捨て悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る
2018年02月20日(Tue)
|
|
|
読書記録: ■捨て悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る https://ncode.syosetu.com/s5014d/
公爵令嬢シルフ・ビーベルは、友人だと思っていた少女に嵌められ、国外追放された。王子の婚約者として様々な義務を課せられることに不満を抱きもせず、ただひっそりと本を読むことだけを楽しみに日々を過ごしていた彼女は、ある日いきなり、同じように物語を愛するたった一人の友人だと信じていた男爵令嬢 ―― カンナ・コピエーネによって、身に覚えのない罪を着せられたのだ。 一方的に弾劾され婚約を破棄された彼女は、そのまま訳も判らぬまま隣国との国境にある森へと、檻に入れられ放置された。 隣国ダーゲンヘルム王国は、死に最も近い場所、黄泉の国だと伝説のように語られていた。暗い森に囲まれた立地からほぼ鎖国状態となっているその国の民は、みな悪鬼羅刹に等しく。特に国王などは、夜な夜な国外に出ては乙女を食らっていると言う。そうやってダーゲンヘルム王は、何千年も生き続けている怪物なのだ、と。 つまり拘束された状態で森に捨てられた彼女は、そのまま『怪物』に食われてしまえということなのだ。仮に一夜が明けてまだ生きていたとしても、状況を確認に来た兵達の手で改めて殺されるのだろう。 何故自分がこんな目に合わなければならないのか、シルフにはどうしても判らなかった。牢に繋がれた彼女へと会いに来たカンナ嬢にそれを問えば、返って来たのは、 「ヒロインの邪魔をする悪役令嬢は、婚約破棄されて、皆の前で断罪されて、それから国外追放されるのよ。悪役令嬢として生まれたのが運の尽きね」 という、まったく理解できない言葉でしかなく。 自分は悪役だったのか? 自分は彼女に何をした? どうすれば、自分は『悪役令嬢』にならずにすんだのだ? 考えても考えても判らない。そして助かる気もしない。 それでも彼女は一縷の望みを持って、格子の間から手を伸ばし、落ちていた枯れ枝を拾い上げる。 そうして『悪役令嬢』シルフ・ビーベルが地面に書き記した文字は……
本編完結済。後日談的番外編が、5話ほどの中編2本と、別ページに短編1本ほどあります。 タイトルだけ見れば、ありがちな冤罪着せられる悪役令嬢モノ。 最初の方だけ読んでいれば、やはりごくありがちな、空気読めない転生ヒロインがはた迷惑にやらかしちゃったテンプレ物語。 さらに読み進めれば、めっちゃ有能だけれど壊れたところのある『怪物』に拾われて気に入られた主人公が、溺愛されて幸せを掴みつつザマアな復讐を遂げる、見返し系シンデレラストーリー。 しかしさらにそこから先の展開が予想外で、ちょっと内容を確認するだけのつもりが、最終話通り過ぎて番外編まで一気に行ってしまいました。 なんというか、謎はいろいろ残っていて、カンナが転生した理由とか、それでこの世界って結局は何だったの? といった根源的な部分は不明なままだったりもするのですが……でも本来人生ってそういうものよね? みたいな。全てを語り尽くすのはむしろ蛇足だろうと思わせられて、これはこれで良いんだと感じました。 そして純真無垢な人なんてどこにもいないし、誰もが打算で、自分の幸せのために動く。それが当たり前のことよねと突きつけてくるというか。それでもみんなで幸せが良いよね、というか。 もう誰が主役で誰が悪役令嬢で、誰がヒロインで誰が怪物なのか。 とにかく、二転三転するキャラクター達の印象や立場や物の考え方に引き込まれました。いやもう脱帽。 巷にあふれかえる『悪役令嬢』という題材を、こういうふうに料理されたお話は初めてです。 面白かった。
あ、ちなみに誇張でなく残虐表現注意です。人死に出まくってますし、ある意味、振り回された側の王国上層部とか、それに巻き込まれた国民達の扱いは気の毒というか、かなり理不尽です。 主人公が『正しい』と、いつから錯覚していた? 的展開なので、読む人はかなり選ぶと思われます。読まれる方は覚悟の上でどうぞ。
|
No.179
(読書)
|
|
|
|
この記事のトラックバックURL
|
https://plant.mints.ne.jp/sfs6_diary2018/sfs6_diary_tb.cgi/20180220179
|
|
|
|
プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
最近は小物作り(主にタティングレース)などにも没頭しています。
|
にほんブログ村
|
|