2014年11月13日の読書
2014年11月13日(Thr)
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本日の初読図書: 下町の一角にある、テーブル五つ、カウンター七席という小さなフレンチレストラン、「悪くない」。僕ことギャルソンの高槻智行は、まだ勤め始めたばかりで、仕事に馴れるのに精一杯だ。紅一点のソムリエ金子ゆきや、副料理長の志村洋二とはだいぶ馴染んできたが、料理長のことは未だによく判っていない。フランスのそれも田舎の方を点々として修行してきた彼 三舟忍は、気取らない気軽に楽しめるフランス料理を目指しているらしい。しかし無精髭に長く伸ばしてひとつに束ねた髪の毛、そして無口なその人柄が、いまひとつ彼を近寄り難い存在にしている。 だが三舟のすごいのは、料理の腕ばかりではなかった。ほんの些細な言葉の端々から、訪れる客達が抱える事件やトラブルを見つけ、真相を明らかにする。 美人女優と婚約したばかりの常連客が、その日腹具合を悪くしていたのはなぜか。 あまりにも偏食がひどすぎる男の妻が、まずい料理を作り続けている理由は。 十二年前、志村が初めて焼いたガレット・デ・ロワの中からフェーブが消えた経緯。 突然妻が実家に帰ったという男性客が、犯した失敗とは。 飲酒という不祥事を起こした高校野球児は、どうやって合宿所に酒を持ち込んだのか。 かつての恋人と別れるきっかけとなった、彼が作ってくれた最後のカスレは、どうしてあんなにもまずかったのか。 ベルギーから帰国し、店を開いたばかりのショコラティエ。病気の母を見舞う暇もないという偏屈な彼の作るチョコレートの詰め合わせは、どうしてどれも素数なのか。 様々な謎が、料理をキーワードとして紐解かれてゆく……
250Pにも満たない中に、七本の短編が収録された、気軽にさくさく読んでいけるお話です。 料理長の三舟さんは、フランスで修行中に「三船敏郎の親戚か?」とか「サムライの子孫だ」といった誤解を受けまくったあげく、ならばと武士風の無精髭&長髪のキャラ作りをして新人イジメから逃れちゃった、実はけっこうちゃっかりさん。 お客さんの体調やリクエストに合わせて、見事にメニューをアレンジしてくれる、気の利いたオジサマでもあります。 周囲を固めるキャラクター達もそれなりに個性的で良い味を出しており、一話一話は短くても、しっかり味わい深い仕上がりになっているかと。 ……事件の真相は、時に冗談ではすまないような深刻なんじゃね? というものも混じっています。 三舟さん達は、それを本人に知らせることもあれば、知らせないまま『関係者』にのみ話をつけたり、そのまま結末を見ずに成り行きに任せる場合もあります。あまり踏み込みすぎないところが、お店とお客というスタンスを表しているように思えました。 時にデリカシーがなさすぎるのではないかというほど、関係者の内面にズカズカ入り込んでいくことの多いミステリーものとしては、少々異色かもしれませんね。 個人的には、最後に載っていた「割り切れないチョコレート」が好きです。偏屈なショコラティエさんの、内面に溢れる母親への思いが切ない…… そしてなんとなく彼の外見イメージが、ドラマSTの池田管理官になっている私(苦笑)
ただ難点がひとつ。読み流せば良いと言えば良いんですが、フランス料理の名前や用語がガンガン出てきます。後から説明がある場合もあれば、そのまま普通に流される場合もあって、途中で何度も読むのを中断して調べる羽目になりました。 フランス料理なんてお洒落なもんに、縁はないんだよ、コンチクショウ><
ともあれこれも二巻目があるらしいので、借り出し候補に追加しました。
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No.6362
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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