2014年02月10日の読書
2014年02月10日(Mon)
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本日の初読図書: 「不死王の息子(小説家になろう)」〜クリスマス中止のお知らせ http://ncode.syosetu.com/n2023bc/
小学六年生の日高由紀子は、学級崩壊気味のクラスで学級委員をやっていた。面倒見のいい性分がたたって、担任から押し付けられたのである。そんなクラスにある日転校生がやってきた。まだ子供ながら、異国の血を感じさせる白皙の美少年だ。しかし美しい容貌と裏腹なその名前は『山田不死男』。かの不死王の息子だという。 現代社会において、差別は駄目だと初等教育から教えられている。たとえそれが化け物であってもだ。世の中にはけっこう普通に人狼や吸血鬼といった人外が暮らしていて、ちゃんと人権も保証されている。とは言え人が己と異なる存在を、そうそうたやすく受け入れられる訳でもなく、根深い所に差別や偏見は残っているのだが。 ともあれ不死王といえば、紀元前から存在し続ける不老不死の存在である。たとえどんな傷を負ってもすぐに再生し、老いることもなく二千年以上生き続けてきた。かつては神と呼ばれ生贄を捧げられたりもしていたらしいが、今では菜食主義になっているそうだ。 そんな存在の息子である山田少年は、やはり不死身の肉体を持っている。転校してきたその日に校門の前でトレーラーに轢かれた彼は、見ている者に一生のトラウマになるだろうスプラッタを展開したのち、何事もなかったかのように復活した。その後もグラウンドを歩けば転んで突き出た石で頭を割り、体育の授業でサッカーをやれば何故かボールの代わりに生首がゴールする。血が飛び肉片が散る惨状に、周囲の人間は阿鼻叫喚であるが、当の山田少年はのほほんとお気楽に日々を過ごしている。 由紀子は山田少年が肉片状態から血まみれで復活してきた際、うっかり持っていた体操着を投げつけてしまった。身体は再生するが服は戻らない。つまり大変目のやり場に困る状態になっていたため、思わず反射的にやってしまったのだ。よもやそれが己の未来を一変させるきっかけになるとは、夢にも思うことなく。 翌日、駄目にした体操着を弁償するというのを断りきれず、由紀子は山田少年の自宅へと足を運ぶこととなった。立派な洋館に住んでいたのは、山田少年によく似た美貌とお花畑の脳味噌を持つ、天然人外な不死王こと山田父と、同じく山田母。彼らはニコニコと笑顔で由紀子を迎え、息子が友人を連れてきたと大喜びで彼女を夕食に誘った。当然断ろうとした由紀子だったが、献立が大好物のレバ刺しだったことで、ついご相伴に預かってしまう。 レバ刺しは美味しかった。お世辞でなく、今まで食べた肉料理の中で一番美味しいと思った。お代わりまでして食べてしまった由紀子に罪はない。 まさかそのレバーが、不死王その人の肝臓だと、誰が思うだろう。お客さんはもてなさなきゃの一念で、山田親子は最高の食材を振る舞ったらしい。 普段は止め役にまわる山田少年の兄姉達が、たまたま席を外していたのが仇となった。 不死王の血肉を受けたものは、その血族となる。 そう、由紀子もまた不死身の一族の一員となってしまったのである。 そんなこんなで否応なく死亡フラグを立てまくる山田少年と、文字通り一蓮托生になってしまった由紀子だったが……お気楽脳味噌花畑な山田少年とその両親にも、その過去には深刻な事情が絡んでいるようで……
商業出版された「薬屋のひとりごと」を書かれた、日向夏さんの現代ファンタジー。本編完結済で、時おり番外編が投稿されているようです。 えーと……ジャンル的には、ドタバタスプラッタコメディ。恋愛とシリアス成分もありというところでしょうか。 馬鹿馬鹿しい理由で不死者になってしまった委員長タイプ(でもけっこうちゃっかり者)の女の子が、ちょっと目を離すと血まみれ臓物だらけになる問題児を面倒見ているうちに、いろいろ巻き込まれたりほだされたりといった感じです。小学生編・中学生(前後)編・高校生編の四部構成。 由紀子ちゃんが恋愛方面に対して相当に鈍いというか朴念仁なので、天然ぼんやりのくせに好きな子には一直線な山田少年との噛み合ってないやりとりに、周囲の方がやきもきと。
そして文庫五冊分ぐらいある本編を数日かけ読み終えて思った感想は、『結局、山田青年(長男)がすべての元凶じゃん(−ー;)』でした(苦笑) この人が生き神様レベルの博愛主義を展開したあげく、自分が壊れていることに気が付かなかったおかげで茨木は950年苦しんだんですよね。いや彼女のやらかしたことは許されないことだと思いますけど、でも山田青年がもっとしっかりしていれば、お互いにお互いを探しつつも『出会えない』という状況は避けられたはずでしょう。っていうか、それだけ茨木が特別だったくせに、それでもあちこちに子供いるって、どんだけ博愛主義なんだ、山田青年……
まあ、そんないろんな意味で駄目駄目だった彼が、ちゃんと茨木と決着をつけられたのは、山田少年と由紀子ちゃんの存在あってこそなんでしょうが。 ……それにしても、神様レベルの博愛主義から一点集中型のヤンデレにジョブチェンジって、どっちにしても迷惑に変わりないあたり(笑)
あ、文章は非常に読みやすかったです。 たまに『てにをは』がおかしかったりとかしますが、それはまあさておき。読んでいて「えっと、これだれだっけ?」ということがほとんどないのはありがたいです。 なにしろ山田家の家族の呼称なんて、基本的に「山田少年」「山田青年」「山田父」「山田母」「山田姉」「山田兄」「恭太郎」ですしね。 正直なところ地の文で毎回アヒム(山田兄)とかオリガ(山田姉)とか書かれていたら、多分途中でどっちがどっちかわからなくなったと思います。そして本名で書かれる場面になると、とたんに文章の雰囲気がシリアスに変わり、その落差が読む方に飽きを感じさせない、と。 天然一直線な山田夫妻+少年の取り合わせと、不死王・撫子・富士雄のギャップは半端ないです。 ラストがどうなることかとハラハラさせられもしましたけれど、不死王の選んだ道は意外でしたねえ。彼もまた山田青年が山田少年に影響を受けたように、山田父によって少なからぬ変化を遂げたのでしょうか。まあ今後はもう少し『出て』来やすくなるでしょうから、息子たちの苦労は少しは低減される……かも?
そして個人的には山田兄(アヒム)がけっこう好きだったり。 誠実で有能でセンスが良くて金離れもばっちり。スーツが似合うエリートサラリーマンでメガネで苦労性で、そしてちょっと残念な美形(笑) やべえ、ドストライクだvv ああでもオリーブオイルは飲み物じゃないよ……料理として使われるのは確かに嫌いじゃないけれど、でも日本人はうっかり摂り過ぎるとお腹壊すらしいし、やっぱり彼の嗜好にはついていけない……
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No.5579
(読書)
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プロフィール |
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。
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