よしなしことを、日々徒然に……
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 2014年05月20日の読書
2014年05月20日(Tue) 
本日の初読図書:
4041011582へっぽこ鬼日記 (角川ビーンズ文庫)
田中 莎月 伊藤 明十
KADOKAWA/角川書店 2013-12-28

by G-Tools
藤見恭、二十歳。飲み会の帰りに自動販売機でコーヒーを買っていたはずが、何故か気が付くと森の中にいました。
着ているものは和服に変わっており、腰には刀を下げている。いったい何が?? と思った彼を、突如現れた忍者達が襲った。いつもよりもよく動く身体で懸命に逃げていると、助けに現れたのは弓を持った赤髪の少年。
「お帰りなさいませ! 恭様」
満面の笑みでそう言った彼は、恭の従者で篠崎陽太というらしい。嬉しそうに話しかけてくる言葉を総合すると、『藤見恭』はこの領地の領主の末息子で、五年前に旅に出たきり行方が知れなかったのだという。ようやく戻ってきてくれたので、家族も喜ぶだろう。自分も全力でお仕えすると、陽太ははしゃいでいた。
状況がよく判らないのでとりあえず話を合わせたが、助勢に現れた『兄』だという隆哉青年やその従者で陽太の兄である要も、恭のことを藤見家の息子だと信じて疑わない。しかも相変わらずだとか、立派になったとか、やけに好印象を持たれているようだ。
これはあれだろうか、小説や映画でよくある異世界に来たというやつだろうか。そして今の自分は、この世界の『藤見恭』から着物や刀や、あるいはこの身体までも『借りて』いる状態なのかもしれない。
そんなことを思いながら、半ば連行されるように城へと連れて行かれた恭は、領主である父親からこの東鬼の地の長である東条家との見合いに行けと言われて仰天する。
え、彼らってかこの身体って人間じゃないの? 鬼ってナニ? ああいやそれ以前に、見合いなんてとんでもないと断ろうとする恭に、父親はならばと交換条件を出す。
最近、土地神の様子に異変が起きているようだ。藤見の家の者は代々、土地神の血を引く獣と契約を交わし、影獣として力を借りている以上、捨て置く訳にはいかない。様子を探り解決せよ、と。
かくして陽太と二人、土地神の元へと向かった恭は、そこで再び忍者と遭遇する。土地神の森を結界で封じた忍者達は、手負いの巨大な獣を狩ろうとしていた。その残酷なやりようと、目撃者の口を封じようとする彼らの様子に、二人は戦わざるを得なくなる。だが平和な日本からやってきた恭に、戦闘などできるはずもなくて……

WEBから(以下略)。
ユーザーレビューとかの評価がいまいちだったので買おうかどうしようか迷っていたのですが、WEB版未読だという雪華さんが面白かったとおっしゃっていたので買ってみました(笑)
イラストもけっこう好みでしたし(表紙では洋服着てますが、本文では和服です)。

……あー、これWEB版とは完全に別物ですね。少なくとも一巻目の段階では。
WEB版では、見合いに向かう道中で恭がキョウに憑依。協力者も事情説明してくれる人もいない状態で、文字通り成り行きと偶然に任せて突き進んでゆく勘違いものだったのですが、書籍版では見合いに行く前、藤見の領地にいる時に憑依が起きています。キョウの家族とも顔を合わせ、見合いに行けと命じられて拒否 → ならばこの難題を解いてみよ! と言われた先で事件が起きてバトルに突入、という展開です。
何故に恭がキョウに憑依する羽目になったのかの謎も、一巻で早々に明らかになっています。本体キョウ様の現状も判明してしまったので、これはWEB版の右も左も判らないままで、ヘタレで小心者な行動が運だけを味方に周囲から良い解釈を受けまくる勘違い全開だったのがお好きだった方は、確かに点が辛くなるかもですねえ。
しかし小説としての出来は、こちらの方が完成度が高いと思います。
まず、恭が現実に戻らなきゃと最初から明確に思っており、そのための努力を最優先事項にあげていること。WEB版での、置いてきた現実のことをまるで考えないまま、目の前に降って湧いた美人との見合いにうつつを抜かしている展開よりも、はるかに共感できます。
そして身体の元の持ち主であるキョウのことについても、きちんと説明がされていること。これもWEB版での「もし本人が戻ってきたら、今さらどうするんだよ」というツッコミがなくなります。
むしろこの二点が修正されていなかったら、私は金払って買うレベルではなかったと思ったんじゃないでしょうか。
確かに本体のキョウが出張ってきた分、恭の魅力が薄れている部分はあります。しかしそれは二巻目以降に期待できるのではないでしょうか。今回はあくまで本筋に入る前の導入部というところで。
……ただこの段階での恭は、あくまで現代に戻ることを優先しており、見合いは対立候補をふるいに掛けるための試金石として参加することになっているのですよね。そのことを考えると、見合いの流れもWEB版とは異なる方向になっていきそうで。残してきた家族のことを考えつつキョウに身体を返すことも想定した、ちゃんとした大人の恭さんならば、無責任に姫さまと恋愛なんかしないんじゃないかなあ。キョウに黙って勝手なことはできない、とか考えてるし。
……いやまあWEB版の恭も、片思いが成就するとは(本人だけが)思ってないけどさ(苦笑)

そんなこんなで、WEB版を読んでいても全く先が読めない書籍版は、十分楽しめる作品でございました。
なお、出版社サイトでおまけ短編が四作ほどUPされています。まだお読みでない方は、そちらもぜひどうぞ。

■角川ビーンズ文庫公式サイト | 書き下ろしWeb小説
 http://www.kadokawa.co.jp/beans/webstory/
No.5844 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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