww

……本編の方は553話目現在、神様たちの中で一押しなのに、パタッと登場しなくなって不穏だったヴァンさんが再登場&実はそこまで不穏でもなかった……ような、よく考えるとやっぱり洒落にならないような現状が発覚。
とりあえず消滅とか記憶改竄でジーンのこと忘れてるとか、光の玉みたいに存在自体が入れ替わっちゃってるとか、そんなことにはなってなくて本当に良かった……
No.3545 (読書)


 【読み切り版】婚約破棄された先で助けたお爺さんが、実はエルフの国の王子様で死ぬほど溺愛される
2023年05月11日(Thr) 
読書記録:
■【読み切り版】婚約破棄された先で助けたお爺さんが、実はエルフの国の王子様で死ぬほど溺愛される
 https://ncode.syosetu.com/n6829gs/

タイトルがすべてを物語っている系、読み切り。
現地主人公で、「種の保護」という謎スキルのせいで婚約破棄 → 家族や使用人からも冷たい目で見られて領地にほぼ幽閉状態だった少女が、たまたま助けた老人が実は……的な。
そして役立たずと思われていた謎スキルも、実は……というパターン。
連載版もあるようですが、途中でエタっているので、ひとまずこれだけ。
No.3543 (読書)


 おひとり様には慣れましたので。
2023年05月07日(Sun) 
読書記録:
■おひとり様には慣れましたので。
 https://www.alphapolis.co.jp/novel/903921909/38597568

伯爵令嬢ニコル・ポートレットには婚約者がいる。
伯爵家以上の高位貴族となると、学園入学前には婚約が整っているのが普通だ。そこに不満はない。むしろ婚約者がいてくれないと、体面的にはとても困る。
しかしニコルの婚約者であるケイオスは、美しく聡明な王女キャロラインに心酔していた。学園では生徒会に所属して会長であるキャロラインを支え、将来は騎士となって王女を守ると公言している。
社交の場でも彼はニコルを放置してキャロラインのそばに侍っているし、最近は手紙の返事も来ない。お茶の時間はすっぽかされるし、共に出かければ「この髪飾り、キャロライン様に似合いそうだ」「この本、前にキャロライン様が読んでいた」と王女の話題ばかり。さすがにたまりかねて抗議すると、「わざわざ来てやったのにそれぐらいで怒るな。本当はキャロライン様のために剣の修行をしたかったのに」と帰ってしまう始末。
いつも壁の花である彼女を、周囲の者達は嘲笑していたが、ケイオスはそんなことにも気づいていない。
そんな彼女は、ある日ふと気がついた。
「別に、ひとりで行動しても良いんだわ」
向こうが好きにしているのだから、こちらも好きにすれば良い。今から婚約を解消されれば、もう良縁は望めないだろうから、できれば白い結婚をしてもらえるとありがたいが。そうしてケイオスはキャロラインと幸せになれば良いのだ。自分は二人の邪魔をする気などこれっぽっちもない。
そう思うと心が軽くなった。気が合わない相手に別の女性の話をされながら過ごすよりも、ひとりで買い物を楽しみ、おしゃれなカフェで美味しいものを食べるほうがずっと楽しい。
そうやってお一人様の気楽さを満喫し始めた彼女だったが、なにやら周囲の目が変わってきて……


転生・乙ゲー要素なしの現地主人公。2万字ちょっとでさくっと完結。
どうも感想欄で婚約者がボコボコに叩かれてるみたいですが……正直言って、私も便乗したいぐらいの阿呆でした。王女様に恋慕していて婚約に不服があるという、自覚しての放置ならばまだしも、婚約者はもう将来結婚が決まってるから構わなくて良い。女の子なんてどう扱っていいか判らないし、気心の知れた幼馴染の王女と楽しくワイワイやってる方が楽しーーZE★ という、おこちゃま思考。
そして人伝に白い結婚希望を聞かされた、最初の感想が「え? 出来ないの?」とか、いくら年齢が年齢と言ってもないわー
主役はもう完全に婚約者への関心を失っているのに、婚約者の方は今さらながら必死に関係改善を求めてきたり、独占欲発揮するのとかがさらにもうね。しかもよく読んだら、自分の過去の行状について、きちんとした説明も謝罪もしていないし。これで許して受け入れてくれってのはなあ。
でもこれ、最終的には主役が折れないと、「若い頃のちょっとした行き違いをいつまでも根に持つ、冷たい妻」とか言われて、また非難されるようになるんじゃないかと想像すると、留学先で新たな良縁を見つけるか手に職つけて独り立ちして、さっさと婚約解消してしまえーというのが正直なところでした。
婚約者の方だって、若気の至りの結果で冷え切った政略結婚に人生を費やすよりも、手痛いけれど貴重な経験だったとすっぱりあきらめて、新しい縁を探したほうが建設的だと思うんですよね……
No.3537 (読書)


 八つ裂きループ令嬢は累計人生百年目に、初めての恋をした。
2023年05月02日(Tue) 
読書記録:
■八つ裂きループ令嬢は累計人生百年目に、初めての恋をした。
 https://ncode.syosetu.com/n0147gi/

幼い頃、父によって『女狂いの遊び人』と呼ばれる子爵家の中年男と婚約させられた男爵令嬢リディアは、二十歳となって迎えた独身最後の日を、ぼんやりと過ごしていた。
自分は明日、妻という名の都合の良い玩具となりに行く。けして幸せな未来とは言えない。
けれどそんなことはどうでもいい。だってそんな未来は来ないのだから。
リディアはすでに、同じ経験を五回繰り返していた。
女狂いの遊び人は、顔だけは良いらしく。まるで子供が新しい玩具を欲しがるように、次から次へと女を手に入れは捨てていくという。結果、泣いた女は数知れず、その歪んだ恋心やら嫉妬心やらが『悪魔』を生み出してしまうのだ。
そうしてその悪魔は、婚姻直前のリディアを狙ってくる。
一度目の人生では、何も知らないまま庭へと散策に出て、そこで悪魔に襲われた。最後に見た景色は、真っ赤に染まった中庭と、巻き込まれて八つ裂きにされた庭師の姿だった気がする。
そんな人生に神が憐れみでもくれたのか。記憶を引き継いだまま赤子に戻った彼女は、混乱しながらも二度目の人生を開始し、なんとか死を回避しようとする。しかしあと一歩のところでまた、周囲を巻き込みながら八つ裂きにされてしまう。そうして三度目も、四度目も。
そんなことを繰り返して、もう五回目の人生。
ついに心が折れた。
どれだけ足掻いたところで、結果は決まっている。
しかも仮に悪魔を倒せたところで、待っている未来はろくでもない男の玩具だ。そう思えば頑張る気力も失せた。
何も知らなかった一回目の人生をなぞるように、淡々と日々を過ごし、そして最後の日の今日、庭へと出た。
そういえば、最初の死の時は衝撃が大きすぎて前後の記憶が曖昧だったが、死ぬ寸前に庭師から、何かを言われたような気がする。なにか、とてもくすぐったいようなことを。
そう思いながら件の庭師の青年を見つけると、彼は静かな会釈をよこして立ち上がり ――


氷魔法のアイス屋さん〜の天ノ瀬さんの作品。
同世界内での巻戻りループ系です。死亡フラグを折ろうと必死にあがくもことごとく失敗。あきらめてしまった令嬢と……?
四回分の人生の回想を読んでいるうちに、だんだんニヤニヤしてこれるやつでした。
っていうか最後ww 植木バサミってwww
改行多めで文庫換算60ページぐらいの読切短編ですが、長編に焼き直して書籍化済とのこと。
コメント返しにあった裏設定(ネタバレにつき要反転:庭師は光魔法を極めるために、四度目の人生を長く生きて、神に祈りながら自刃した)も、たぶん書籍では入ってるんでしょうね。
ただまあ、この短さで完成しているし、この話は挿絵ないのがキモともいえるので、この短編版でも充分楽しめると思います。
No.3532 (読書)


 無石の宝玉治癒師〜後宮の病は私にお任せください〜
2023年04月30日(Sun) 
読書記録:
■無石の宝玉治癒師〜後宮の病は私にお任せください〜
 https://kakuyomu.jp/works/16817330654089795558

嘉巽国の人間は、額に“額玉”と呼ばれる宝石を持って生まれるのが通常である。皇族にだけ受け継がれる金剛石を筆頭に、硬度が高く大きく、鮮やかであればあるほど位が高いとされており、顔の美醜よりも額玉の美しさが重要視されるのがこの国の価値観である。
そんな国で鋼玉を持つ父と紫水晶を持つ母の間に産まれた紫遥は、額玉を持たない“石無し”であった。豪商の父は娘を後宮の妃嬪にしようと目論んでいたらしく、ひどく落胆していたものだ。なにしろこの国で額玉が無いということは、妃嬪どころか嫁の貰い手自体がない、最底辺の人間と見なされるのだから。
それでも両親から疎まれることはなく、好きな勉学を好きなだけさせてもらい、彼女は科挙にも並ぶと称される最難関“宝玉治癒師”の試験に、わずか十七歳で合格した。
そうして皇帝の妃嬪が集う後宮で、数少ない女宝玉治癒師として働き始める。
宦官である他の治癒士などからは、その有能さと女であることを妬まれ、『玉無し』などと揶揄されることもあるが、彼女はまったく気にしていなかった。
むしろ官服を着たその姿は、整った顔立ちとすらりとした長身により、さながら男装の麗人のごとく。妃嬪達からは『無石の君子』と呼ばれて黄色い声を浴び、次から次へと往診を頼まれる日々だ。
自身に石がなかった反動なのか、彼女はとにかく人の額玉を見ることが好きだった。そしてこの国でも最上級の額玉が揃い、見放題触り放題となるこの環境は、まさに極楽としか言いようがない。
そうしてその日も、同じ女性治癒士である桂蓮とともに、後宮の様々な室房を回っていた彼女は、蒼玉宮の主である汀淑妃から3日連続で門前払いを受けてしまった。
穏やかかつ控えめな気性で、いつもは手のかからない汀淑妃だというのに、今は宮全体がなにやら静まり返っており、何かあったとしか思えない。
もし体調に関わることならば、治癒士として放っておく訳にはいかない。そう思い上司に報告した二人だったが、上司である治癒頭には「大した事じゃないだろう」と、突っぱねられてしまい ――


中華風後宮ファンタジー。現地主人公で転生要素もチートもなし。ただし努力で身につけた技能持ち。
文庫換算100ページぐらい(改行を削ると7〜80くらいかも)で完結済。
ファンタジー要素は、人が額に宝石を持って生まれてくることと、その額玉が美醜の一番の判断基準で体調や精神状態によって変化するため、専用の治癒師が存在するというぐらいです。
後宮モノにしては陰湿さがほとんどなく、事件のオチもこれ実際にありそうだなあという感じで面白かったです。あと人名とか固有名詞に振り仮名ちゃんとつけてあって、すごくありがたかった(笑)<中華モノは人名とか覚えられなくて苦労する
主役はなんかヅカっぽい感じというか、性別がバレてる綺羅中将(byざ・ちぇんじ)みたいな立ち位置。額玉がないことで、妃嬪達からは皇帝を巡るライバルにはなり得ないと思われつつ、顔立ちは中性的な美形なので、疑似恋愛の対象としてキャーキャー言われている状態。そして本人はそれを充分理解していてしっかり活用、綺麗で可愛い子たちの額玉を間近で鑑賞し放題★ と役得に思ってますww
そして額玉には精神状態や感情が如実に反映されるので、きちんと学んだ宝玉治癒師が観察すると、かなり内面が読み取られてしまうことから、自分は額玉なくて本当に良かったなあと思っているドライなタイプです。強い。
……物語は事件をひとつ解決して終わっている訳ですが。これ続きが充分期待できる内容ですよねえ。
っていうか前述の額玉には精神状態が〜〜とか、いっそ変装して〜〜意外とバレないといった描写があった直後に皇太子さんがご登場なさって、その描写を深読みすると、もしかして皇太子さんの額玉って……? とか思っちゃうんですよ。ラノベ脳としては。
そうなると彼が紫瑶にあれこれ構いたがるのにも納得がいきますし。
ああこれ、本当に続き書かれる予定はないんですか、作者さま〜〜〜〜《o(><)o》
No.3528 (読書)


 断罪されたい悪役令嬢は、自分の罪を盛りに盛る
2023年04月16日(Sun) 
読書記録:
■断罪されたい悪役令嬢は、自分の罪を盛りに盛る
 https://ncode.syosetu.com/n5804hr/

小さな子爵家の令嬢であるセルマは、学院卒業と同時に継母によって、色好みの金持ち老人のもとへ売り飛ばされ ―― もとい嫁がされることが決まっていた。逃れるには在学中に自分でまともな縁談を見つける他ない。幸いこの中央貴族高等学院では、良い成績を収めれば、たとえ身分が低くても良縁に恵まれると言われていた。そこで入学早々勉学に励み、上位の成績を維持しながら婚活にもいそしみ。そうして彼女は三年目にしてついに縁を手に入れた。セルマの家よりも高位の伯爵家の子息、ジョナスと婚約を結んだのだ。
(これで未来は安泰だわ。お相手は伯爵家のご子息だから、実家からの口出しもなし! 第二の人生は心安く過ごせるはず)
そう安堵していたのだが……卒業パーティーの真っ只中で、婚約者であるはずのジョナスは、高らかに言い放った。
「セルマよ! お前との婚約は破棄させてもらう!」
その片腕に絡みついているのは、彼と同じ伯爵家の令嬢ドロシーである。入学当初からなぜかセルマに目をつけ、ちくちくと嫌がらせをしてきた彼女だったが、ついに婚約者まで奪われてしまったらしい。
ジョナスはドロシーの嘘を真に受けて、事実とは逆にセルマがドロシーにいじめを行なっていたと信じて糾弾してくる。
こんな阿呆と婚約を結んでしまった自分の愚かさも、四年間の努力が無駄になってしまったこの状況にも、卒業後に訪れるだろう未来の暗さにも嫌気が差してしまったセルマは、もう人生に疲れ果ててしまった。
いっそのこと、婚約の消滅と同時に、自分という存在も消え去ってしまいたい。
そう思った彼女は、ふと思い出した。
この世界には、滅却刑というものが存在する。死刑よりもさらに上、魔法により魂そのものまで消し飛ばし、輪廻転生すら許さぬ最上の刑罰である。
主に人間を殺害した魔族に対して適用されるものだが、人間族であっても、情状酌量の余地がない非道な罪を犯した者には執行される。
(――そうね、いいじゃない。悪役の令嬢らしく、断罪されてやろうじゃないの……。わたくしの人生、もうどうにでもなってしまいなさい……!)
完全に自棄を起こしたセルマは、二人が言い立てるさまざまな捏造の嫌がらせに対し、さらに自分で罪を盛っていく。
そうこうするうちに、周囲からは困惑の声が上がり始めて……


転生要素なし、現地主人公の読み切り短編。
「氷魔法のアイス屋さん〜」や「呪いの毛玉令嬢は〜」と同作者さんです。
なんというか、ノリと勢いのジェットコースターって感じでしたww
とりあえず、婚約破棄男はただの馬鹿。寝取り女は考えなし。主役は行動力あるけど、ちょっと視野が狭い、かな。そしてヒーローは自称・日陰のぼっち男子ww
いやうん、読んでるうちに彼で〆るんだろうなとは思ったんですけど、まさかそういう立場にある人で、しかも主役もそれ把握したうえでなおモブ(身分が高すぎて婚活対象外)認識してたって(苦笑)
まあ割れ鍋綴蓋カップルでめでたしめでたしなのは良いことです。
……婚約破棄男は、どうなったのかなあ……?
No.3514 (読書)


 ヒロイン本人から「いじめ」をするよう脅迫されている悪役令嬢は、今日もしょんぼりと猫を愛でる
2023年04月09日(Sun) 
読書記録:
■ヒロイン本人から「いじめ」をするよう脅迫されている悪役令嬢は、今日もしょんぼりと猫を愛でる
 https://ncode.syosetu.com/n3853gh/

伯爵家の令嬢メルーシャは、今日も婚約者に怒鳴りつけられていた。理由は男爵令嬢であるルルナに対していじめを行なったからである。
ルルナに対して暴言を吐き、食事のトレイをぶちまけ、池に突き落とす……等々。
そうして婚約者はメルーシャを疎んじ、ルルナをかばって二人で立ち去ってゆく。
そんな二人を高笑いしつつ見送ったメルーシャは、すぐに学院の敷地内にある小さな神殿へと向かった。生徒達などほとんど訪れないそこで、彼女は女神像の前にひざまずく。
「私は今日、ルルナ様の制服を『臭い』などと言ってしまいました……本人の指示とはいえ、暴言には変わりありません。人を貶す言葉を口に出してしまい、申し訳ございませんでした」
懺悔を終えると、横に来ていたぶち猫がにゃーと鳴く。
学院に住み着いているこの野良猫が、今の彼女には唯一の癒やしであった。
もともと猫好きであった彼女は、この黒ぶち猫を可愛がっていた。しかしその様子を見た男爵令嬢ルルナが、おかしなことを言い出したのだ。
いわく「婚約者を譲れ」「婚約破棄の理由を作るために、悪役令嬢として自分をいじめろ」「もし失敗したら、可愛い猫ちゃんの無残な姿を拝むことになりますよ、いいんですか?」と。
彼女は本気で猫一匹などどうでもいいと思っているようだった。そして誰かに相談しようにも、たかが野良猫一匹のことを、誰もまともに取り合ってくれるとは思えなかった。
そうして仕方なく、彼女の指示通りに『いじめ』の芝居を続けているうちに、彼女はすっかり学院で孤立してしまった。こうして人目のない場所で猫を撫でながら、辛い思いを口にするのが精一杯である。
そうして迎えた卒業パーティーの夜。当日になってエスコートできないと言い出した婚約者は、案の定、男爵令嬢をパートナーとして現れた。そうしてメルーシャへの婚約破棄と、ルルナとの結婚を宣言したのだが ――


現地主人公の婚約破棄モノ。自称ヒロインは転生者っぽいですが、そのあたりはさらっとスルーされています。全6話でさくっと完結。
自称ヒロインが電波かつサイコパス系で、猫に対する残虐行為をいろいろ告げたり実行しようとしたりするので、苦手な方は要注意。なお全て未遂で終わりますので、その点はご安心を。
No.3509 (読書)


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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。

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