2014年12月09日の読書
2014年12月09日(Tue)
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本日の初読図書: 冒頭の流れはWEB版とアルファポリスのWEBマンガを読んだ時に書いているので、省略。 書籍版、買っちゃいました(笑) 内容は大幅書き下ろし。全十章のうち、短編のWEB版と公開済みWEBマンガの第一話部分は、第一章で語られ終えてしまいます。 実は密偵に扮して、天井裏に出入りしていた皇帝陛下。彼に見初められ、嫁入り先を強引に皇帝陛下の元へと変更された少女は、その後「自分は密偵として皇帝に協力し、しばらく皇妃候補のふりをすることになったのだ」と思い込み、本気で少女と婚約したつもりの皇帝との、すれ違い気味なラブコメが展開vv この段階で、少女にとっての皇帝は、あくまで優しいお兄さんレベルです。好意を抱いてはいるし、全力で力になろうとはしていますが、あくまでそこ止まり。 しかしプロ意識高く、「潜入任務として完璧に皇妃候補を演じきってみせる」と決意しているため、パーティーでの礼儀作法などは庶民出に似合わずバッチリこなしています。そういう点でポカをやって周囲から呆れられることもなく、見事にこなしていくのが好感度高いです。
……ただ密偵としてはけっこうスペック高いのに、年頃の少女としてはあり得んほどにいろんな意味で世間知らずかつ天然なのは、子供の頃から訓練漬けだったが故なのか。むしろ子供の頃から女密偵の訓練を受けていたのなら、もうちょっと早くいろんなことを教わっていそうなものなのですが……そこは義父義兄達によって阻止されていたのかなあ。 精神年齢的には十七才というより、十三〜四才ぐらいと思って読んだほうがしっくり来るかもしれません。中世のトルコとかペルシャっぽい世界観的にも、貴族女性が成人と見なされて結婚するのってそれぐらいでしょうし。
皇帝に見出された少女が、その無邪気な天真爛漫さで周囲の人々を魅了してゆく、ある意味王道シンデレラ・ストーリー。 ちょっと少女の無垢さが過ぎて鼻につく部分もありますが、それでもある一点で、私は彼女を見直しました。 それは自分の本当の祖国が、どうして戦争に巻き込まれたのかを知った時。 それは表向き、先代皇帝が唯一の妃を想って、彼女の故郷を守るために行なった、いわば私情による戦争だと語られます。先代皇帝の私情によって、少女の本当の両親は戦火のなか死んでいったのだと。 しかし彼女はすぐに、それが世間向けに作られた美談だと見抜きます。そしてホッとするのです。 先代皇帝が妻を想った、人間的な部分に安易に心ほだされるのではなく。 あの戦いには隠された政治的な意味がちゃんと存在した。そしてその戦争の結果、いま自分の本当の祖国は戦争前よりもずっと豊かになっている。ならば自分はけして先代皇帝を、そして彼と血が繋がっているというだけの現皇帝を、無闇に恨むことはすまいと。
そんな、冷静に物事を分析できる部分にこそ、彼女の人間としての『器』を感じたのでした。
あ、さっきから少女とか皇帝とか書いてますが、この話はすごいことに、一冊300Pを通じてまったく固有名詞が出てきません。地名も人名も、みんな「属国」とか「北の連邦国」とか「宰相」とか「参謀長」とか。 少女もずっと少女とか、せいぜい「おチビ」呼ばわり。ある意味徹底していて、むしろ話が判りやすいです。
宰相がまた、いい味出してるんだよなあ、クセモノっぽくて<もちろん美青年 彼がやらかした数々のあれこれを、きっちり乗り越えた少女に拍手。 あと天井裏に潜みつつ、時にそっとかつ粋に力を貸してくれるおっさん密偵ズの存在も忘れてはいけません。酒税対策に作られた、酒精抜きの麦酒を片手に、おっさん達は可愛い“娘”を全力で見守り続けるのでした★
なお続刊も出ているようですが、これ一冊できれいに落ちが付いているので、これだけ読むのもありだと思います。
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No.6411
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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