よしなしことを、日々徒然に……
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 2013年10月28日の読書
2013年10月28日(Mon) 
本日の初読図書:
「壁上の血書 : 附・池底の王冠(近代デジタルライブラリー)」九皐散史
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/915076

今回からは呉田博士とか言いつつ、うっかりマンガ版「ピンク色の研究」に触発されて、こちらを読み始めちゃいました(苦笑)
ホームズとワトソンが出会う、最初のお話かつ長編「緋色の研究」と、短編「マスグレーブ家の議定書」が大正時代に翻訳されたものです。
これは著作権が切れていないので、入力 → 公開はできないのが残念無念(しょぼん)

この翻訳ではホームズさんが穂水三郎(ほみづ さぶらう)で、ワトソンは和田軍醫補、旧友のスタンフォードは谷口さんになっています。語り手は、のちに和田さんの日記を入手した『著者』とのこと。
なので文章は和田さんの語りではなく三人称になっています。しかし冒頭から和田さんの経歴が、倫敦大学で醫學士の稱號取得 → 根戸禮(ねどれー)で研修を受ける → 二回目のアフガン戰争に軍醫として從軍 → 負傷して本国へ送還、というふうに語られるなど、なかなか原作に忠実な流れ。
穂水さんが地動説を知らない&覚えてもすぐに忘れると主張したり、和田さんが穂水さんの智識表を作ってみる下りなどもしっかりとあります。
ただホームズさんが披露する推理の詳細や脈絡のない飛びまくる無駄話、語られる事件の様相などがだいぶ省略されているのが、残念な点でしたね。ワトソンさんが初めて見聞きするそれらに驚きまくるのが、「緋色の研究」の見どころなのにvv
とは言え逆に、省略されたりエピソードの順番を多少入れ替えることによって、展開がよりドラマチックになっていたことは確かです。特に最終章で、犯人の末路をラストへ持ってきたのは大正解でしょう。原作ではいきなりそこから最終章が始まってますからね。まあそれがドイルの文章の味と言えばそうなんですが、読者を驚かせるという点ではやはりラストでしょう。

……そして和田さんと言えば、書かれている経歴を見て原作も確認してみたんですが、和田(ワトソン)さんって少なくともこの話の段階では、負傷を癒すために「九個月間の休暇」が出ただけなんですね? ってことは、退役軍人じゃないんですか!? まさかの予備役??

あと穂水さんが下宿を探している理由も、家賃が高いからではなく「格安の下宿を搜し當てたが、部屋が少し廣すぎるから、誰か共同で下宿しないかなんて云つて居ましたぜ」って……人間嫌いのはずが、どうした穂水!?
そのくせどんな人物かと聞かれて答えた谷口さんには、いきなり容赦なく「キ印」呼ばわりされてるし!
……しかし「人間の屍骸を杖で殴って見て、人と云ふものは死後何の位經つたら、血が出なくなるだらう」という研究をしていると聞いて「其奴は面白いぢやないか?」と答える和田さんも、けっこうイッちゃってるような気がします(苦笑)<原作のワトソンさんは、一応「死体を叩く!( Beating the subjects! )」って驚いています

物語の舞台は倫敦なんですが、地名は日本風で、フランクフォートが佛蘭戸(ふらんど)街、ブラッドフォードが保留戸(ほるど)町、ブリクストンロードのローリストン・ガーデンは「降矢(ふるや)通の朗林(らうりん)街」、クリーブランドが栗府蘭(くりぶらんど)でケンジントン公園が劍眞頓公園(笑)
そして我等がベーカー街は星加街(ほしかまち)二百二十一番地となっています。

その他に人名は、トバイアス・グレッグソン警部が呉隅富雄(くれずみ とみを)に、レストレード警部が鳥山に、殺されたイーノック・ドレバーが奴列婆園吉(どれいば えんきち)で、ジョセフ・スタンガーソンが須田蛇二郎(すたゞ じらう)、犯人のジェファーソン・ホープが富山次郎助(とみやま じろすけ)といった具合に。

そしてモルモン教には、多妻宗という漢字が振られていました。
……えーと……そもそも私は最初に「緋色〜」を読んだときから思っていたんですが、

(以下は少々辛口につき要反転)

砂漠で飢え死にしかけていたところを、モルモン教に入信することを条件に出されてちゃんと承諾した上で助けてもらっておいて、あげくモルモン教徒達さえ生死に関わる苛酷な環境の中から水と食料と土地まで分けてもらい、資産家として十何年も暮らしてきたくせに、いざモルモン教徒と結婚しろ(義娘を結婚させろ)と言われたら、恥だ不名誉だっつって逃げ出すって……なんかひどくね?
確かに意に染まぬ結婚を強要されるのは問題ですが、戒律で他教徒との結婚は明確に禁じられてるんですよね。ならばせめて罪悪感ぐらいは抱こうよ。他に好きな人がいるからやむなく戒律を破るけども、逃げて捕まれば罰を受けるのは仕方ない、ぐらいは思うのが人の道ってものでは。 そりゃまあ確かに、僧正達はよそから女性をさらってきたりとかもしていたようだけど、それとこれとは話が違うかろう。
そもそも紀美子(ルーシー)は積極的に殺されたんじゃなく、それなりに妻として遇されていたのに自分で衰弱死したわけで。そりゃ目の前で義父を殺されたのは同情するけど、先に自分達が戒律破って逃げ出した上、追っ手に銃で抵抗したんだから、それも無理なくないか?? 義父の死体だってうっちゃらかしにはされず、一応それなりに葬ってあるし。
なのに戒律破らせた張本人が、これは正統な復讐だ、人道正義は我にありーみたいに胸張って主張しても、なぁんかモヤッとするものが感じられるとか考えてしまうのは、私のうがった見方なのでしょうか(苦笑)

(反転ここまで)

……そしてこの翻訳では次郎助、ちゃっかり自分の方は丸薬飲んでなくないか……?


ところで今回、英語原文とこの翻案を読み比べていて、私は衝撃の事実を知りました。
ホームズさんって、「私立探偵」じゃなかったんですね……(愕然)
ええ、確かに翻訳によっては「諮問探偵」とか「顧問探偵」となっていて、どう違うんだろうとは前々から思っていたんです。それに最近いくつも古い翻案を読んでいて、警察の人のことも「探偵」と呼称されていたりして不思議には思っていたんです。
どうやら、

 公共の探偵(警察官) → government detectives
 私立探偵(興信所員) → private detective
 諮問(顧問)探偵 → consulting detective

と言う事みたいですね?
でもって、ホームズさんは、警察官や私立探偵の相談役コンサルタントという訳なんですな。
シャーロキアンとかから見れば遅すぎる認識かもしれませんが、個人的にはびっくりでした。今までずーーっと「シャーロック・ホームズとは、世界で一番有名な 私立探偵 」だと思いこんでいたので。
やー……やっぱり外国語に翻訳すると、特に子供向きの解りやすい翻訳などだと、いろいろ食い違いが生まれてくるものなんですねえ……
翻訳の齟齬と言えば、ワトソンさんが最初に飼っていると言って、しかしその後一度も出てこないブルドッグ(“I keep a bull pup,” )についても、あれは実は「自分は猛犬のような癇癪持ちの部分を、心の中に持っている」という比喩表現なのではないかという説があるそうですね。
……もっともこの翻訳では、ハドソンさんが飼っていた病気のテリアの代わりに、毒丸藥飲まされて御退場と、ちゃんと落ちがついていましたが(^ー^;;)

……って、「壁上の〜」だけで感想長っ(汗)
まあ「壁上の〜」だけで193ページ。「池底の〜」は40ページほどですし、やはり二人の出会い話ってあたりでついつい興が乗ってしまうのは、我ながら無理もないとは思いますがvv


では残る「池底の王冠」ですが、こちらは前述の通り「マスグレーブ家の議定書」が翻訳されたものです。
この話は原作だと、「石炭入れに葉巻」とか「ペルシャスリッパの爪先を煙草入れに」とか「マントルピースにジャックナイフで手紙を突き刺し」たり「壁に弾痕でV.R.」といった、彼等の下宿の愉快な実態が描写されているのですが、そのあたりはバッサリと省略されています。ただ「化學の實驗に用ふ藥品や犯罪の参考品やらが取散つて、時には足踏も出來ない程」と表現された程度です。

そして今度は和田さん視点の語りになっている冒頭で、「穂水と同宿してから最う餘程になる」と述懐されていますが……ええと、それは九ヶ月以上が経過してるってことなんですかね??
さらに続いて過去の事件の内容について、穂水さんが語ってゆくわけですが……原作のように、折々に和田さん(ワトソンさん)に語りかけたりしないで、ここからはほぼずっと最後まで穂水さんの一人称状態。
ワトソンスキーには(以下略)

さて今回の各固有名詞は、まずマスグレーブが小松に、執事のブラントンは武良谷(ぶらたに)に、メイドのレイチェル・ハウエルズは下女の花になっています。
地名はモンターギュー街が門徳街(もんとくまち)に、サセックスのハールストンが「砂瀬屈(させツくす)の春須頓(はるすとん)」といった感じ。
そして武良谷が石蓋の取っ手に巻いた「チェックのマフラー」は「辨慶縞(べんけいじま)の手袋」となっていました。
確かに弁慶縞ったらチェックっぽい模様なようですが……何故に手袋?

あとは……原作「マスグレーブ〜」を読んで昔から疑問だったんですが、三百年の間に目印になる樫と楡の木は、高さが伸びなかったんでしょうか?
季節による太陽の位置の変動も問題になりますし……あの宝探しはいろいろと無理があるんじゃないかと言うのは、読者として無粋でしょうか(苦笑)

とかなんとかくさしつつ、一気に読まさせられてしまったあたり、やっぱりホームズ翻案は面白い! わけですがvv
さて次はどれに手を付けようかな〜? 呉田博士のシリーズは、助手の扱いがいまひとつだからなあ……
No.5225 (読書)


 ネットで読めるホームズ翻案その2
2013年10月28日(Mon) 
今日も今日とて、現在ネットで読めるホームズ翻案を追加発掘作業。
その1はこちらから。

■近代デジタルライブラリー - 肖像の秘密
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904893

■近代デジタルライブラリー - 斑の蛇
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/904817

■近代デジタルライブラリー - 外交の危機
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/905691

探偵博士緒方緒太郎と青島から帰還した退役軍醫和田義雄のコンビ。
「肖像の秘密」は「六つのナポレオン(含む二人の邂逅エピソード)」、「斑の蛇」はそのまんま「まだらの紐(〜コマ51)」、「外交の危機」は「海軍条約事件」。このシリーズでは他に「不思議の膏薬」として「緋色の研究」が出版されているらしいのですが、近代デジタルライブラリーにはありませんでした(しょぼん)
なおこれらは大正初期に高等探偵協会によって編集されたもので、著作権は切れているようです♪

さらにさらに、

■近代デジタルライブラリー - シヤロック・ホルムス. 第1編
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/954226

■近代デジタルライブラリー - シヤロック・ホルムス. 第2編
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/954227

大正5年発行、加藤朝鳥 訳、保護期間満了vv
こちらは一応、固有名詞がカタカナで舞台もイギリスのようですね。
収録は「鴉片窟」「老嬢」「赤頭組」「蜜柑の種子が五つ」「幽谷の秘」「好敵子(女優アドラ)」「鵞鳥」「毒蛇」。
うーん、だいたい分かる気はするんですが、「老嬢」が謎ですね……「幽谷の秘」は長さからして「ボスコム谷の惨劇」かな?

他にも、コナン・ドイルで検索かけるとザクザク出てきますよ……(^ー^;;)
ふふふふふ、読みたい物がいっぱいだ〜〜


2014/05/24 追記:

■近代デジタルライブラリー - 英国探偵奇聞録. 続
 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/896685

これも著作権保護期間満了済。
「那翁狂」は恐らく六つのナポレオン。「煙草の灰」と「紅髪組合」はそのまんまですね。
冒頭をざっと見た感じ、レストレードが戸田刑事、ホームズさんが掘夢、ワトソンさんが綿園國手(ドクトル)となってます。
「続」ということは前の巻があるはずなのに、それは収蔵されてないなんて〜〜(><)


2017/09/13 追記:

コメントでご紹介頂きました!

■国立国会図書館デジタルコレクション - 意外の怪物
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906970

日本で初めて翻案された『バスカヴィル家の犬』だそうです。
作品情報にはドイルの字もホームズの字も書かれていないので、いままで発掘できてませんでした。
著者は桑野桃華さん。著作権切れてますvv
No.5226 (読書)



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 プロフィール
神崎 真(かんざき まこと)
小説とマンガと電子小物をこよなく愛する、昭和生まれのネットジャンキー。
ちなみに当覚え書きでは、
ゼロさん= W-ZERO3(WS004)
スマホ= 003P(Android端末)
シグ3= SigmarionIII です。

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