2015年08月13日の読書
2015年08月13日(Thr)
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本日の初読図書: 百瀬太郎は、世間で話題となった大規模なペット訴訟を見事すぎるほど完璧に解決した結果、所属していた大手弁護士事務所から追い出され、今ではペット専門の弁護士「猫弁」などと揶揄されながら小さな事務所を営んでいる。 冴えない見た目に頼りなさすぎる性格が災いして、そろそろ四十に手が届くというのに、未だ独身。しかしそんな彼にも、このほど婚約者ができた。彼女、大福亜子は、かつて百瀬が通っていた結婚相談所の職員で、また彼の人生を変えるきっかけとなった世田谷猫屋敷事件の当時、唯一被告に同情的な態度を取っていた女子中学生の、成長した存在であった。 「誰でも良いんでしょう」「選ぶのが苦手なんでしょう」「ならわたしが選んであげます。わたしです。結婚して下さい」 そう言ってくれた亜子とデートしてみる百瀬だったが、よく考えるとプロポーズの返事をしていなかった気がする。しかもこんなおじさんといっしょにいて、彼女が楽しんでいるようにはどうも見えない。 そんなふうに悩む百瀬だったが、プライベートとは関わりなく、仕事はやってくる。それも相変わらずペット関係の依頼ばかり。 その日やってきたのは、奇妙なメールだった。差出人は「透明人間」。 「ぼくはタイハクオウムが心配で、昼も眠れません。彼の様子を見てきて下さい」と。 着手金で五十万、写真つきで報告してくれたらさらに五十万払うとあるが、肝心のタイハクオウムの居場所も依頼人自身の本名すらも書いていない。 イタズラだろうと一蹴する事務員たちをよそに、百瀬はメールに返信を書き、仕事に取り掛かった。 いっぽうで、最近世間で話題になっている凄腕タレント弁護士 二見純には秘密が存在していた。百瀬の大学時代の同期いわく、教え子だった頃の二見は、むしろ落ちこぼれだったという。なのにあれほど見事な弁護ができるというのは、背後に優秀なゴースト弁護士がいて、全ての脚本を書いていてくれるのだろうと。事実、彼の後ろには、優秀だが引きこもりで声を出すことすらできない男、沢村がついていた。小学五年生の頃から学校に行けなくなり、ひたすら本を読んで過ごした沢村は、勇気を振り絞って受けた司法試験こそ一発で首席合格したものの、その後の研修に通うことができず引きこもっていたところを、受験十一回目で同期合格した沢村によって見出されたのである。 そうして沢村のバックアップで有名になった二見は、百瀬の古巣ウエルカムオフィスに引き抜きを受けた。しかしその入社試験を兼ねて任されたのは、数少ない沢村に関わりのある人物が原告となる医療訴訟において、病院側の弁護をすることで……
実際には8日に半日で読了。 ずいぶん以前、ドラマ放送を機に読んだ「猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち」の続編です。 婚約者の気持ちが判らなかったり、奇妙な依頼に翻弄される百瀬さん視点。百瀬に女として愛されてる訳ではないのだと、揺れる亜子さん視点。引きこもりながらもふとしたことで知り合った親子とたどたどしく交流していたら、訴訟で敵対する立場になってしまい悩む沢村さん視点。自分の才能のなさを認め落ち込みながら、どうにかのし上がろうとする二見視点。 そこらへんをメインに、その他の面々の視点も入り混じった群像劇っぽい感じで、最終的にはすべてがきれいに集約していきます。 百瀬さんは、記録に残る形ではほとんど活躍しませんが、しかし彼の存在がなければこの結果は出なかったのは確か。 誰もが悩み苦しみ迷いながら、それでも最後はほっこりできる。 良い感じの読後感でした。
そして一作目ではずいぶんあちこちに振りまわされまくり、ほんとにその彼女でいいのか?? とヘタレ好きの私ですら少々疑問を覚えた百瀬さん。今回はずいぶん有能度合いがアップしてました。いや、前作でも有能ではあったんですが、それを認めてくれる人が少なかったんですね。しかし今回は違います。 婚約者亜子さんも、過去の同級生も、そして謎の人物「透明人間」も、彼を天才だと口を揃えます。 ……っていうか、百瀬さん、あんた聖者か……あまりにも良い人過ぎて、心配になってくるぐらいですよ。 本人自身は、いろいろ悩んでるし迷ってるし、ちゃんと人間的ではあるんですが、しかし客観的に見て浮世離れし過ぎてる。むしろ亜子さんが手綱引き締める勢いじゃないと、いつかどこかで、依頼人……いや猫……むしろ通りすがりの第三者をかばって、あっさりぽっくり死んじゃいそうで怖い。
身寄りはないけど頭が良いから、大学に行く。そのために高校は通わないという選択とか、それいったいどんな人生ですか<勉強は独学で充分だから、三年間は働いて学資と生活費を貯めるのに当てた それで東大法学部を首席で卒業し、最年少で司法試験合格。一度見聞きしたものはほぼ忘れないとか、まさに天才の名をほしいままですよ。
でも、要領は悪い。 純粋で純粋で、「僕は、正義の味方になるんです!」と胸を張って言い、まるで子供のように皆の幸せを考えていて……それでいて夢見がちではけしてなく。実現可能な最大多数の最大幸福を厳密に算出した上で、現実に叶えうる最高の結論を引き寄せる。 いい男じゃないですか(しみじみ)
今回は、そんな彼と同じレベルで物を考えることができる透明人間という知人を得られたので、今後はぜひ仲良く協力しあっていって欲しいところです。
さて、三作目も予約して……って、これ五巻まで出てて既に完結してるのか。図書館には三巻までしか入ってないよ……(しょぼん)
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No.7018
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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